Science Park 2025年5月号★コンストラクタル法則~パターンを探求すると認知症ケアが見えてくる~★

見るものすべてに、共通のパターンがあるとしたらどうでしょう。

空、地面そして肉体、それは、作り手のサインかもしれません。

実際、宇宙はパターンであふれているのです。

創造主がいたという証拠なのでしょうか?

私は、中学校時代バスケットボール部に所属していました。

バスケットボールには生きた流れがあります。コートのあらゆる地点から、ゴールへと向かう流れです。攻める側の選手は、ゴールへと続く経路を広げようと努力します。守側は反対に、その経路を閉じようとするのです。

試合ではより多くボールを取った選手が、得点の経路を広げていきます。

その様子を記録していくと、あまり使われない経路は細いままです。まるで葉脈のようにゴールに向かってコートに描かれ、やがて枝を広げた樹木のパターン様が現れてくるのです。

実はこの樹木の形は何処にでも見られます。なぜならば樹木のパターンは自然界のあらゆる現象を構成しているからです。

同じパターンは自然界にあふれています。

樹木や稲妻、草木の葉脈、そのルーツは何なのでしょうか?

それは、ある場所から別の場所へ向かう流れに関係しているのではないでしょうか。

大地から吸い上げられた水は、木の中を流れ、風に散っていきます。

物理的な力も樹木と言う体の中を流れていくのです。風の力は木を通して、大地へと伝えられます。

それは、自然界に共通するある法則の表れだと言えます。これを、デューク大学のエンドリアン・ベジャン博士が云うコンストラクタル法則です。

ノーベル化学賞受賞者イリヤ・プリゴジン博士の講演を聴いていたベジャン博士は、「河川流域や、肺の気道、稲妻など、自然界に豊富に見られる樹状構造の類似性は偶然である」という、プリゴジン博士の主張が間違っていると閃き、万物のデザインを支配する物理法則の存在を確信し「コンストラクタル法則」を発表したのです。

つまり、大きさや動きに制限があるものすべては、時間とともに存在していることから、生きていくうえで、より多く、より効率的な流れを保てるような形に進化したのだと考えられるのです。

コンストラクト法則は、私達の体にもみられます。

肺に向かう酸素の流れ、静脈を走る血流、ニューロンの中を伝わる電気信号など、生命活動に関わる多くの流れが樹状構造を持つ理由が説明できます。

例えば、肺の気管支は細かく枝分かれしながら酸素を効率的に運び、血管は体内の隅々まで栄養を届けるために樹状構造を形成し、神経ネットワークも情報伝達を最適化するために同様の形を持っています。

これらはすべて、流れを最大化し、エネルギーの損失を最小限に抑えるための進化の結果なのです。

一方、宇宙に目を向けても、河川の流れ、雷の分岐、銀河の渦巻き構造など、複雑な構造物が似たようなデザインを持つことが分かります。これらの形は偶然ではなく、流れを最適化するための普遍的な法則に従って形成されるのです。

天使創造を信じる人々は、これを神のデザインと見るかもしれません。しかし、科学的な視点では、これらの形は単なる偶然ではなく、物理法則によって必然的に生じる現象と考えられます。

つまり、コンストラクタル法則は、生命や宇宙の構造がどのように形成され、進化するのかを説明する重要な理論であり、私たちが世界を理解するための鍵となるものです。

人間ができることは、これらの法則を見つけ、理解し、応用することだけなのかもしれません。物が落ちるのと同じように、流れの形もまた、自然の法則に従って決まるのです。天使創造を信じる人は、それを神のデザインと見るのではないでしょうか?

しかし、実際にはデザインは、物が落ちるのと、同じような現象で、私には意味など分かりません。人に出来るのは法則を見つけることだけだと思います。

流れをよくする葉脈のようなパターンは、より強く適用力のある生物を作り出していきます。幹の中を流れる水も、バスケットコート内を動くボールも同じです。

また、バスケットボールの試合は、社会における個々の人の流れにも例えることが出来ます。人々は経路を広げようとして努力します。

それと同時にほかの人は、無意識のうちに経路を閉じようとするのです。

そう考えると、ミクロ・メゾ・マクロ…宇宙はより太い流れによって成長し、進化し続ける巨大な樹木の形をしているのかもしれませんね。

しかし、それだけではコンストラクタル法則を理解することは出来ません。

どうして小さいモノが集まると、大きく複雑なモノが出来るのでしょうか?身体は細胞から、細胞は原子から出来ています。

しかし、原子には自覚は無いはずですが、ちゃんと機能しています。私の体もバラバラにならずにいるのは、いったい誰のお陰なのでしょうか?

最近、オペラ鑑賞をしました。

例えば、歌手やオーケストラの演奏は、科学的には様々な解釈が成り立ちます。

物理学者なら、素粒子レベルにおける活動の表れと見たでしょう。

この歌声は、電子などの素粒固による相互作用だと…

電子が神経細胞の中で、脳から神経へと信号を運ぶからこそ歌うことが出来ます。

すべての物事は、物理の法則に従って起きているわけですから…、単に物理現象として捉えてもよいのでしょうか?

指揮者は、オペラ歌手やオーケストラのメンバーに働きかけることで、彼らの動きや音をまとめ上げています。

メンバーの脳内における電子の流れは指揮者の指示に反応し、制御されているのです。上位の指揮者から、下位のメンバーと向かう流れがあるのではないでしょうか?

上から下へと向かう働きかけをみていると、メンバーの肉体を作る素粒子は、下のレベルにあり、指揮者という上の存在からコントロールを受けます。

指揮者がいなければ、オーケストラの音が乱れ、奏者は耳栓が必要になるのではないでしょうか?下からの働きかけのみで、美しい調和は成立しません。シンプルな調整が欠かせないからです。物理も同じではないでしょうか?

自然界の美しさにも指揮者が必要かもしれませんね。幾何学の世界を見ると、それが見えてきます。

例えば、ピタゴラスの定義、一辺の二乗と、もう一辺の二乗を足すと斜辺の二乗が導き出されます。

宇宙のどこにでも通用する心理です。

宇宙は物理を司る幾何学に基づいて存在する。つまり幾何学の法則は、宇宙より前に存在するものだと言えます。

人の心理や行動も同様です。100人が100様のように見えているのもある幾何学的パターンで綴られているのではないでしょうか。

ギリシャの哲学者プラトンも宇宙が誕生する前に数学的なパターンが存在したと信じていました。

数学的なパターンは、宇宙が生まれる前から有ったと言えないでしょうか…そこには物理だけでなく意味もあるはずです。

宇宙が数学的な心理とともに生まれたように人は倫理とともに生まれたと私は考えます。

善悪の基準は普遍の心理に基づいているので、ヒトが互いに成すべきことは決まっていると言うことになるからです。

ここに私が考える認知症介護があります。

倫理的なパターンもヒトが生まれる前から有ったはずです。

長年の研究を通じて気づいたことは、世の中には、機械的な運動よりも明らかな意味を感じる物事の方が多いのです。いったい、誰が…自然や社会を司る法則を作ったのでしょうか?倫理とは、誰かによって生物が気高い存在にデザインされた証拠なのでしょうか…それとも進化の産物でしょうか?認知症の治療や介護にも、きっと倫理的なパターンがあると信じたいですね…

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