第1回 キョウメーションケアとは~本人に寄り添い頼られる存在に~

認知症高齢者研究所 所長 羽田野政治のコラムが、高齢者住宅新聞で一年間連載されることになりました。
その第1回目が4月25日に載りましたので、ご報告させていただきます。
認知症になると家族、仕事、収入、活動、役割、健康、生きがい、知能、人間関係などが必然的に失われてしまい、今まで生きるために「頼りにしていたもの」や「よりどころにしていたもの」を喪失してしまうものです。
 これは、誰もが近い将来経験する人間の根本的な不安と言えます。であるならば、生きる頼りのよりどころの創出が、認知症の最善治療になるのではないでしょうか。
 つまり、認知症の方にとって馴染みの人間関係や場所、状況を与えることが出来るかどうかが重要であり、介護者は「側にいる人」ではなく「頼られる存在」になることが認知症ケアの基本と言えます。
 今回から認知症の病態とその対応、行動・心理症状BPSDへの接し方をお話ししていきます。認知症のケアを行っていくためには、認知症の方の示す様々な症状の発生メカニズムに対する正確な理解が必要です。
 なぜならば、一つひとつの症状には、それに対応した脳機能の異常が潜んでいるからです。認知症の方が呈する様々な症状は、理解不能な得体の知れないものではなく脳機能障害に基づく異常と理解できれば、それに対する理屈にあった科学的な対策とケアを考えることが可能になるとも言えるからです。
 では、どのようにして馴染みの人間関係や生きる頼りのよりどころを作りながら科学的なケアを考えられるのでしょうか。
 認知症の方へのケアは、家族から本人の歴史、環境、状態など生活歴を詳しく聴取するところから始まります。そして、生活歴を基に本人に寄り添い馴染みの人間関係を作ります。その為には、その人と目があったら、微笑みながら本人の言動を受容して了解することが必要なのです。これを私は認知症の方と接する際の敬礼と言っています。
 接遇時には、温かいまなざしで本人のペースやレベルに合わせうなずきます。本人に近づく際は、正面から近づく斜め45度から話しかけるように近づくよう心掛けます。
そして、本人にふさわしい状況を与え理屈による説得よりも共感的納得をはかるように接します。
 話す際は、はっきり優しく分かるように話し、傾聴する際には横隣りに座り、同じ姿勢、同じ方向を眺めながら手に触れたり握るなどして、よい刺激を少しずつ与えるようにします。大事なことは孤独に放置しないこと、寝込ませないことなのです。
 また、その人に重要なことは、簡単にパターン化して目の前に示しながら繰り返し伝えることで納得しやすくなり馴染みの人間関係も作れるのです。
 次に、認知症の方の示す様々な症状を正確に理解するために、その方のありのまま様子を態度、表情、服装、行動、言語の理解力、構音障害、記憶、見当識、思考、計算、判断、感情、意欲の13項目の要素で観察すると状態評価がしやすくなり理屈に合った科学的な対策とケアができます。
 可能な限り、出来る範囲で自分らしい生活を営めるように本人主体のケアプランを作成していくことが認知症ケアとなるのです。
 このような一連のケアマネージメントをキョウメーションケアと私は呼んでいます。
 次回からは、具体的にキョウメーションを用いた対応方法を示しながら認知症を学んでいきましょう。
 

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