梶原千津子,青木可奈恵,原啓子,羽田野政治
社団法人認知症高齢者研究所
【要旨】2012年の調査では、65歳以上の被保険者数は、推移計2,986万人にのぼり、要介護・要支援の認定者数は推移計533万人に及んでいる。(厚生労働省資料より)
一方、高齢化が進む中、一般病床と療養病床を合わせ130万床、介護施設及び居宅系サービスは123万人分という許容バランスの崩れの現状から、今後「施設」から「地域」へ「医療」から「介護」へと移行するべく地域包括ケア整備が必定となっている。そのため、医療や住まいとの連携を視野に入れた地域包括ケアである定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスに焦点を当て、ケアマネジャーの役割、多職種間の連携により施設同様の個別ケアや均一ケアが実現できたことを報告する。
【目的】介護状態の重度化、長期化が進み病院や介護施設との許容バランスの崩れから介護放棄や孤独死など介護問題は社会問題として顕在化している。
上記内容を踏まえるとケアマネジャーの使命は、利用者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができるよう地域の社会資源の有効活用が中心となると言える。
本研究では、医療や介護との連携を視野に入れた地域包括ケアである定期巡回・随時対応型訪問介護看護サービスに焦点を当て、そのサービスの有用性とケアマネジャーの役割、多職種間の連携について検証した。
【方法】対象者:A氏82歳、日常生活自立度A2、既往:狭心症・骨粗鬆症・低カリウム症。
A氏に対し1週間24時間の経過を通してアセスメント(バイタル測定・MENFIS・HDS-R・睡眠排泄パターンの評価観察)を実施。加えて食事作りや入浴介助、服薬の様子や管理などの介助・支援の状態などをICTによる情報共有システムで記録した。
そして、その情報を多職種間で把握し、サービスの内容と個別プランを立案し状態変化を観察した。
期間:平成25年3月5日より4月5日の31日間
【倫理的配慮】本研究に当たり、本人、家族、所属長、各事業所に研究の趣旨を説明し了承を得た。また、個人情報及び秘密保持について配慮した。
【結果】24時間のアセスメントを把握したところ、フォーマルな活用が主となり、近隣の知人が複数人交代にて食事作り、身の回りの世話をしているなど施設には無いコミュニティが観察された。体調管理に於いては、朝、昼、夜の血圧が大きく変動するなどの自律神経症状が確認できた。脈拍も頻脈傾向にあり水分量も少ないことがわかった。また、HDS-Rの得点は21点と比較的高い結果が出ているが、近時記憶に低下が見られMENFISからは気力の低下や適切な感情表現の低下が把握できた。
また、多職種連携により低カリウム症の改善に管理栄養士による食事療法を行い医師の検査の結果、改善傾向が認められた。服薬は自ら飲むが管理が出来ていないことも分かり服薬時に10分程度、毎日サービスを行い習慣化できるよう支援するなどの個別ケアが実施出来る結果となった。その後のA氏の定期巡回随時対応サービスを利用した状態の経過や有用性は当日発表する。
【考察】訪問介護サービスでケアマネジメントする際には、サービスの流れを週間で考えていたため、体調管理や状態の経過観察は皆無であった。定期巡回随時対応サービスによって利用者の生活を24時間に渡ってアセスメントし、残存能力を見極め、何時どのような場面でサービスが必要か「短時間の定期訪問」「随時の対応」といった手段を適宜・適切に組み合わせてサービスが入ることができる。そのため、施設同様の経過観察を1日毎に記録することが出来、状態に合わせサービスを翌日から変更できる定期巡回随時対応型サービスの有用性は施設では難しいと言われる個別ケアや均一ケアまでの実現性を示唆するものと考察できる。