★人間に住む微生物との闘い(前編)★
新型コロナウイルス感染症により、お亡くなりになられた方々、またご遺族の皆様に謹んで哀悼の意を表するとともに、罹患されている方々に心よりお見舞い申し上げます。
また、認知症高齢者研究所とご縁のある皆様におかれましては、同感染症に対する対策で大変な状況の方も多いことと拝察いたしますが、ご自愛のほどお祈り申し上げます。
感染症は個人の病気を超えて、社会全体の病気です。
今回のサイエンスパークは、現在問題になっているCOVID-19(コビット19;新型コロナウイルス)対策を意識して、感染症に関して考えてみました。
まずは、COVID-19(新型コロナウイルス)の特徴についてお話します。
コロナウイルスは、これまでは、次の6種類が知られていました。
一般的な風邪のウイルスの4種類で、2003年に中国を中心に流行した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、2012年になって初めて確認された中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)は時々、今でも確認されています。
そして、今回の新型コロナウイルス(ウイルス名:COVID-19)は、新しいコロナウイルスになります。
新型コロナウイルスは、主に呼吸器に感染するウイルスで、ウイルスに感染した人の全てに自覚症状が出るわけではなくて、無症状の人もいると考えられています。
感染者の症状としては、発熱、咳、筋肉痛・倦怠感、呼吸困難が多く認められ、頭痛、痰、血痰、下痢などを伴う人もいるようです。
感染経路は、飛沫感染と感染者からの痰など分泌液を触る事による接触感染で、空気感染は否定的と考えられています。
詳しくは、2020年2月13日に発表された日本環境感染学会「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第1版」を参照にしてください。
今回のサイエンスパークには、不快な画像や内容などが含まれていますので、苦手な方はご注意ください!
皆さんは、自分がどれだけ不潔な人間かご存知ですか?
人間の体は微生物の巣窟なのです。
体中に小さな生き物が巣くい、私たちの体をむさぼっています。
日々、私達の免疫システムを取り巻いている目に見えない微生物との闘い、
今回のサイエンスパークは、人の体に生息するあらゆる生物についてです。
私たちの体は生き物だらけです。
90兆もの細菌が住んでいるのです。
もし、人の体を透明にして見えなくすることが出来たとしても、体内に住む生物が見えるので人の輪郭が分かるでしょう・・・体の動きに合わせて生物が形を変えるから透明人間にはなれないのです。
実は人体において、人の細胞が占める割合は、わずか1割、残りの9割は細菌なのです。
肺を例にとると、息を吸うだけで間違いなく菌が肺の中に入り込むのです。
肺に吸い込んだ菌は目に見えません。そこで拡大して見てみましょう!
この菌の名前は、ニューモシスチス(Pneumocystis)体内で作られるステロイドを養分にしているのですが、免疫機能が正常に働いている限りは、人体に害を及ぼさないのです。
しかし、免疫力が落ちると、増殖して病気を惹き起こすのです。
ニューモシスチス肺炎です。
しかし、人間の体には、たくさん良い細菌も住んでいるのです。
さて、人間は必ず老廃物を排泄しなくてはなりません。その排泄をするトイレは有害な細菌の宝庫なのです。大腸菌やブドウ球菌がその代表です。
ブドウ球菌の他にもたくさんあります。
例えば、便器は平均して3億から5億の細菌が付着していると言われています。つまり排泄をすると便器から、跳ね返ってくる細菌たっぷりの飛沫を浴びることになるのです。
それだけではありません、水を流す際には、細菌を逆に飛び散らかしてしまっているのです。
便器から発生した霧は、大腸菌やブドウ球菌を3m先のカミソリや歯ブラシまで飛ばしているのです。
ブドウ球菌はまれに脳の炎症を惹き起こします。大腸菌は腎臓を犯します。
しかし、人には大腸菌に抵抗するための免疫システムが備わっているので大丈夫です。
体の中に細菌が入っても、そう簡単には病気にならないのです。
また、髭剃りの刃を肌に充てると、肌に小さな裂け目が出来ます。
その傷口から、大腸菌やブドウ球菌が肌の下へと進入し、血流に入り込みます。
電気シェーバーも同様です。
つまり、トイレの水を流すときには蓋を閉め、洗面用具は棚にしまうか、便器の飛沫がかからない場所に避難させておくことが予防になるのです!
さて、貴方はペットを飼っていますか、ペットを飼っていたら誰でも糞を片付けた記憶はあると思います。
たとえば、猫のトイレの多くには糞と砂があるだけではなくて、様々な生き物が住んでいるのです。
体表的なものはトキソプラズマ(Toxoplasma Gondii)で、動物などに寄生する単細胞の原虫です。妊娠中の感染は注意が必要になります。このトキソプラズマによる原虫感染症はトキソプラズマ症と呼ばれ、世界中で見られる感染症です。
世界人口の3分の1が感染していると推測されていますが、健康な成人の場合には、感染しても無徴候か、数週間の軽い風邪のような症状が出る程度で留まるので、意識されないことも多いので注意してください。
しかし、免疫抑制状態にある場合には重症化して死に至ることもあり・・・重篤な日和見感染症といえるのです。
重症化した場合には、脳炎や神経系疾患を惹き起こし、肺・心臓・肝臓・眼球などに悪影響を及ぼすだけでなく、妊婦中に感染すると胎児が先天性トキソプラズマ症を発症する場合があるので注意が必要になるのです。まして予防するためのワクチンはないのですから…‼
また、飼い猫が舞い上げた、糞の混じった砂の埃を吸い込むと、トキソプラズマ原虫が脳へと達し、脳内のドーパミンの分泌を促進してしまいます。
ドーパミンは人を大胆にし、怖いもの知らずの行動に走らせる化学物質ですから、トキソプラズマに感染して居る人の多くは、過激なスポーツ選手や実業家など、多くのリスクを伴う職業についていると言われているくらいなのです。
細菌や寄生虫は私たちの健康に影響を及ぼすだけでなく、私たちの性格や行動パターンも左右されてしまうのです。
では、今度は体の中、具体的には消化管に住む生物を調べてみましょう!
あなたは寿司が好きですか、新鮮な魚を食べれる日本料理の体表と言える料理です。
しかし、生の魚には線虫等の寄生虫がいます。
動植物に寄生する線虫には、実に多くの種類があり、宿主となる生物は海老から鮫まで、実に様々です。
魚には様々な寄生虫がいますが、例えば、ブリにつく寄生虫が一生のうちで交尾が出来るのは、最終宿主に辿り着いた時だけなのです。
切り身をライトテーブルに乗せて透かして見ると、体を丸めた線虫が見つかります。
線虫類の起源は人類の誕生よりも古く、宿主の体を代々渡り歩いてきた訳です。
つまり自然のものだということです。
体に入った線虫は、種類によっては腹痛や下痢を起こします。
私たちの体の中にはおよそ2Kgもの細菌が住んでいるのです。
その多くは腸内細菌です。
食べ物を消化する過程で、胃酸や腸内の細菌は、どんな働きをしているのでしょう、胃酸は胃の中に入った食べ物を消化し、小腸や大腸で吸収できる大きさに分解できる働きをします。
腸内細菌も消化を助けているのです。
では、なぜ線虫は腸を目指すのでしょう!魚の肉を抜け出した線虫は、胃から腸へと移動し、腸内で交尾の相手を探すのです。
そして、線虫の卵は体外へと排出され、他の生き物に飲み込まれます。そのあとは食物連鎖に乗って宿主を変えていくのです。最終宿主が人間の場合、卵は下水に流され、命を繋ぐことなく、この世を去るでしょう!
最後に大切なことをひとつ、寿司で使う魚の多くは冷凍することで線虫を死滅させていますので、安心してください!勿論、加熱調理も有効です。
人の体には、実に様々な微生物が暮らしていることをお話しました。
しかし、寄生虫が潜むのは人間の中だけではありません。
人間の良きパートナーである犬の場合はどうでしょう!
あなたは、肛門に痒みを覚えたことがありますか?
犬はよくお尻を地面に擦りつけたり舐めたりする行為は、全て私たち人間に影響を与えるのです。
行為そのものを見ると、確かに犬は不潔です。しかし、人間より不潔でしょうか?最も比較しやすいのは、口の中に住む細菌です。
唾液をATP測定器にかけて、比較してみましょう。
ATP検査とは、全ての生物の細胞内に存在するATP(アデノシン三リン酸)を酵素などと組み合わせて発光させる方法で、細菌や残渣などの汚染物質が残っているとATPが存在しているので、その発行量(Relative Light Unit:RLU)が測定できるのです。
いわば、細菌の数を測定できる装置です。
1〜9ならば清潔で表面の細菌はそれほど多くない、10〜30ならば、中程度、そこそこの数の細菌が見られる範囲。
30以上は不潔で、これが食器なら危険な状態です。
人間の唾液の殆どは30以上で、レストランを営業停止にできるほど不潔な状態なのです。
一方、犬の唾液は20前後で、人間より清潔なのですが、肛門を舐めたりするので、犬の口の中には線虫や蟯虫の卵がある可能性が高いのです。
蟯虫は、宿主が眠っている間に肛門から這い出してくるのです。
そして、肛門の周りに卵を産みつけます。卵はとても小さいから、愛犬とキスをしたときに卵を受け取っても気づかないのです。
そして、もらった卵が体内で成虫となり腸内で交尾し、校門の周辺に産卵します。肛門を掻くと、卵が指につき口に戻ります。命の循環です。
犬とキスをしなくても、もっと単純に私たちは細菌と接点が生まれているのです。
食べ物とハエです。
私たちの部屋にはゴミ箱があります。そのゴミ箱にどこからともなくハエが飛んできます。
食事の準備をしているとハエが食材に止まる、手で払いのけた経験がある人はいるでしょう。
ところで、ハエは糞が大好物なので、糞や糞の匂いがある便座に止まります。
すると、ハエの足や口に大腸菌が着いて、いつの間にか食材に移動するのです。
ハエは食べ物に留まると、食べ物に消化液をかけて溶かしてから吸い上げるのです。
つまり、ハエが止まった食べ物を食べれば、ハエの消化液と細菌も食べることになるのです。
しかし、体の中の免疫システムと口や腸にいる善玉菌が、大腸菌を退治してくれるので心配は、いりません。
その為には免疫を上げなくては・・・免疫強化法の一つがスポーツです。
日本では、420万人がジムに入会して運動していますが、運動に付きものなのが汗ですね。
汗は、そのほとんどの成分が水で、運動によって身体の体温が上がると温熱性発汗と言って、体温調節をはかるために、身体の水分を汗として放散させ体温を一定に保つ働きをしているわけです。
では、その汗、体液について見てみましょう!
私たちの体では、様々な体液が分泌されています。
ここで、汗について注目してみましょう。
実は、細菌は汗を好むのです。
汗に豊富に含まれるアミノ酸を摂取して、次々と増殖するのです。
スポーツジムに生息する単位面積あたりの細菌の数は、便座の細菌の数万倍にも上るのです。
汗の滴は、細菌の命の源になるのです。
たとえば、スポーツジムのマットに落ちた汗は、中まで浸透し、前回このマットを使った人の残した細菌の活動を活性化させるのです。
マットの中には、風邪やインフルエンザ・・・そしてCOVID-19新型コロナウイルスも潜み、次の宿主が来るのを待ち構えているのです。
そして、もうひとつ注目すべき点が足です。
運動靴の中の匂いを嗅いだことがあるでしょ…!
素足で運動すると足が臭くなりませんか、実際のところは足自体には問題はないのです。
足は無臭なのです!
つまり、匂いの素は細菌なのです。
汗には、毛のない皮膚から出るエクリン汗腺と毛のあるところの皮膚から出るアポクリン汗腺があり、体温調節の時に出るのはエクリン汗腺なのです。
足には汗を分泌するためのエクリン汗腺が、それぞれ25万あり、汗ばんだ皮膚は細菌の温床となるのです。
細菌は暖かく湿った指の間などに集まります。
皮膚に住む細菌のひとつである、表皮ブドウ球菌は汗に含まれるアミノ酸を食べます。
そして満腹になると、老廃物を出すのです。
足の匂いの素は、この細菌の仕業というわけです。
また、皮膚につく真菌の中には足の爪や皮膚を食べる白癬菌がいます。これが増殖すると水虫になるのです。
表皮ブドウ球菌などの細菌は汗から養分を得て、白癬菌は皮膚から養分を得ているということです。増殖すると感染症になります。
でも、手足をきちんと洗えば命に関わることはないので大丈夫です。
後編は、中国の武漢から発生したCOVID-19(新型コロナウイルス)対策を日本政府はどの国よりも早く日本人の救出にチャーター機を飛ばしたことは称賛すべきことです。その飛行機の中では、どんなことが起きているのかを調べてみました。