2008年 第9回大会 日本認知症ケア学会 「BPSDに対する医療と介護の連携の効果」

「BPSDに対する医療と介護の連携の効果」

井戸 和宏、羽田野 政治ら

【目的】

認知症では、記憶障害や見当識障害といった中核症状に加えて、精神症候、行動障害からなるBPSDがみられることが多い。FPD(財団法人 ぼけ予防協会)の調査報告(2008)によると、「BPSDを有する認知症の方は毎日1回以上BPSDを呈するのがほとんどであり、生活の困難さが目立つ結果となった」ということである。また、「妄想、幻覚、攻撃的言動などを中心とした焦燥が生活に支障をきたしやすい」ということである。

当研究所では、画像診断、血液検査などの臨床検査、行動観察、睡眠・排尿などの生活パターンの把握、神経心理学検査などから多角的にケアプランの作成を行うことで、医療と介護の連携を実践している。その効果検証として、附属グループホームの入居者のBPSDの状態を調査した。本研究は、その結果をFPDの調査報告と比較することを目的としている。

【方法】

  • 1. 手続き

2008年4月時点での当研究所附属グループホームの入居者72名のBPSDの頻度をTBSを用いて各ユニット計画作成担当者が評価した。

  • 2. 対象

2008年4月28日時点での当研究所附属グループホームの入居者72名平均年齢83.4歳(男性17名、女性55名)。認知症の原因疾患は、AD54.2%、DLB25.0%、VD8.33%、その他12.5%。平均要介護度3.26。

  • 3. 尺度

ぼけ予防協会(2008)による問題行動評価票(TBS)を使用した。

【倫理的配慮】

本研究における個人情報の取り扱いについては、事前に本人・家族に趣旨を伝え了解を得た。

【結果】

  • 1. BPSDの種類

最も多かったものは、不安の37.5%であり、以下、焦燥31.9%、攻撃的言動19.4%、介護への抵抗18.1%、依存16.7%、妄想16.7%の順番であった。

  • 2. BPSDの頻度

日に一回以上BPSDを呈するケースが40.1%、週に数回が35.5%、月に数回が19.1%、月に一回が5.3%であった。

【考察】

BPSDの種類においては、FPDの調査報告と今回の結果を比較すると、妄想、攻撃的言動、睡眠障害、幻覚、徘徊などが、適切なケアと薬物療法の効果が現れて軽減しているのではないかと考えられる。それに対して、不安、焦燥が多いことが目立った。これはグループホームという集団生活に伴う影響もあるのではないかと考えられる。

BPSDの頻度においては、FPDの調査報告と比較すると、今回の結果は、毎日BPSDを呈することを抑制しており、週に数回や月に数回といったように頻度が減少していることが示唆された。

FPDの調査報告は、在宅中心でBPSDが著しく、生活上支障が激しかった人が対象となっている。当研究所は初期から末期までの認知症の人が入居しており、その点を考慮しなければならないが、医療と介護の連動したチームケアの方向性を示す一指針になるのではないかと考えご注意ください。

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