Science Park新年号~生命体の誕生~

★X染色体とY染色体とES細胞★

人は皆、一人の男性と一人の女性の遺伝子から生まれてきました。

でも、テクノロジーは染色のルールを変えようとしています。

男性と男性、あるいは女性と女性のカップルから生まれる赤ちゃん…

子宮の外で育つ胎児、人と動物を掛け合わせた人類の誕生…

数百万年続く人の性行為が新たな局面を迎えようとしています。性行為(Sex)は絶滅するのでしょうか?

性的交渉は素晴らしい、誰もが性行為によって命を授かります。

 

私達は皆、人類最初の男と女、聖書によればアダムとイブの子孫ということになります。

人は太古の昔からずっと同じやり方で子作りをしてきました。

でも、今、驚くべき時代が始まろうとしています。

新たなテクノロジーと生物学の進化が、性行為の未来を書き換え、男女が持つ古くからの役割を変えようとしているのです。

学生の頃、陸上チームに入りたかった私は、絶対に勝てそうな相手と練習をしました。それは、女の子です。

でも私は、負けてしまいました…完敗です。

彼女はその後、大会で短距離のメダリストになりました。

古来、男女は様々なことで張り合ってきましたが、勝者しか生き残れないとしたら、この先どうなるのでしょう。

過去5億年の間、複雑な生命体の殆どは、性行為で遺伝子を組み合わせて、子供を作ってきました。

 

それは、鳥もミツバチも、有袋類のカンガルーも同じです。

しかし、近い未来にはヒトは…やがて性行為が出来なくなるとオーストラリア国立大学の遺伝学者Jennifer Graves(ジェニファー・グレイヴス)博士は、乳類の性染色体進化の仮説」の中で、カンガルーの遺伝子を見れば人類の未来が見えるといいます。それによれば、およそ500万年後、人類のY染色体は消滅し、人類の男性は新たな性染色体を獲得して生き延びるといい、全く新しい新種のヒトが誕生するだろうと付け加えています。

有袋動物であるカンガルーの見た目は、私達ヒトとは随分違います。

でもヒトとカンガルーは、共通した遺伝子を2万個ほど持っているのです。

http://www.nedo.go.jp/content/100105030.pdf

全ての生物はDNAから出来た遺伝子を基に作られています。

遺伝子を束にしたものが染色体です。

私たちの染色体は23組ですが、ヒトもカンガルーも性別を決める染色体は、たった1組です。

女性はXが2つ、男性はXとYを1つずつ、この仕組みは共通の祖先から受け継がれています。

http://biomarket.jp/bioquicknews/article113.html

カンガルーは、古代の哺乳類に近い存在なので、過去のことを調べるのにぴったりなのです。

私達のゲノムについても多くのことを学べます。

カンガルーの精染色体を調べることで、人の精染色体の過去、現在、そして未来が分かるわけです。

調べた結果、残念なことにジェニファー・グレイヴス博士がいう通り人類にとって男性は滅びる運命にあることが分かったわけです。男としては残念ですね!

そこで、この男性絶滅説を少し説明します。

 

簡単に言えば、遺伝子のブロックから染色体を組み立てたとします。

X染色体は、男女両方が持っています。これを、およそ1000個の遺伝子を組み合わせて積み上げた塔としてイメージしてみてください…すると男性だけが持つY染色体は、背の低い壊れそうな塔ということになります。

女性は両親からX染色体を1つずつ受け継ぎます。しかし、男性の場合はXとYを1つずつ、でもY染色体は遺伝子の数が極端に少ないのです。

卵子が持つ染色体はXだけ、それを目指して送り出される大量の精子は、半数がX、半数がとても小さいYを運びます。

X染色体をもった精子が先に卵子へ辿り着くと、両親から一つずつXを受け継いだ女の子が生まれるのです。

そして、2つのX染色体は互いの部品を交換しあっていきます。これは、X染色体が持つ部品が同じなので組み替えることが簡単に出来るからです。最終的に部品を組み替えておけば部品が壊れた時に修理が効くというわけです。

ですから、女性の場合X染色体にトラブルが起きても、それを次世代に持ち込まないよう健康な遺伝子と入れ替えることが出来るということになります。

 

しかし、男性にはY染色体を修復するためのスペアパーツが無いのです。

Y染色体は部品を交換しません。

1つの束になったままです。これは染色体にとっていい事とは言えないのです。

何かトラブルが起きても、自己修復が出来ないので最悪の場合、遺伝子が失われてしまうことになります。

Y染色体の運命は風前の灯火だと言えます。

おそらく4~500万年のうちには絶滅するということになるといわれている訳です。

Y染色体が無ければ、男性は子供を作れません。

しかし、この男性絶滅説は誤りであるという研究を有るのです。

http://www.afpbb.com/articles/-/2860023

本当に人類は滅亡するのでしょうか…

生物が有性生殖をできなくなった場合、どうなるかを調べてみましょう進化生物学者のリーバイン・モラン博士

私達生き物は、なぜ性的交渉SEXをするのか、その答えを求め、ある小さな生き物の性行動を観察しています。

画面は顕微鏡に写っているシーエレガンスと呼ばれる線虫です。

その性生活は、実にシンプルです。

自分の頭を雌だと思い込み、頭にしっぽを差し込んで、気づかないまま何時間も交尾し続ける雄がいるのです。

雄はシンプルですが、雌の欲求はもう少し複雑です。

厳密にいうと雌ではありません…

シーエレガンスの雌は、雌雄同体なのです。

ヒトと同じように雄と交尾することもできますし、自分の精子で自分の卵子を受精させることもできます。

DNAの操作によって雌を2つのグループに分けました。

生行為だけで繁殖するグループと決して雄と交わらないグループです。

性行為がもたらす影響を知るため、雌雄同体の線虫に厳しい試練を与えました。

待ち受けているのは、たくさんの病原体…バクテリアです。

線虫にとっては極めて有毒な病原体です。

感染すると大抵は死に至ります。

でも線虫はバクテリアのエリアを通過しない限り餌を取ることが出来ないようにシャーレ内は作られています。

性行為なしで繁殖するグループは、三世代にわたって生き延びましたが、病気に強い子孫を作ることはできず、その殆どが死に絶えました。

次に病原体の海を渡ることになるのは、遺伝子操作によって性行為でしか繁殖できなくなったグループです。

驚いたことに多くの線虫が生き残ったのです。

これにより、生物は性行為によって病気に負けない体に進化できるということが分かりました。

人類が数百万年に渡る進化の途上で、病気による絶滅を免れたのは、性行為のお陰ではないでしょうか…

私たちは、Homo sapiens(ホモサピエンス)という一つの種族で一歩ずつで世代が変わると考えてみてください…性行為抜きの繁殖は、まっすぐな道を走るようなもので、素早く効果的に進むことが出来ます。

しかし、一本道を走っていると病原体にたやすく捕まってしまうのです。

性行為による繁殖は、ジグザグに走るようなもので、スピードが遅くとも遺伝子を混ぜ合わせることで進化の血筋が頻繁に変わり病原体に捕まりにくくなるということです。

種族が生き延びるための可能性を最大限に増やせるのです。

私達はたくさんの病原体に狙われています。でも様々な遺伝子を持っていれば、新たな病原体に出会うたび臨機応変に対処することが出来るのです。

しかし、その人類の存続に欠かせない性行為は、変化の時を迎えようとしているのです。それは、今から100万年以内の出来事かもしれませんし、10年以内の出来事かもしれませ…

進化生物学者たちは、どんな性別のカップルでも子供を作れるようになると言います。

さて、どうやって赤ちゃんを作りますか、卵子を受精させるには、まず男女が出会って…と言うのが古式ゆかしい方法です。

しかし、この30年程で試験管の中で卵子を受精させる秘術が進歩しました。

そして、今、更に驚くべき方法が生まれつつあります。

使われるのは男性からの卵子と女性からの精子です…?

ヒトの皮膚から生まれた細胞が、性行為の未来を変えるかもしれません。

アメリカのスタンフォード大学の研究チームが、男性の不妊患者の皮膚から精子を作り出すことに成功したのです。

実験では、3名の不妊症の男性から皮膚を採取し、それを遺伝子操作によって幹細胞へと作り変えたのです。

作り出された幹細胞のサンプルをマウスの精巣に移植したところ、それらは初期の精細胞へと成長したということのようです。

そこで、この方法を使った細胞から人間のもとになる精細胞を作ろうということです。

http://news.nationalpost.com/2014/05/02/sperm-made-from-human-skin-for-the-first-time-may-help-infertile-men-study/

細胞の役割は、初めから決まっているというのが古くからの考えでした。

皮膚の細胞は、皮膚の細胞にしかならないと…でも2007年に皮膚の細胞を生命の始まりにあたる胚の状態に戻せるということが分かったのです。

皮膚の細胞は、ヒトの胚に含まれる胚性幹細胞(embryonic stem cells)ES細胞と同等の機能を与えられます。

あらゆる細胞に生まれ変わることが出来る細胞です。

心臓の筋肉、神経、あるいは呼吸器など、体細胞より作られる人工多能性幹細胞(iPS細胞)とは異なり、 生体外にて、理論上すべての組織に分化する分化多能性を保ちつつ、ほぼ無限に増殖させることができるため、有力な万能細胞の一つとして再生医療への応用が期待されているのです。

ですので、多くの研究者は、この細胞を傷ついた臓器の修復に役立てようとしていますが、スタンフォード大学の研究チームは別の事を考えているようです。

 

幹細胞は粘土のようなもので、きちんと誘導すれば、どんな細胞にも分化することが出来ます。

実に現在では216種類もの細胞になれるのです。

造形作家は、粘土を使って思いどおりの形を作り上げますが、それと同じことをES細胞で行おうということです。

ES細胞は、たんぱく質や有機化合物による誘導を受けて、特定の機能を持つ細胞へと分化します。

そこで、スタンフォード大学の研究チームは、ES細胞から精子や卵子を作ることを目指して、化学物質による具体的な誘導方法を探し始めています。

ES細胞から精子を作るには、まず男性の皮膚細胞を用意します。

 

それを胚と同じ状態に戻してから、骨のたんぱく質を利用して精子細胞へと分化するように誘導するのです。

何かの形をしていた粘土をいったんボールの状態に戻してから、また別の形へと変化させるようなものです。

いつか不妊に悩む男性から採取した幹細胞のY染色体を確実に誘導できるようになれば、健康で受精可能な精子を作り出せるようになるでしょう。

また、男性にはX染色体もあるため、同じ手順で男性の幹細胞から、卵子を作ることも可能です。

同性のカップルでも自分たちの子供を作れる時が来るでしょう。

特に男性と男性のカップルなら、一人が卵子を一人が精子を提供することができるのです。

しかしながら、女性の幹細胞から精子を作ることも可能なのですが、それには男性のY染色体から精子を作るための遺伝子を導入しなくてはならないのです。

そのため、女性同士のカップルが、自分たちの子供を作るための方法は、今のところまだ確立されていません。

精子を作るために必要なY染色体の遺伝子は、50個~100個あると言われているからです。

決して不可能ではありませんが、10年以内の実現は難しいでしょう。

古代から続いてきた性行為による繁殖は、大きな転換期を迎えようとしています。幹細胞を使えば、性別や年齢を気にすることなく子供を作れるようになるのです。でも、それを問題視する意見もあります。

人工授精で生まれた人間たちに、世界を乗っ取られるのではないかという誤解を描く人が大勢いるのもまた現実です。

私達人類の技術は、子供を作れないカップルに希望を与えるためのものです。自然な方法で子供を作ることのできるカップルが、その方法を変えることは無いでしょう。

女性の精子や男性の卵子が出来るとしたら、どんな性別のカップルも子供が作れるようになります。

でも胎児は女性の体内で10カ月間を過ごさなければいけません。

その問題を解決するのが、人工子宮です。

人工子宮が、その問題を解決するのでしょうか…

次回のScience Parkは、子供の出産に関する最先端技術です。

人は皆、同じところから生み出されます…それは、女性の子宮です。子供にとっては安らぎに満ちた10カ月でも、お母さんは大変です。妊娠の苦労が無くなるとしたら…どうでしょう!

今、驚くべき変化が既に動き出しています。それは、人工子宮と呼ばれる出産する機械が出来たということです。

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