Science Park★その人らしさを知る★

~35億年の進化の結晶「脳」と「心」~

人間が行動する際、その裏にある意識的な思考がどれほど影響を持つのかは大きな謎です。

実際には、私たちの多くの決断は無意識のうちに「本能」に従って行われています。

この本能は一体どこから来たのでしょうか?科学が解き明かそうとしている重要なテーマの一つです。

地球は生命の揺りかごであり、その長い進化の過程で人間に「直感」や「不快感」といった不思議な能力を授けました。

人間の脳は、約7万年前の人口ボトルネックを経て進化してきたと考えられているのです、この話は次号で詳しく話しますが、この間、脳は急速に複雑性を増し、特に前頭前野の発達によって計画、抽象的思考、そして他者との社会的相互作用が可能になりました。

一方、脳の感情を司る部分、特に扁桃体と前帯状回は、危険を避ける能力や喜怒哀楽を体験するために中心的な役割を果たしている。

医学的には、脳内の神経伝達物質がこれらのプロセスを支えている。例えば、ドーパミンは「報酬システム」を駆動し、セロトニンは感情の安定化に寄与しています。

これらの物質が不均衡になると、例えば不安や抑うつなどの精神的な問題が引き起こされる可能性があるのです。

進化と地球環境の影響を考えると、直感や不快感のような能力は、単なる脳の「スイッチ」のような存在ではなく、適応と生存のために精密に調整された結果なのです。

さて、話は戻りますが、数百万年にわたって私たちの体と心は形作られてきたわけですが、その進化の物語はまだまだ始まったばかりで、終わりを迎えていません。

地球の歴史には、いまだ解明されていない謎が数多く存在しているのです。

その手がかりは、私たちの身体構造や考え方、そして行動の中に潜んでいるようです。

人間が何をどのように考えるか、その背後には長い進化の歴史が隠されているのです。この理論は多くの心理学者に支持されており、人間の進化に新たな視点をもたらしています。

進化と聞くと、多くの人は腕や足といった身体の形態的な変化を思い浮かべるでしょう。確かにそれは進化の重要な側面の一つですが、進化は目に見える身体的変化に留まりません。私たちの行動、感情、意思決定の仕組みもまた進化の影響を強く受けているのです。

この「行動進化」とも呼べる変化は、科学の分野でますます注目を集めています。私たちが日々下す無数の決断のうち、どれほどが完全に意識的なものといえるでしょうか?多くの決断が無意識の本能に従ったものであることがわかっています。

この本能はどこから来るのか?

心理学や神経科学では、これを「地球が人類に授けた特性」として捉える視点も提案されています。

心理学者フレデリック・クーリッジ博士の興味深い研究があります。彼は人間の判断プロセスを解明するため、ギャンブルを用いました。

例えばルーレットのような偶然性の高いゲームで、人々はどのように賭ける数字を決めるのかを調べたのです。

結果は驚くべきもので、多くの人が必ずしも論理的ではない選択をしつつも、そこには進化の過程で培われた特定のパターンが潜んでいることがわかりました。

これは単なる偶然ではなく、生存戦略として脳が進化的に学習してきた結果だと考えられています。

さらに、直感や不快感といった現象も行動進化を理解する上で重要な鍵です。

直感は、長い進化の歴史の中で蓄積された経験の集積から生まれます。たとえば危険を直感的に察知する能力は、祖先が捕食者から逃れるために不可欠でした。

同様に不快感は、環境や行動が生存に有害であることを知らせる警告信号として機能している可能性があります。

これらの進化的視点は行動心理学、神経科学、進化生物学など多くの分野に新たな研究方向を示しています。

地球が私たちに授けた本能や直感の起源を探ることは、人間の本質をより深く理解するための重要な鍵です。

そしてそれを明らかにすることは、私たちの行動形成の歴史や、未来に向けた変化の可能性を知る手がかりになります。

コロラド大学のクーリッジ博士の研究では、人間が合理的でないにも関わらず直感に従う様子が示されています。

例えば、ルーレットで極めて低確率の数字に繰り返し賭ける人がいます。なぜその番号を選ぶのか尋ねると「ただの運」と答えることが多く、根拠のない直感を信じています。

興味深いのは、そのような直感に基づく選択が精神的な集中力や意識的な「念」や「気合い」と結びついていることです。いわば「スターウォーズのフォース」のように、念じることで結果を変えようと信じる人もいるのです。

物理的には影響がないものの、この精神的な信念が人々にとって意味を持っています。この現象を分析することで、進化で培われた本能のメカニズムが浮かび上がります。それは単なる生存戦略にとどまらず、現代社会での意思決定にも深く関与しています。

“直感”や“不快感”は長い進化の歴史を通じて形成され、人間の判断の基盤となっています。この視点で自分自身を見つめることは、進化の新たな側面の発見につながるでしょう。

地球が私たちに授けた行動の秘密を解明することは、人間の本質をより深く理解する上で欠かせません。

では、その直感はどこから来たのでしょうか?

なぜ私たちに、この直感が備わっているのか?答えは、祖先が進化した予測不可能な過酷な環境にあります。

約100万年前、人間は脳の発達により慎重かつ合理的に考える能力を得ましたが、当時の地球環境は非常に厳しく、突発的な危険が常に存在していました。

火山の噴火、地震、雷、異常気象などの自然災害が頻発する中で、祖先たちは私たちよりも脆弱でした。

そんな環境では冷静に考える余裕は少なく、原始的な本能こそが最大の武器となったのです。

この本能は、昆虫が光に引き寄せられるように、あるいはネズミが猫の匂いを感知するように、進化的に形成されました。

医学的研究もこの本能的反応を支持しています。

例えば心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究は、脳が危険を認識し迅速に対応する進化的メカニズムの一部であることを示唆しています。

大脳辺縁系は恐怖や不安を引き起こし、生存に有利な行動を促進してきました。

直感の起源を理解することは、人間の行動や意思決定に潜む進化的プロセスを解明する鍵となるのではないでしょうか。

近年の研究では、人間の本能的な反応が社会的判断や倫理的意思決定に影響を与えることが示されています。心理学者ダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー理論」では、直感的な判断(ファストシステム)と合理的な分析(スローシステム)の相互作用が説明されています。

この理論は、迅速な決断を下し、生存に成功する方法を理解する助けとなります。

人間の本能は、進化の過程で危険な環境を生き抜くために形作られたものであり、現代においても私たちの行動や意思決定に関わっています。

この謎を探求することで、人間の本質を深く理解できるかもしれませんね!

話は変わりますが、人は「不快」と感じるのか? 〜Gave us Disgust〜

デューク大学の心理学者、ギャヴァン・フィッツシモンズ博士(Gavan Fitzsimons)は、人の最も強力な本能は「不快感」だと述べています。

人間の感情の中で、世界共通の根源的なものは「恐れ」「怒り」「不快感」であり、これらは文化を超えて誰にでも存在する普遍的な情動です。

人は特定の刺激に対して、理屈ではなく、本能的な拒絶反応を示します。

いわゆる「気持ち悪い」「嫌だ」と感じるあの感覚です。

そして、それにどう反応するかも世界中で共通しており、顔の表情には一定のパターンが見られます。

目を細め、鼻にしわが寄り、上唇が上がり、身体を引いて手で口元を覆う——これは、視覚や嗅覚、口腔といった感染の入り口から病原体を遠ざける、極めて生物学的な反応です。

つまり、不快感とは単なる情緒ではなく、「自己防衛」のために進化した生理的な機構なのです。

この不快感は、人類の長い歴史の中で、生き延びるために欠かせない感情でした。特に脅威だったのは病気です。

火山の噴火や肉食獣の襲撃よりも、目に見えず音もなく忍び寄る感染症こそが、最大の敵だったのです。

人間の脳は、進化の中でただ情報を処理する器官を超え、創造性や感情を司る中心的な役割を果たすものへと発展しました。

特に、直感や不快感は、自然環境と適応の歴史の中で生まれた重要な能力です。

これらの機能は、人間が危険を察知し迅速に対応するために役立つとともに、社会的相互作用や意思決定の基盤を形成しています。

19世紀半ば、ルイ・パスツールが細菌やウイルスの存在を証明したことは、こうした脳と心の進化を語る上で欠かせない要素です。

彼の「病原体説」は、細菌やウイルスが感染症の原因であることを初めて科学的に示しました。

これにより、医学の発展が進み、抗生物質やワクチンが開発される道が開かれ、多くの生命を救うことにつながりました。

さらに、彼の低温殺菌法(パスチャライゼーション)は食品安全の革命をもたらしました。これにより、牛乳やワインに存在する有害な微生物を除去し、保存期間を延ばすことが可能になりました。また、狂犬病ワクチンの開発によって、致死率の高い感染症に対抗する手段が確立されました。この研究は免疫学の基盤となり、現代医学に深い影響を与えています。

パスツールの研究は、科学だけでなく、人々の健康と生活の質を直接向上させました。彼の功績は、自然界の挑戦に立ち向かう人類の知恵の象徴といえます。

この進化の過程で脳と心がどのように発達し、現代の私たちへと繋がっているのかを探ることは非常に興味深い話です。

しかし、それ以前から、人は「心」が進化する過程で、感染の兆候に本能的に反応し、避ける術を身につけていたのです。

たとえば、病気のある人の心と、健常者の心の動きは、医学的にも科学的にも大きな研究テーマなのです。

私の考えになりますが、病気がある場合、例えば神経疾患や精神的な疾患では、脳内の神経伝達物質のバランスが崩れることがよくあります。セロトニンやドーパミン、グルタミン酸などが関与しており、これが感情や思考、行動に影響を与えていると考えています。

一方で、脳細胞自体の変化も見られることがあります。

例えば、アルツハイマー病の場合は、ニューロンが減少したり、異常なタンパク質が蓄積したりします。脳内の構造的な変化が進むことで、認知機能や記憶が損なわれるのです。

「心」の視点から言えば、病気の影響で心の状態がストレスや不安、抑うつといった形で乱れることがあります。

これがさらに脳にフィードバックし、悪循環を引き起こすこともあります。

逆に健常者の場合は、これらの調整が正常に行われ、心の安定が保たれる傾向があります。

不快感から「心」の動きをみると、不快感は脳と心が緊密に関わる感情で、例えば扁桃体が危険信号を察知すると、それが前頭前野に送られ、私たちの行動を決定づけるように働く、その本質が快か不快なのです。

脳の神経伝達物質もこの過程に重要で、セロトニンやドーパミンが不快感を感じる強度を調整しているわけです。

さらに、視床下部はこの感情に対する身体的な反応、例えば心拍数の上昇や冷や汗などをコントロールする役割を果たします。

また、心がこれらの脳の指示に従う一方で、不快感そのものが心の状態を大きく揺さぶることもあります。

だからこそ、これは単なる感覚ではなく、生存本能を支える進化の成果とも言えると、私は思っています。

こうした視点から見ると、不快感は脳と心が一体となって働く、私たちの生存と適応における重要なツールなんだと言えます。

さらに、脳内の活動を宇宙的スケールで見た場合はどうでしょう。分子や原子レベルのエネルギー変化が大きな影響を及ぼしていると私は考えていますす。

これらの微細な変化が生物のシステム全体に及び、人間の意識や感情を形成しているんです。病気の状態では、この微細なエネルギー流れが乱れ、その影響が心に及んでいるのではないでしょうか。

快と不快感を解き明かす旅は、人間の進化の中でも特に興味深いテーマです。

科学と医学の視点から考察し、その根底にある生物学的、心理学的、そして哲学的な意味を探ることで、この感情がいかに重要であるかが見えてきます。

また、不快感は、脳の扁桃体や視床下部が発する信号として始まり、神経ネットワークを通じて身体全体へ影響を及ぼします。

医学的に言えば、この反応はストレスホルモンであるコルチゾールやアドレナリンの分泌を促進し、戦うか逃げるかの「戦闘-逃避反応」を引き起こします。

この過程は、私たちの生存のために必要なものとして、進化の中で洗練されてきました。つまり、心とは、脳の偏桃体を指しているのではないでしょうか。

次に細胞レベルで見ると、不快感の生成はニューロンとシナプスの活動によって起こります。

これらは原子と分子の相互作用で形作られており、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのイオンが関わっています。この微細なプロセスは、脳内で電気信号を送るための基盤となるものです。

また、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が、不快感の強度を調整し、心の状態に影響を与えているのです。

さらに、大宇宙の視点から見れば、不快感を持つ能力そのものが宇宙の進化の一部とも言えるでしょう。

地球という環境が人間に与えた生存圧力が、この感情を進化させた背景にあるならば、不快感は単なる感覚ではなく、宇宙の中で私たちが生存し、繁栄するための鍵なのです。

最後に、この「不快」という感情を解明することで、その役割が明確になりました。

不快感は私たちの敵ではなく、進化がもたらした警報システムであり、未来を切り拓くための重要な感覚なのです。

この結論をもとに、さらに議論を深めることで、新たな知見が得られる可能性が広がりました。

そして、この「不快感」という感情を理解し、進化の一部として捉えることは、私たち自身や宇宙との関係を再定義する鍵となるのではないででしょうか。

社団法人認知症高齢者研究所
Senior Dementia Institute

〒224-0032 神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央20−14 松本ビルB館 4F
TEL:045-949-0201 FAX:045-949-0221
Copyright © 2018 Senior Dementia Institute. All Rights Reserved.


PAGE TOP