今月の心に残る一冊

塩井純一

「The Lottery」Shirley Jackson著、The New Yorker、1948年6月刊

この課題本を推薦してくださった方の案内に従って、on-lineで20分少しの朗読を聴き、1969年の映画(17分50秒)を観、その後この短篇の全文を読みました。更にWikipediaの解説にも目を通しました。

くじを引き当てた不運な村人に、残りの村人全員が石を投げつけるという衝撃的な内容なのですが、短篇の限界か、人物像が描き切れておらず、私の「文学」に対する期待から外れました。脳科学者として人間の心を理解したいという強い欲求があるのですが、今の科学をしても、いまだ「文学」に適わないという認識があるのです。しかし、他の読者の反応に興味・関心を寄せ読書会に参加しました。

悪しき風習とか、同調圧力を扱った本作、日本人読者にとってはかなり身近に感じられる題材かとは思いましたが、ここアメリカで教育教材として広く取り上げられてきたと本書推薦者から聞き、意外に感じました。しかしこの読書会で展開された、幅広い活発な議論を体験して、このような議論を誘発するこの本が、アメリカの討論・議論に重きを置く教育方針に合致しているのかと納得させられました。それに対して、先生の教えを聞き、模範解答に縛られる日本の教育方法が話題になり、参加者の小学生時の授業体験談、例えば「模範解答とは異なる視点の回答をして✖をもらったものの納得できず友人に相談すると彼女の国文教授の母から”異質=ユニークな視点”と指摘されむしろ異質であることを奨励された」、或いは「努力を無視しての体育の平均点以下評価に疑問を投げかけ、教師に対峙、努力を認めてもらった」が面白かったですし、感心もしました。振り返って私の小学生時代は、いい子ぶって、教師の期待に添うように勉強し、良い成績を貰ってはいたのですが、中学生で反抗期に入り、ブチ切れた感があります(理不尽な言動で授業中の新任先生を泣かしてしまい、今は後悔・懺悔)。その後話題は、アメリカ政界の驚くべき堕落、即ち、独裁者かと思わせるようなトランプ大統領に対する議会での多数派共和党議員のおもねり・同調へと移ったのですが。時間切れが残念でした。

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