(10月)今月の認知症予報★秋の訪れは季節病の訪れ★

私達の研究の一つに、単身・重度であっても在宅を中心とする住み慣れた地域で、認知症の方が生活を継続する事が出来る可能性を調査するシームレスケア研究があります。
そんな研究の中から、気象とBPSD(行動・心理症状)の関係について調査した結果を「今月の認知症予報」と題して報告しています。
20161001冬構えと言う秋の訪れは、あたりを見渡す限り深紅に燃える紅葉の絨毯に敷き詰められ、心落ち着く季節でもありますが、この秋を美しく演出しているのが地上の気温を急激に下げている大陸からの移動性高気圧です。
つまり、深紅の紅葉を演出する季節の変わり目である秋は、認知症ケアにはあまりロマンティックではないのです。

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秋特有の変わりやすい前線や低気圧は、急激な気圧の低下を招きます。この急激な変化が認知症の方にとっては強いストレスとなって、喘息などの季節病をおびき出すからです。
実は、紅葉と共に喘息の季節がやって来たということなのです。
20161003認知症の方にとっては、命がけの大変な季節が秋なのかもしれません。
喘息の発作は一年中起きますが、特に9月の中旬から11月にかけての期間は多いことで知られています。
しかし、研究所の継続的アセスメント調査では認知症の人にとっては10月中旬から下旬にかけてが、一年で最も多い時期なのです。

 

 

 

20161004喘息の原因は様々で、ダニのアレルゲンであるハウスダスト、花粉、大気汚染物質、ストレスなどがあげられます。
認知症の方にとっては、これらの原因のうちひとつだけでも喘息の発作を起こす可能性があるのですが、これらのリスクファクターと呼ばれる原因にこの時期特有の“気象の変化”が重なって、発作が起きることが分かってきたのです。
喘息の発作に影響する気象条件は、気温の低下、湿度の減少、大気汚染、逆転層の発生がありますが、特に気温の低下と逆転層が大きく影響しています。

20161005人間の身体は明け方の気温が低く、昼頃の気温が高いという一日の気温変化のリズムに、身体の生理を合わせているわけですが、秋特有の気象変化によって昼頃の気温が下がってしまうと、その生理的リズムが崩れ、喘息発作や咳込みだけでなくBPSDをも惹き起こしてしまうのです。
ですから、介護者はこのような天気の時には室内の気温の変化を定期的に観察して生理的リズムを崩さないように気を付けます。
20161006また、逆転層は、地表の気温が少し上空よりも低くなる現象ですから、地表付近に汚れた空気が溜まってしまうのです。
逆転層は深夜から早朝にできますから、睡眠障害から早朝覚醒があるアルツハイマー型認知症の方にとっては朝の4時から6時までが、喘息発作や咳込み(痰絡み)が誘発されるタイミングなのです。
ですから、介護者は、前日の天気予報で翌日の最低気温と最高気温を確認して、最低気温と最高気温の差が小さいときには注意を払い室内を温かくしておく対応が必要です。
つまり、喘息発作や咳込みを起こす気温の低下には二つのタイプがあり、ひとつは短時間に気温が3度以上下がる場合で、この場合は喘息発作と咳込み(空咳)の頻度が高くなるのです。もうひとつが日中の気温が朝とあまり変化しない場合や、逆に朝よりも昼間の気温が20161007下がってしまうような場合で、この場合は喘息発作と咳込み(痰絡み)の頻度が高くなるのです。
葉が色づき、葉が落ちる冬構えのように、朝に比べて昼間のほうが、温度が上がらない日は、冷たい北東の風が吹き込んでどんよりと曇ってしまう場合や雨の日なのです。
そんな日は、認知症の人にとっては重い発作を起こす可能性が増す日だと思い注意が必要なのです。認知症の方で喘息の咳込みに苦しんでいる人の多くは、普段は気管支喘息患者と違い、わりあい軽症の喘息状態なので、介護者も案外見逃してしまうケースが多いのです。
しかし、いったん発作が起こると、呼吸困難におちいり救急対応になるケースが最も多いのもこの時期なのです。
従来は喘息発作や咳込みの場合は、前線の通過と密接な関係があるので、梅雨どきや台風のように天気のぐずついた雨の日に多く,喘息患者にとってはつらい日だと思われていたのですが、認知症の人では、全く逆で、雨の日より高気圧が通過する晴れた日のほうが、喘息発作や咳込みの頻度が高いことが分かったのです。
今までは、喘息発作は秋雨前線の影響かと思われていたのですが、調査の結果は全く反対で秋の移動性高気圧がさわやかな秋晴れを運んできた日のほうが圧倒的に多いのです。
その理由は、日本が大陸方面から来た高気圧におおわれると、乾燥して晴天になり、風は弱くなる。そのため、夜は放射冷却によって地面付近は冷たく重い空気が溜まるのです。
ということは、地面付近にアレルギー性喘息の原因となる細かい塵やカビ、花粉、胞子類などが溜まり、車椅子やソファーやベッドで横になって低い姿勢で生活している認知症高齢者の方にとっては、それが、引き金になって喘息発作や咳込み(痰絡み)が起こるのではないかと考えられるのです。
喘息や咳込みによる苦しさは患った人でなければわからないと思いますから、その人の立場に立つことは出来ないかもしれませんが、テレビや新聞で天気予報を認知症の方のために見るといった“ちょっとした気遣い”で喘息発作や咳込みが改善できQOLに大きく影響することは確かです。
20161008また、喘息や咳込みなどの呼吸困難時に有効な体位を介護者は知っておくことは大切です。
まず呼吸が楽な姿勢は起座位で、ベッドを起こし、オーバーテ―ブルにクッションなどを当てて、うつぶせにします。
横隔膜が下がり肺への圧迫が軽減されるとともに下半身からの静脈血流も減少します。
肺の鬱血が軽くなるので呼吸困難が和らぎます。
一般的は、ファウラー位と呼ばれる半座位の姿勢があります。

 

20161009ファウラー位は状態を45度に起こし、膝を曲げてその下にクッションなどを当てます。
腹壁の緊張が取れて呼吸も楽になります。
このような姿勢もこの時期に大切なケアの方法論として覚えておきましょう。

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