Science Park
一回限りの現象を扱う科学 第4回
~ビックデータで未来を守る~
今、私は家の机に座ったまま、地球の裏側のボストンの友人やネパールのコンピュータプログラマー達と顔を見ながら話せるようになりました。
今や、小型コンピュータを誰もが持ち歩く時代です。
しかし、50年前までは、部屋を占領するほどの大きさでした。
技術の進歩によって、小型化に成功したのです。スマートフォンの登場は、社会の在り方を変え、信じがたい結果をもたらしました。ボタンをタッチするだけで、世界樹の人と情報を共有できる。
1820億通のメールと5億件のツイートが、毎日送信されています。
インスタグラムには7000万枚の写真、フェイスブックには30億件の“いいね”
考えやアイデアは直ぐに拡散できます。
1件の投稿が、何十億人にも届くのです。
しかし、500年前は、99%の人は1冊の本さえ手に出来なかったのです。細心の注意を払って彫られ1ページずつ印刷されたのでした。
その後、グーテンベルク(Johannes Gensfleisch zur Laden zum Gutenberg)がある単純な方法を考案しました。
金属板から活版を作ったのです。
金属の活字が鋳造され、印刷速度は大幅に上がりました。クーテンベルグは、15世紀のドイツのシュトラスブルクで活版印刷術を研究し、1440年ごろに完成させたと言われています。
後にマインツに戻って印刷業を開業し、1455年頃、『グーテンベルク聖書』と言われる聖書を出版しました。この活版印刷による聖書の普及が、宗教改革の広がりに大きく貢献したのです。1522年にはルターのドイツ語訳新約聖書がヴィッテンベルクで出版されて、さらに本は急速に広がりました。
本を一冊刷るのに数週間かかっていたのが、1時間に1冊、刷れるようになったのです。
この印刷方法で費用は100分の1に削減され、歴史的価値のある文化をもたらしましたわけです。
人々は安価な本の登場で、読み、書きを学べるようになりました。
富裕層以外にも読み、書きが浸透したのです。
その後500年、印刷物は大衆伝達の手段となり、何十億部もの本や新聞を発行したのです。
200年以上の間、本や新聞は最速の情報手段でした。
最速といっても、もちろん人が運ぶ時間は必要です。
しかし、1844年に、あるものが発明され、その時間は飛躍的に短縮されました。電信が発明されたのです。
モールス(Samuel Finley Breese Morse)はヘンリーの技術指導を受けて、電信機を発明し、文字や数字をdot(トン),dash(ツー)の組み合わせで表現するモールス符号を考案しました。
1840年に特許を得て、1844年に世界初の遠距離(ワシントン–ボルチモア間)電信が行われました。
情報が伝わる速度は、人や馬が駆ける速度ではなく、ケーブルを流れる光の速度になりました。何日も必要だった運送時間が、数秒になったわけです。
だが大陸同士をつなぐとき、電信にとって、本当の試練が訪れました。
1858年7月29日大西洋の真ん中で接近する2隻の船、両船とも銅線のケーブルを運んでいました。ゆっくりと慎重にケーブルが繋がれました。
これが最初の大西洋横断海底電線です。ヨーロッパとアメリカが初めて電線で結ばれ、電信で情報を送れるようになりました。
1858年8月16日英国のヴィクトリア女王はフランクリ・ピアース米国大統領に祝電を送ったのは有名な話です。
しかし、女王陛下の99ワードの祝電は、
The queen desires to congratulate The president upon the successful completion of this great international work which now connects Great Britain with the United States of America…送信の官僚に7時間40分も要したのです。
信じられない遅さです。時間がかかりすぎたと思うでしょうが、船や手紙を運ぶよりも、圧倒的に速く届けられたのです。
現代では、80万キロ以上の海底光ケーブルが全大陸を繋いでいます。
しかも、このネットワーク網は、過去5年だけで倍増しました。
海底ケーブル“SMW3”は、技術者による偉業でした。
その長さは、3万8620キロにも及び、日本からベルギーまで33の国を繋いています。そして、1秒間に送られる情報量は2000億ワードに相当します。
そして、究極のコミュニケーション網が誕生しました。
今日の私たちの交流手段となる…インターネットです。
Global Internet
こうした情報網の発展により、私たちは好きな時に好きな人とコミュニケーションが取れるようになったのです。
大阪にいても、ニューヨークやモスクワのダンサーに学べるのです。
富士山の頂上や南アルプスの登山道にいても、多くの情報を得ることが可能です。
20年前の知識人の百倍は入手できます。
インターネットは社会の頂点に君臨し、日常生活のあらゆる面を形づくることができるようになりました。
世界中のどこにいても、すぐに利用できます。
かつてないほど、私達をつなぎ合わせているのです。
今日、私たちの住む世界は、まさにグローバルであり、複雑に絡み合っています。
この膨大な情報を利用して、未来を予見することが出来るのです。
私達は将来、食料や電力の供給問題、新種の病気やアルツハイマー病に直面することになるでしょう…地球での私たちの未来を守るためには、発明や大胆な革新も必要です。
現在1年で私達が生み出しているデータは過去の歴史全体より大きいのです。何百万ものデバイスに、全世界で250京バイトもの膨大なデータを蓄積しています。
今はデータの時代です。
データは非常に価値があります。
データを基に作った詳細な図面から、私たちの世界は相互につながり依存していることが分かります。
そして、同時に私たちの“もろさ”も示してくれます。
私達はこの膨大なデータから、未来がもっと分るようになりました。
ある行動がどう展開するのか、予測できるのです。
現在、世界に人口は1日につき20万人ずつ増えているのです。
日本は残念ながら、2015年以降は減っていますが、現在、世界の人口は73億人です。
最初は穏やかな増加でした。人口が10億人を超えるのに1万1500年かかりました。
その後、わずか130年で20億人を突破したのです。この50年の間に人口は更に倍増しました。勢いのついた増加は、もう止められません。
あと15年で世界の人口は80億人に膨れ上がります。20年後にはピークを迎え、90億人を超えると予測されています。
人口が20億人増えるのに、わずか1世紀の時間しかかからないのです。
現在は70億人ですが、今後35年であと20億人は増えると見込まれています。
こんな急激な増加は、前代未聞です。
この人口増加を誘発したのが、技術革新なのです。
これまでの成功が私達の首を絞めるのでしょうか…このままいけば、近い将来、ある問題に直面します。それは食糧難です。
どうやって、この人口を養っていくのでしょうか…それも環境を破壊することなく、この問題の争点は…今も世界中で議論されています。問題は分かってきたようですが解決策はあるのでしょうか…?
そして、もう一つが水です…ほぼ全ての活動に水が必要だからです。あと25年で「30億人分の水が足りない」状況になることが報告されています。
作物を育てたり、製品を作ったりするために、水は欠かせません。
これ以上の環境破壊は許されない、気候変動も同じです。
いまこそ、解決策を考える必要があるときではないでしょうか?文明の発達で人口は増えましたが、これは過去に経験のない事でもあります。
人間は食料なしには生きられません…食べることは生きることなのです。
食料確保は大変です…農業と牧畜には広大な土地と何百万リットルもの水と飼育や輸送のためのエネルギーも必要になります。すべてが環境への負担となります。
実は二酸化炭素を最も排出するのは農業なのです。自分の庭で1年分の食料を育てているとします…その庭が毎年、縮小していくのです。
初めは何とかなっても、次第に困ることになります。1人分の食糧を供給するには2,448坪の土地が必要です。
しかし、2040年には同じ面積の土地で4人分の食料をまかなうことになります。
既に、世界中の耕作地は、ほぼ全て使用されています。
アメリカのグリーン・センス・ファームをご存知ですか、LEDライトを使って作物を栽培しているのです。
莔を何段も重ねることで、使用する土地の面積を90%削減しています。
1年に収穫される作物は、26種類にもなりました。
日本では、植物工業として人口の光で植物を育てています。https://www.youtube.com/watch?v=NNqppLR4XxU
しかも、この栽培方法は、水も削減可能です。畑で栽培する場合に比べ、10%の水しか使用しないのです。
これは重要です。なぜなら、水の確保も解決すべき課題だからです。
宇宙から見ると地球は水の惑星だと分かります。しかし、その多くは使えないことは知られていません。https://www.youtube.com/watch?v=YurJx028wE4
地球上の97%の水は海水で、真水は2.5%しか存在していないのです。
さらに、使える真水は少ないのです。真水の殆どは氷河や地下水で使用できません。使用できる真水はわずか1%程度で、限られた資源なのです。
それだけではありません、その1%の真水のうち、3分の2が農業に用いられています。また、日々の食事を用意するには大量の水が必要です。ジャガイモを数個育てるのに約25ℓ、サラダを作るのに約140ℓ、卵を2つ生産するまでに、さらに約270ℓ、お米には1,200ℓ、ステーキには2,000ℓ以上、実にコップ一杯の牛乳でさえ200ℓが必要なのです。
つまり一食の食事を作るために、水は2,600ℓも必要になるということです。
これが1時間に何百万食も用意されるわけです。
私達が食べる作物の多くは、灌漑農業で栽培されていますので、稲や野菜や肉や乳製品を生産するには、大量の水が必要になるのです。
そのために水は、貴重な生活必需品なのです。日本は島国ですから考えにくいのですが、世界では、今でも水を巡って争いごとが絶えないのです。
宇宙から見ると水が枯れていることが分かります。
https://dailynewsagency.com/2011/05/17/pics-from-the-international-space-station/
中国の黄河は、農業用水に使われて10%しか海に流れ出ていません。
パキスタンのインダス川は、約10%の水しか川に残っていません。コロラド川からメキシコに流れる水は10%に満たないのです。
ですから、大地と水を守る農業が求められているわけです。
イギリスのロンドン北部のハーペンデンにあるロザムステッド研究所では、遺伝子操作により収穫量を増やす研究が行われています。
http://meruka2.sakura.ne.jp/aid/data/農業と科学%202004.11月/農業と科学%202004.11月.pdf
面積当たりの収穫量を増やせれば、食糧難は緩和していけるとしています。
遺伝子組み換え技術を利用すれば、収穫量を伸ばせると…
収穫量を増やすのに広い土地も水も肥料も農薬も不要で、今より2.5倍の収穫が望めるといいます。
害虫や干ばつや洪水に強い苗作りは、生物工学も貢献しています。
栽培可能な地域を増やすことも出来ます。アフリカでは干ばつに強い小麦をアジアでは干ばつや洪水に強い米がインドやパキスタンで、干ばつに強い穀物がカンザスで、トウモロコシがウガンダで、小麦がアフリカの半乾燥地域やオーストラリアや南米で栽培されることになります。
しかも気候変動の歯止めになる可能性もあります。
それらの解決策は様々なデータが教えてくれるのです。
人類の未来を守るために、そこで、役に立つのが、集めてきたビックデータなのです。
このビックデータを使用して、未来を予測し解決策を見つけることを急がねばなりません・・・その中でも、食糧や水の問題と同様に議論されているのがエネルギーに問題です。
人口が増えるにつれ、電力は生き渡らなくなります。
気候変動を止めるには、もう化石燃料に頼れません。太陽エネルギーに、近い将来頼らざるを得ないでしょう。
現在、太陽エネルギーを利用した電力使用量は、過去5年間で倍増しました。世界で最も電力消費の多い国は、中国で常時発電量は400ギガワットにもなります。アフリカ全体における消費量に倍以上です。
カナダでは、温室効果ガスをほぼ排出しない風力発電量が、この10年で20倍も増加しています。
私達が、石炭や石油を採掘し始める前は、主なエネルギー供給源は、太陽でした。私達は最初の位置に戻り、エネルギー供給源を太陽に頼ることです。
私達の社会は、この1万2千年で大きな変化を経験しました。遊牧民であった私達が、現代の世界を作り上げたのです。
相互に繋がる巨大なネットワーク網は、イノベーションの成果です。今や全人類を繋いでいます。この驚くべき繫がりは、相互依存を深めてきました。個人の行動が相手に影響するので、秩序が重要になってきます。
日常生活での全ての行動が、大量の情報を生み出します。その情報をまとめると、自分たちを振り返れるのです。
データが私達の豊かさを始めて可視化してくれました。しかし、その成功には危険も潜んでいたのです。
70億人物人口を支えなければなりません…しかも、あと数十年で人口はさらに20億人増加する見込みです。
未来はどうなるか分かりませんが…今後、この状態が続くのであれば、人類は種として大きな試練に直面することは間違いないようです。
しかし、私達は常に逆境に打ち勝ってきました。人類の歴史を振り返ると人類は幾度も問題を解決してきました。
遥か遠い昔から…技術や頭脳を駆使して試練を乗り越えてきました。私達には協力して未来に立ち向かう力があります。それも、個々の国ではなく1つの世界として…
私達には豊富な知識があり、偉大な想像力があるからです。
膨大なデータは、手にしましたが、活用の方法を学ばなければ、悲劇が待っているだけです。
この豊富なデータに学べば、未来を想像できるし…どんな未来を望みましか?
私は、2040年には、間違いなくグローバルな社会が来ると思っています。
人類の可能性を十分に発揮できる…そんな未来を願っています。
今年も宜しくお願い致します。