塩井純一
「ヴィオラ母さん」ヤマザキマリ著、文藝春秋刊、2019年
前に読んで感想文も書いた内田也哉子著の「BLANK PAGE」で、ヤマザキマリとその著作「ヴィオラ母さん」を知りました。
副題に「私を育てた破天荒な母・リョウコ」とあり、そんな母・リョウコの破天荒ぶりが巧みに描かれています。
内田也哉子の母・樹木希林も相当の人物で、異色の母でもありましたが、本書のリョウコにも驚かされました。
シングルマザーの音楽家として、二人の娘を育てるのですが、二番目の夫の高齢の母(義母)を引き取り、数年で離婚後も、そのおばあさんとの4人暮らしを続けることからも、リョウコの規格外の強さ・優しさがうかがえます。晩年のおばあさんは認知症を患い、マリや血のつながった孫である妹さえもわからない状態になるのですが、リョウコのことだけは忘れることがなかったそうです。
昔「名もなく貧しく美しく」という映画(1961年)がありましたが、さしずめ「名もなく清く逞しく」だと感じ入りました。
こんな無名のお母さんが日本中にいたし、今でもいるのでしょうね。そんなお母さんが日本の精神を、日本の文化を下支えしてきたのだろうと理解します。
対して、男の私は「名もなく」だけで「清く」も「逞しく」もとても及ばなかったなーの情けなさです。
著者は漫画家だそうで、数年前にDVDで観た阿部寛主演の映画「テルマエ・ロマエ」の原作者ということを知りました。
女性でもこんな想像力・構想力のある作品を産むのに驚きます。私のジェンダー偏見を崩しつつあります。そんな娘を生み育てた母リョウコを知り、親子を通しての文化・精神の伝搬を強く感じました。