2015年 日本介護福祉学会

24時間定期巡回型訪問サービスで家族の介護負担を軽減する

~重度の疾患を持つ高齢者夫婦が自宅での暮らし続ける為に~

〇長谷川可乃(3765)1)2)、窪田俊(3578)1)2)、齊藤千津子(2131)1)、羽田野政治(2132)1)

1)認知症高齢者研究所 2)定期巡回・随時対応型訪問介護看護デリバリーケア


1.目的

現在、高齢化や女性の社会進出、家族構成変化により、在宅介護の状況も変わってきている。

先行研究によると在宅介護経験者772名中81.2%が、精神的負担が大きいと回答している。その為、「精神的負担を軽減する家族介護」を実践するには、家族の介護力を補完することが重要といえる。

本研究では、互いが重度の要介護者である高齢者夫婦に対し、24時間定期巡回型訪問サービスを導入。自立低下を招いている日常生活の現状、在宅での活動と介護環境の状態、要介護者が家族に与える影響など、サービスを包括的かつ継続的にアセスメントとマネジメントを行い、在宅生活を支える上で問題となる、心身の状況や役割、遂行能力やADLの低下などを評価した。その結果を基に社会資源を活用しながら介護と看護の専門職が心の支えになり無理のない家族介護の維持へとつなげた。本サービスにより家族の介護負担や経済的な負担が軽減、高齢者夫婦が自宅で最期まで暮らし続けるための家族介護力の維持が認められたので、その有用性と効果について報告する。

2.方法

A氏、79歳、女性、要介護度2、既往歴:S状結腸捻転・大腿部骨折・パーキンソン病。B氏、84歳(夫)、男性、要介護度4、既往歴:正常圧水頭症・アルツハイマー型認知症•狭心症•気管支喘息。家族構成:日中就労している娘と3人で同居。

主介護者のA氏の健康状態変化に伴い、介護力が低下。A・B氏に対し、24時間定期巡回型訪問サービスを導入、羽田野が提唱する対人援助技術であるキョウメーションケアの流れに基づき継続的な評価を実施、ICTを用いた情報共有システムKCiSに記録した。

サービスの為のアセスメントでは無く、定期的なモニタリングと専門的視野からニード・ニーズを抽出し、ケアマネジャーと共同マネジメントで実施した。A氏には、非薬物療法でのパーキンソン症状進行の軽快を目標に、買い物支援などの生活支援的アプローチを行った。また、介護・看護職員が情報共有しつつ一体的にサービスを提供、看護職員によるストマー交換・入浴介助を実施、健康状態の維持に努めた。B氏は、喪失感が強くアパシー状態の為、暮らしの中で楽しめることを、古い出来事記憶が不適切に思い出すのを防ぎながら社会的交流や出来る事を模索した。また、安心できる成功体験の時間を家族と持てるよう、起床・排泄・食事などをPDCAに基づき行った。

3.期間

2015年6月29日~2016年6月29日(365日間)

4.倫理的配慮

本研究に対する個人情報は、事前に対象者及び家族に伝え書面にて了承を得た。

5.結果

A氏はパーキンソン症状の軽快、生活リハビリ等で身体機能を維持、健康管理支援システムKCiSで体調変化を事前に予知し予防する対応で安心感を持たせ介護参加を継続出来、ストレスを減らし笑顔も取り戻せた。B氏の「できること」を残存能力として、ADLを維持したところ認知機能や情動機能に改善が認められた。

6.考察

本サービスの導入は、在宅介護に於ける家族介護をサポートし、様々な役割を担えることが出来た。継続的アセスメンに基づくケア介入に於いて、家族の協力と連携があれば安心感の提供も可能になり在宅生活を支えることも出来ると考察できた。一方、家族都合による介護等によりADLの低下も招き、今後家族との連携が大きな課題とも感じた。

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