心に残る今月の一冊

塩井純一

University of Washington Press、2014 年刊(Originally 1957年刊)

  「No-no boy」John Okada著、2014 年刊(Originally 1957年刊)

読書会の課題本、川手晴雄著「No-no boy 日系人強制収容と闘った父の記録」とタイトルが一部重なっていた為、このJohn Okada著の英語本を原本と勘違いし、図書館で借り出して読んだのですが、読書会の討論の中で別の本だと判明、私の間違いに気が付きました。課題本が日本人著者によるノンフィクションの記録なのに対して、この本は強制収容所体験者の日系二世が書いた「小説」です。主人公Ichiroは日系二世の若者で、真珠湾攻撃の後、両親や弟と共に強制収容所に隔離され、その後「米国への忠誠」を誓わせる裁判官の二つの問いに、どちらも「No」と答えた為に、刑務所送りになります。ニ年後に出所してからの再出発、いや周囲の反感や差別に苦悩・苦闘する数カ月が物語の中心です。本読書会で、昨年ノーベル文学賞を受賞した韓国作家ハンガン著の「少年が来る」を読み、「心」の痛み・悲しみを描出する文学の力に感銘した覚えがあるのですが、20代中端の青年の「魂」の叫びを絞り出すような文体・記述の本書にも同様な文学の力を感じさせられました。脳科学者として、私の読書はノンフィクションに偏る傾向があるのですが、人間の「心」「魂」についての理解・解明には脳科学はまだまだで、文学に及ばないことを認めざるを得ません。日本人、殊に海外で「日本人」を生きる日本人・日系人には、是非読んで欲しい、お薦め書です。

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