SciencePark2025年5月号~認知症にならない為にすべきこと、なった時のために準備すること~

私は、認知症を生活習慣病と捉えります。

認知症を生活習慣病と捉える視点は、近年の研究でも支持されつつあり、認知症は加齢とともに発症リスクが高まるものの、生活習慣の改善によって予防や進行の抑制が可能であることが科学的に示されているのです。

認知症の発症には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、運動不足、ストレスなどの要因が関与しており、これらはすべて生活習慣病と共通するリスク要因です。

例えば、糖尿病は認知症の発症リスクを約2倍に高めることが報告されており、血管性認知症VaDや糖尿病性認知症DrDの原因にもなります。

また、慢性的なストレスは脳の神経細胞を傷つけ、認知機能の低下を引き起こす可能性があります。ストレスによるコルチゾールの過剰分泌が脳の海馬に悪影響を与え、認知症の発症を促進することが研究で示されています。

認知症を生活習慣病と考えるならば、予防のための生活習慣の改善が重要になります。

認知症の予防には、生活習慣が大切ということになります。

そこで、今回は、科学的根拠に基づいた認知症の予防法についてのお話です。

まず、生活習慣病と考えるのならば、バランスの良い食事が重要になります。研究によれば、野菜や果物、魚を多く摂取することは認知症のリスクを減少させることが示されています。

これらの食品には抗酸化物質やオメガ3脂肪酸が含まれており、脳の健康を維持するのに役立つからです。

また、定期的な運動も認知症予防に効果的です。運動は脳の血流を改善し、神経細胞の生存を促進することが分かっています。

軽い運動は脳の健康に良い影響を与えるので、ウォーキングやパワーヨガやヴィンヤサヨガのような動きの多いヨガは有酸素運動の効果が高く、脂肪燃焼にも役立ちます。

ヴィンヤサヨガとは、サンスクリット語で「ヴィ」=特別な方法、「ンヤサ」=場所へ、という意味を持ち、1呼吸1動作のリズムでポーズを連続的に行うヨガで、初心者でも始められる一種の呼吸法です。有酸素運動はオキシトシンとドパミンの分泌を促し、ストレスを軽減します。オキシトシンは絆を深め、ドパミンは集中力を高めます。

別の方法にロクゼロゴーゼロや七ゼロヨンゼロといわれる。1日、60歳/5000歩、70歳/4000歩、80歳/3000歩のウォーキングや散歩が推奨され、朝や寝る前に簡単なストレッチを行うだけで血流を促進し、認知症予防に役立つといわれていますので、今日からトライしてはどうでしょう。

最近の研究では運動がオキシトシンやドパミンの分泌を促進し、ストレスの軽減や認知症予防に役立つという点については、いくつかの研究によって支持され始めています。例えば、オキシトシンはアルツハイマー型認知症の神経活性障害を改善する可能性があるとする研究があり、新たな治療薬の開発にも期待が寄せられています。また、運動が認知機能の向上に寄与することを示した研究もあり、有酸素運動や筋肉に負荷(抵抗)をかけることで筋力を向上させる筋トレといわれる方法のレジスタンストレーニングが推奨されています。

さらに、ウォーキングやヨガが認知症予防に効果的かどうかについても、運動不足が認知症のリスクを高めることを示す研究があり、適度な運動が脳の健康維持に重要であると考えられており、適切な運動習慣を続けることで、心身の健康を維持し、より豊かな生活を送ることができますので、今日からでも始めることをお勧めします。

科学的に説明するとオキシトシンは「愛情ホルモン」とも呼ばれ、社会的な絆を強化する働きがあるといいます。また、ドパミンは「快楽ホルモン」として知られ、やる気や集中力を高める効果があります。これらのホルモンの分泌が促進されることで、脳の機能が向上し、ストレスが軽減されることが分かっているのです。微妙な量の変化で充分です。運動によって血流が改善され、脳への酸素供給が増加することで、認知機能の保持に寄与するのですから、、、さらに、社会的なつながりを維持することも認知症予防の重要な要素です。

友人や家族との交流、趣味やボランティア活動を通じて他者と関わることは、脳を刺激し、認知機能を保つのに役立ちます。

新しいことに挑戦する意欲も重要で、例えば、新しい言語を学ぶことや楽器を始めることが認知症予防に効果的であるともされています。

勿論、睡眠も認知症の予防に欠かせない要素です。質の良い睡眠を取ることは、脳の修復と清掃を行うために不可欠であり、これにより認知機能を維持することもできます。

また、ストレス管理も大切で、瞑想や深呼吸などのリラックス法を実践することが科学的に有効があるとされています。

これらの生活習慣を取り入れることで、認知症のリスクを減らし、脳の健康を保てます。バランスの良い食事を心がけ、抗酸化作用のある野菜や果物、オメガ3脂肪酸を含む魚を積極的に摂取しましょう。認知症にならないための方法は目の前にいくらでもあるので自分のペースで自分にあった、自分にできることから始めるだけでよいのです。

その中で、比較的簡単な方法が食事です。認知症にならないための食事療法にマインド食(MIND食)があります。マインド食は認知症予防に効果があるとされる食事法で、地中海式食事法とDASH食(高血圧予防のための食事法)を組み合わせたものです。

この食事法は、アルツハイマー型認知症の発症リスクを低減する可能性があるとされ、アメリカのラッシュ大学医療センターの研究によって提唱されました。

また、読書やパズル、楽器演奏や手芸など脳を刺激する活動を行い、友人や家族との会話や地域活動への参加を通じた社会的交流も大切です。規則正しい生活習慣と十分な睡眠を確保することで、脳の健康維持が期待できます。このように目の前には、認知症にならないための“もの”が溢れているのですから、、、。

認知症予防に関する話題は、だれもが関心を持つ重要なテーマです。

高齢化社会が進む中、認知症のリスクを減らすためにどのような生活習慣を取り入れるべきなのか、具体的な方法を知ることは有益です。

最後に、定期的な健康チェックを受けることも忘れずに。早期発見と適切な対応が認知症の予防につながります。これらの生活習慣を取り入れることで、健やかな老後を迎え、認知症を遠ざけることができるでしょう。

誰でも年をとると、経済力、健康、思い出、生きがい、ついには、生活歴や生きるよりどころまでもが失われてしまい、その時々に私たちは漠然とした恐れの感情が湧きあがってきます。

この不安感こそが認知症を引き寄せるのではないかと私は考えています。

ある意味、認知症は年をとるごとに味わう、黙して語れない様々な生きる頼りのよりどころの喪失にあると… 認知症という脳の病気によって、薄れていく記憶の中で忘れようとしても忘れられない生々とした恐ろしい記憶が急に思い出されてくると脳科学者の養老先生が仰っていました。

そんな脳裏の不安定化が、しばしば認知症の人の感情や行動を邪魔して、緊迫感と恐怖心が入り混じった世界に引き込まれていくのでしょうか?

しかも、今のところ認知症に狙われたら逃げる術は無い…高齢者の心の変化は様々ですがが、不安の多くは、新しいことが覚えにくくなって忘れっぽくなることです。

それにあわせるように指の動きまで悪くなって物がうまくつかめなるなど体の些細な変化にも意識してこだわるようになります。やる気を失い、感情のコントロールが難しくなってきて落ち込むようにもなります。

認知症はこうして始まってくる脳の病なのです。

さて、いつまでも健やかな老後を送るために健康的な生活習慣を身につけ認知症にならない方法はあるのでしょうか。

高齢者の症状は、医学書にのっているようなものが何時も現れるとは限rません、肺炎の症状が、徘徊などの性格行動の変化であったりすることも結構多いのです。

むしろエニアグラムにある9つの基本的な性格分類に当てはまるような行動があらわれてくるから自分のタイプを知っておくと介護されるときに役立ちます。

エニアグラムとは、円周を9等分して作成された図形に、人間の性格を9種類に分類しこの図形に対応させた性格類型で、9つの性格タイプそれぞれが、性格の特徴、世界観、動機、行動スタイル、エッセンス(本質的資質)をもって20歳代の性格がその人の生涯の性格になるということです。一方、認知症の人はレミニセンス・バンプといわれる長期記憶がありこのなかには自分の人生に関する「自伝的記憶」という記憶がある。この「自伝的記憶」は、20歳代をピークに10歳代後半から30歳代前半までの、いわゆる“青春時代”の出来事として認知症になっても比較的鮮明に覚えている頃なのです。

つまり、認知症になる前にエニアグラムで自分の性格を知っておけば、たとえ認知症になっても誰もがあなたの性格を分かってうえで介護してくれるということになるのです。

また、たとえ症状があっても、自ら訴えられないこともしばしばあるので、声に出して「なんか…おかしい」「なんか…ヘンだ」と自ら訴えることが大切です。  

認知症予防は身近な人にまず声を出して甘えたり、助けを求めることが大事で…そこには何か病気が隠れているかもしれないし、風邪の症状が徘徊するなどの性格行動変化であったりもするからです。

自分の変化に気づくのは誰でもない自分…なのだから、年老いたら自分に対してきめ細かい注意と配慮が大事だと伝えています。

たとえば、毎日朝1回、体温測定や血圧測定を続けて健康手帳に書き込むだけでも認知症予防になり…これが、認知症予防の第1歩にもつながるのです。

私は、多くの認知症高齢者の介護に従事しながら、介護の対象となる方が目の前で、意味不明な行動や理解不能な言動によって、家族や介護者との関係を悪化させてしまい日常生活や社会生活にさまざまな支障がきたしていることを目の当たりにしてきました。これらの出来事は極めて悲しい出来事となって、家族や身近な人と一緒に暮らせなくなる要因となって施設入居になってしまうのです。

認知症の症状である正常であった記憶や判断力、知的機能などの認知機能の低下などは、脳の情報処理や情報伝達を行う神経細胞に生じた病変によって起こる脳の機能障害の結果でもあるのです。

認知症の症状は、単なる行動の変化ではなく、脳の特定の機能障害によって引き起こされるため、記憶障害や判断力の低下、言語障害、空間認識の低下、感情の変化などの一つひとつの症状は、それに対応する脳の異常と密接に関連していることになります。

例えば、記憶障害は海馬の萎縮、判断力の低下は前頭葉の機能障害、言語障害は側頭葉の異常によって生じることが分かっており、それらを病態として理解することで、単なる「異常行動」としてではなく、理論的に説明可能な症状として捉えることができるのです。

そのため、認知症に対するアプローチとしては、記憶障害にはメモを活用した環境整備や習慣化、判断力の低下には選択肢を減らしてシンプルな決定を促す工夫、言語障害にはジェスチャーや絵カードを活用した視覚的コミュニケーション、空間認識の低下には家具の配置を整える安全対策、感情の変化には音楽療法やペットセラピーを活用するなど、症状の根本にある脳機能障害を考慮した理論的な対策が可能となります。

このように、認知症を単なる老化現象ではなく、脳の健康維持と生活習慣の改善によってコントロールできる病として捉えることが重要であり、それに基づく適切な予防策やケアの実践が求められているのえす。

いいかえれば、一つひとつの症状には、それに対応した脳機能障害の異常が潜んでいることになるので、手に負えないように見える症状も、脳機能障害に基づく病態として理解できるので、それに対する理屈に合った対策が可能となるということです。

狂言の舞台で、道行という独語を言いながら舞台をさまよい一巡する叙景があるが、もともと道行とは旅をしながら歩く様子を指し、徘徊はその仕草に一見似た所があります。

徘徊とは目的も無く、しきりと住居の内外を繰り返し歩く情動的な行動ですが、認知症の人によっては何らかの原因、理由が有ることも分かっているので…徘徊を伴う人には、人格や運動機能に障害が出るものの、早期には障害されにくいともいわれているのはこのためです。

逆に言えば、認知症の人が徘徊を起こすのは、神経学的には四肢には問題がなく運動機能が残っているということになります。

これだけ見ても認知症は体の病というより心の病が優先されることが分かります。

また、あまり知られていない徘徊に、認知症の人が外出をすると街並みは覚えているのですが、道に迷ったりする道順障害や、まったく逆に自宅は認識しているのですが、家路にたどり着けない街並障害など地理的記憶の障害は、全く違う機能からなる記憶障害です。 

人の顔を見ても誰だか分からない相貌失認と並行して起こる特徴もあります。そのため徘徊中に家族や介護者が声を掛けても無視して歩き続けてしまうのはこのためといわれています。

場所や空間の見当識障害が早い時期から起こっていることが原因ですが、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease : AD)などは長期間認められるため周囲からなかなか理解されないのが徘徊でもあります。

しかし、徘徊とは介護者側から見た場合の現象で、本人からいえばその根底には記憶障害から認識出来ない状態や時間や場所などの見当識障害、やってはいけないなどの行動を抑制する能力の低下や行動への強迫観念などが引金になって徘徊が始まると考えられています。

つまり、それらの実態をよく知れば具体的で科学的な徘徊への対策が可能になるのです。

認知症は加齢に従って発症頻度が増えてくる病気ですから、誰もが歳をとればとるほど罹る可能性があります。

だからこそ、自分で気づくこと、そのことを意識すること,身近な人に打明けることから始めることは、認知症予防につながるだけでなく、認知症になったとしてもあなたの行動や言動を理解してもらえる大切な情報になるのです。

国際アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Disease International: ADI)によると、「世界アルツハイマー・デー」(9月21日)の時点で、2025年までに認知症人口は約7,000万人に達すると予測されています。現在では3.2秒に1人が認知症を発症しています

このままの傾向が続けば、2030年には約7,800万人、2050年には約1億3,900万人に増加すると予測されています2。認知症の発症率は年々上昇しており、特に高齢化が進む国々では深刻な社会課題となっています。そのため、予防策やケアの充実が求められています。

私達にとっては年をとるにつれ近づいてくる認知症は恐ろしい病でもあり、困惑した表情や手の震え、絶えず訪れる不安や頻回に襲い来る極度な健忘状態…増える患に数に私たちは恐怖感を抱かずにはいられません。

アルツハイマー病のような重篤な疾患への遺伝的素因に直面している多くの人々は、自分自身に「私には起こり得ない」と自己暗示的に言い聞かせては否定する傾向にあります。

予防策をとっている人々は、自分はアルツハイマー病にはならないはずだ・・・と、信じている方も多いです。しかしながら、今のところアルツハイマー病に狙われたら逃げる術は無いのです。

だから、自分が認知症になる準備を今からしておくことです。

たとえば、好きな食物、苦手な食物、得意なこと、苦手なこと、趣味、関心、大切な思い出、不安や心配事、人にしてほしいことや、してほしくないこと、介護への要望などを書き残しておくだけで、将来、自分が認知症になったとしても自身を理解して適切にケアしてもらえるからです…。

 

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