私が人工知能に期待するのは、天才的なヒラメキを放つ頭脳です。
入浴中に大発見をしたアルキメデス、路面電車で相対性理論を思いついたアインシュタイン、歌舞伎から発想した平賀源内、天才たちのひらめきは人類に進歩をもたらしてきました。
しかし、現代の研究者を悩ましているのは、降り注ぐ素粒子の調査や膨大な遺伝子コードの解読など、数千人の頭脳を有する複雑な問題なのです。
今後天才たちの後を継ぐのは、人工知能かも知れません。
この世は複雑な美しさに満ちています。
花開く薔薇、葉脈の作る網目、空飛ぶ蜜蜂、そこには、まだ誰も知らない貴重な複雑な方程式が数多く隠されているのです。
美しい庭に息づく植物や昆虫達、そのほかの生き物には全て方程式が隠れています。
自然の仕組みを探ることは、一つの科学です。
同様に認知症の方の日常生活の行動を観察して生活のリズムやニーズをとらえることも科学なのです。
自然を理解するため、探究を続けてきた人類は、いくつかの有名な発見を成し遂げました。ニュートンはリンゴによって、万有引力の法則を発見しました。リンゴにどんな力がかかり、どう落ちるかを予測する法則です。
今の科学はリンゴの落下というシンプルな力学だけでは終わりません。
そこに、たくさんの複雑な問題が絡んでくるからです。
たとえば、リンゴが落ちるとホコリがたちます。
ホコリがかかった一輪の花は、蜂の受粉を受けられなくなり、それをきっかけに庭の生態系が変わる可能性も出てくるのです。
このような連鎖は、介護施設でも起こっているのです。
しかし、たとえ法則を理解していても、現実の出来事を正確に予測するには、人の能力を超えた複雑な計算が必要なのです。
人の頭で自然法則や人間の行動パターンの方程式に取り組むのは無理があります。
その理由の一つは、式で扱う変数の多さです。
ひとりの人の、一つの行動パターンをちょっと調べただけでも、数千個の変数が出てきます。
方程式の山を手作業で分析しても、永遠に終わりません。2011年私は、認知症の人が示す複雑な姿をみつめ、混沌の中から意味を見つけ出すソフトの開発を始めました。
無秩序な“カオス”という極めて複雑な動きを人間は見せてくれます。
この動きを観察しデータを集めても、無秩序でなんのパターンもないように見えます。でも、実際はパターンが存在するのです。
今までの科学者は、人間の行動パターンを見つけるのに何十年も苦労してきました。
しかし、私はあることに気づきました。
母なる自然と同じように、アイデアを進化させればいい、そこで、新しいプログラムにKCiS-AI(Kyomation Care Interface System- Artificial Intelligence)ケーシーズアイと名付けました。
KCiS-AIはランダムに選んだ方程式から、無秩序の動きに近いものを探し条件に会わない方程式を削除します。
残った方程式に修正を加えながら、より近いものを選び出していき、ついにはアルキメデスもびっくりするような…完璧な方程式を見つけだすのです。
これが、プログラムの実行画面で、これが、KCiS-AIが選んだセンサーから求められたパターンです。
リストの上に行くほど複雑になり、現実のデータに近くなっていきます。そして、これがデータから得られた人の行動に最も近い式です。
正確さを求め続ければ、その先には真実が待っています。
導き出した方程式を見てみましょう。たとえば、ここにあるP値をみてみましょう。
これは、スカラ量です。
つまり、このKCiS-AIのソフトではデータを集めさえすれば直接答えを探し出すことができるのです。KCiS-AIは、カオスの方程式を導き出しただけでなく、無秩序の中から秩序を見つけ出したわけです。
これこそが認知症介護にとって初めての快挙になると考えています。
たとえ、別の観測方法で取った新しいデータを分析させたとしてもKCiS-AIは同じパターンの方程式を導き出しました。
それが、人間の行動に隠された真実だからではないでしょうか?
KCiS-AIは物理学に限らず、大量のデータを伴うどんな実験にも役立つと思っています。
今、探しているのは行動パターンと日常生活動作量を活用したエネルギー代謝の法則性です。
そのヒントになったのが、アメリカのデータサイエンティストであるマイケル・シュミットが行っている酵母細胞のデータから、細胞が糖分を溶かす速度とエネルギー量の相関関係を数式化してブドウ糖の変化は、ATPと血糖値に関係している事を発見した研究です。
私は、アルツハイマー病の生体情報のデータから問題行動を起こすまでの一定の時間から、心拍数の変化と呼吸や温度や湿度、照度、などの相関関係を表す数式を発見しました。KCiS-AIが探すのは、標準的な指標パラメータを表す数式です。
すでに見事な標準的な指標パラメータモデルを発見しました。
心拍の変化は、環境の変化と対人援助方法に関係しているのです。
今まではこうしたサイクルを解明するために、数多くの専門家が何年もかけて研究を行いました。
生身の人間にとってはかなりの重労働です。
そのうち人間が見つけたいものを決めて、機械が探すという時代が来るでしょう!
KCiS-AIは疲れませんし、思い込みもありませんし、物事のつながりをしっかり見ることもできるのです。
機械であった人工知能が、自ら考え、歩き方を覚え、意識を持つようになれば、単なる機械ではなくなります。
もし、そうなった場合、人工知能はロボットを作り出し、ロボットのための社会を作り出すのでしょうか?
人類は地球上で最も成功した種族です。
成功の鍵は強力なコンピュータである脳…でも、たった一つの脳には限界があります。
人類は社会を作り、頭脳を結集することで、繁栄を勝ち取りました。
人工知能が同じことをしたら、どうなるでしょう!
ロボカップをご存知ですか?
人間社会よりはるかに洗練された考える機械のコミュニティ、クラウドロボティクスがそうです。
クラウドロボティクスでは、知識をネットワークで共有します。
人間社会における常識みたいなものです。
同じデータを共有しながら、解決に向かいます。ロボットたちは世界のどこにいても、知識や情報を共有できるのです。
人は一生かけて学びますが、未来のロボットは、全ての知識を一瞬で手にします。
彼らが緊密なネットワークを作るとしたら、互いの足を引っ張るような私利私欲とは無縁の社会が出来上がるでしょう!
人間の社会とは違って、ロボットたちがルールを破る心配はありません。
そして、独自の言語を話すようになったら…モタケ・トキマ…
意味がわかりますか?
実は人間の使う言語に、こんな言葉はありません。
でも意味はあります!これはロボット語なのです。人は数万年かけて、複雑な言語を作り上げました。ロボットはそのプロセスを光の速さで追いかけています。
人間はそのうち、ロボットの会話から締め出されてしまうかもしれませんね!
人類は言語のおかげで今の地位に立てたのだと思います。
言語の発明は人類が成し遂げた最も偉大な業績です。
今の生活を考えてみてください、もしも言語がなくなったら、私たちの活動は何一つとして成り立たないでしょう!
人工知能の研究では、言語がロボットに真の知能をもたらすと考えられています。
言語の発生過程がロボットにできれば、ロボットたちはある種の進化を遂げることでしょう。
ロボット達の集団の中に、私たちが持っているのと同じような豊かなコミュニケーションシステムが生まれることになるとヴァージニア工科大学のロボット工学研究者デニス・ホン博士は言います。
現在、機械同士のコミュニケーションには、人が作った言語が使われていますが、彼らが独自の言語を作るとしたら、ロボット社会の未来はどうなるのでしょう…
デニス・ホン博士が製作中のロボットには、まず、使えそうな音や、それをつなげる方法などを教えています。
でも、話す内容は指示しませんが、学習し、新しいアイデアを生む機能はインプットします。そうすると、ロボットの人工知能は言語をまとめ上げて、どう話すか取り決めることができるようになると言います。
人間の言葉や文法は、一切教えません。人口知能が独自にコミュニケーションツールとして言語を形成していくのです。
しかし、話し方を身につけても、内容がなければ無意味です。
そこで、人工知能はロボットを介して、自分の身体を認識する方法を学びます。
言語を学ぶためには、自分の体がどんな構造をしていて、どのように動くのかを知る必要があるからです。そこで、ロボットは鏡を見て、自分の3Dモデルをコンピュータ内に作ります。
これを身体感覚として記憶すれば、他のロボットと運動の話ができるようになるのです。
言語がある程度発達したところで、ロボット達は動作を繰り返し、お互いにとって意味のある言葉や動作を作り上げます。
そうして語彙を増やしていくのです。次々と生み出される未知の単語、コミュニケーションのスピードは人には理解できない速さでしょう…人は、そのうち彼らの会話から外されてしまうのではないでしょうか!
結果的に、これからの私達の社会は人工知能やロボットに求める機能と彼らに与える自主性との間にバランスを取る必要が出て来るでしょう。
自ら考え、動き、感じ、言語を作る人工知能やロボットが、やがて人類を追い越すとしたら、彼らを作る意味があるのでしょうか?
今、なお進化を続ける人類、その後を継ぐのは生物?それとも機械でしょうか?
地球は知能を持つ機械に支配されるという人もいますが、進化には別の可能性もあるのではないでしょうか?将来人は人間は機械と融合するかもしれませんね!