SciencePark~認知症にならない為にすべきこと、なった時のために準備すること~

誰でも年をとると、経済力、健康、思い出、生きがい、ついには、生活歴や生きるよりどころまでもが失われていく、その時々に私たちは漠然とした恐れの感情が湧きあがってくる。この不安感こそが認知症を引き寄せるのではないでしょうか。

ある意味、認知症は年をとるごとに味わう、黙して語れない様々な生きる頼りのよりどころの喪失にあると…

認知症という脳の病気によって、薄れていく記憶の中で忘れようとしても忘れられない生々とした恐ろしい記憶が急に思い出されてくる。そんな脳裏の不安定化が、しばしば認知症の人の感情や行動を邪魔して、緊迫感と恐怖心が入り混じった世界に引き込まれていくのです。しかも、今のところ認知症に狙われたら逃げる術は無い…

高齢者の心の変化は様々だが、不安の多くは、新しいことが覚えにくくなって物忘れや忘れっぽくなることです。

それにあわせるように指の動きまで悪くなって物がうまくつかめなるなど体の些細な変化にもこだわるようになります。やる気を失い、感情のコントロールが難しくなってきて落ち込むようにもなります。

認知症はこうして始まってくる脳の病なのです。


さて、いつまでも健やかな老後を送るために健康的な生活習慣を身につけ認知症にならない方法はあるのでしょうか。

高齢者の症状は、医学書にのっているようなものが何時も現れるとは限らない、肺炎の症状が、徘徊などの性格行動の変化であったりすることも結構多いのです。

むしろエニアグラムにある9つの基本的な性格分類に当てはまるような行動があらわれてくるから自分のタイプを知っておくと介護されるときに役立ちます。

エニアグラムとは、円周を9等分して作成された図形に人間の性格を9種類に分類しこの図形に対応させた性格類型で、9つの性格タイプそれぞれが、性格の特徴、世界観、動機、行動スタイル、エッセンス(本質的資質)をもって20歳代の性格がその人の生涯の性格になるということ、一方、認知症の人はレミニセンス・バンプといわれる長期記憶がありこのなかには自分の人生に関する「自伝的記憶」という記憶がある。この「自伝的記憶」は、20歳代をピークに10歳代後半から30歳代前半までの、いわゆる“青春時代”の出来事とて認知症になっても比較的鮮明に覚えている頃なのです。

つまり、認知症になる前にエニアグラムで自分の性格を知っておけば、たとえ認知症になっても誰もがあなたの性格を分かってうえで介護してくれるということになるのです。

また、たとえ症状があっても、自ら訴えられないこともしばしばあるので、声に出して「なんか…おかしい」「なんか…ヘンだ」と自ら訴えることが大切です。  

認知症予防は身近な人にまず声を出して甘えたり、助けを求めることが大事で…そこには何か病気が隠れているかもしれないし、風邪の症状が徘徊するなどの性格行動変化であったりもするからです。

自分の変化に気づくのは誰でもない自分…なのだから、年老いたら自分に対してきめ細かい注意と配慮が大事だと伝えています。

たとえば、毎日朝1回、体温測定や血圧測定を続けて健康手帳に書き込むだけでも認知症予防になり…これが、認知症予防の第1歩にもつながるのです。

私は、多くの認知症高齢者の介護に従事しながら、介護の対象となる方が目の前で、意味不明な行動や理解不能な言動によって、家族や介護者との関係を悪化させてしまい日常生活や社会生活にさまざまな支障がきたしていることを目の当たりにしてきました。これらの出来事は極めて悲しい出来事となって、家族や身近な人と一緒に暮らせなくなる要因となって施設入居になってしまうのです。

認知症の症状である正常であった記憶や判断力、知的機能などの認知機能の低下などは、脳の情報処理や情報伝達を行う神経細胞に生じた病変によって起こる脳の機能障害の結果でもあるのです。

いいかえれば、一つひとつの症状には、それに対応した脳機能障害の異常が潜んでいることになるので、手に負えないように見える症状も、脳機能障害に基づく病態として理解できるので、それに対する理屈に合った対策が可能となるということです。

狂言の舞台で、道行という独語を言いながら舞台をさまよい一巡する叙景があるが、もともと道行とは旅をしながら歩く様子を指し、徘徊はその仕草に一見似た所があります。

徘徊とは目的も無く、しきりと住居の内外を繰り返し歩く情動的な行動ですが、認知症の人によっては何らかの原因、理由が有ることも分かっているので…徘徊を伴う人には、人格や運動機能に障害が出るものの、早期には障害されにくいともいわれているのはこのためです。

逆に言えば、認知症の人が徘徊を起こすのは、神経学的には四肢には問題がなく運動機能が残っているということになります。

これだけ見ても認知症は体の病というより心の病が優先されることが分かります。

また、あまり知られていない徘徊に、認知症の人が外出をすると街並みは覚えているのですが、道に迷ったりする道順障害や、まったく逆に自宅は認識しているのですが、家路にたどり着けない街並障害など地理的記憶の障害は、全く違う機能からなる記憶障害です。 

人の顔を見ても誰だか分からない相貌失認と並行して起こる特徴もあります。そのため徘徊中に家族や介護者が声を掛けても無視して歩き続けてしまうのはこのためといわれています。

場所や空間の見当識障害が早い時期から起こっていることが原因ですが、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease : AD)などは長期間認められるため周囲からなかなか理解されないのが徘徊でもあります。

しかし、徘徊とは介護者側から見た場合の現象で、本人からいえばその根底には記憶障害から認識出来ない状態や時間や場所などの見当識障害、やってはいけないなどの行動を抑制する能力の低下や行動への強迫観念などが引金になって徘徊が始まると考えられています。

つまり、それらの実態をよく知れば具体的で科学的な徘徊への対策が可能になるのです。

認知症は加齢に従って発症頻度が増えてくる病気ですから、誰もが歳をとればとるほど罹る可能性があります。

だからこそ、自分で気づくこと、そのことを意識すること,身近な人に打明けることから始めることは、認知症予防につながるだけでなく、認知症になったとしてもあなたの行動や言動を理解してもらえる大切な情報になるのです。

国際アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Disease International:ADI)は、「世界アルツハイマー・デー」(9月21日)で、世界の認知症人口は、2020年で5,866万人と推測していたが、現在では3.2秒に1人が発症している状態であり、このままだと2030年までに7,470万人に増加し、2050年までに1億5,224万人に増加すると予測しているのです。

私達にとっては年をとるにつれ近づいてくる認知症は恐ろしい病でもある…。

症状でもある困惑した表情や手の震え、絶えず訪れる不安や頻回に襲い来る極度な健忘状態…増える患者数に私たちは恐怖感を抱かずにはいられません。

アルツハイマー病のような重篤な疾患への遺伝的素因に直面している多くの人々は、自分自身に「私には起こり得ない」と自己暗示的に言い聞かせては否定する傾向にあります。

予防策をとっている人々は、自分はアルツハイマー病にはならないはずだ・・・と、信じている方も多いです。しかしながら、今のところアルツハイマー病に狙われたら逃げる術は無いのです。

だから、自分が認知症になる準備を今からしておくことだ。

たとえば、好きな食物、苦手な食物、得意なこと、苦手なこと、趣味、関心、大切な思い出、不安や心配事、人にしてほしいことや、してほしくないこと、介護への要望などを書き残しておくだけで、将来、自分が認知症になったとしても自身を理解して適切にケアしてもらえるからです…。

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