今回は脳と記憶について学んでいきます。
実際、私たちの脳と記憶は、常に私たち自身を欺いているのですが、それには理由があるのです。
記憶とは、ただの記録しているわけではないのです。
貴方の記憶は注意深く蒸留され、そしてしばしば編集されすぎた消化物なのです。
私たちは、記憶に絶対の信頼を置いていますが、記憶というのは時として、とてつもなく不正確になりえるのです。
私たちの脳は実際には起きてもいないことを思い出したりするのです。
貴方の記憶力を試してみましょう!不可思議な脳の謎を追及してみましょう。人は注意を払っていないものは、思い出せないのです。
実際、人が意識している箇所は、非常に小さな範囲で、動き回るスポットライトのようです。
複雑で洗練されているように思える脳ですが、日々の生活で拾い上げているのは、ほんのわずかな情報のみなのです。
脳は人類の進化における脅威とは言え、まだ完ぺきではありません。選択された細かい情報だけが、記憶を決定づけるのです。
記憶というのは、身の回りに起きていることの要点を抜き出したものです。細かいことを全部覚えているわけだはありません。記憶は細部に宿るのであれば、人は記憶を新しい情報で上書きしてしまいます。しかも、気付かないうちに・・・
人間の脳は、記憶をもてあそぶことが度々あります。
実際のところ、私たち自身の人生は、それをどう思い出すかによって形成されているわけですから、現実に起きたかどうかは関係が無いのです。
人間の脳は、地上最高の装置といわれています。それは、宇宙の謎を解き、人類の歴史を書き換えてきた装置だからです。
自分の脳がどうやって働いているか知ることが出来れば、この世界に対する認識を自分で構築することが出来ることになるでしょう。
しかし、私たちの脳は完璧ではありませんから、しかも、最も完璧でないのが記憶でしょう!
注意を払っている時でさえ、細部が抜け落ちることがありますからね…
試算によると、人間の脳は1日に34ギガバイトに相当する情報を受け取っているそうです。
記憶に残る分だけで…これです。
人の脳がいかに複雑とは言え、日々余りにも大量の情報に接するため、細部の記憶が曖昧になってしまうわけです。
そして、時には慣れ親しんだ状況でさえも意味をなさなくなることがあります。肝心な時に脳がそれを思い出すとは限らないからです。この細かい記憶の取捨選択が、度忘れです。
お酒に正通がある人なら、アメリカのバーボン種のジャック・ダニエルを御存知ですよね!
蒸留所という成功の裏には苦難が伴っていました。1905年のある朝、ジャックは事務所に行って、金庫から書類を出そうとしました。
でも、金庫を開けるダイヤルを度忘れしてしまったのです。
毎日使っている金庫なのに、ジャックは番号を思い出せませんでした。以前にも同じことがあったので、頭にきたのでしょうね!
しかし、鋼鉄の金庫とやり合うのは、あまり良いやり方ではありません。蹴った瞬間、つま先が砕けてしまったそうです。
数え切れないほど開けてきた金庫なのですが、ダイヤル番号を忘れてしまったのでしょうか…
その理由は、1円硬貨、10円硬貨、100円硬貨を思い浮かべてください。
毎日、硬貨を見ているはずなのに、殆どの人が、何が書かれているか答えられないのですよ!
慣れ親しんできたものを忘れてしまうのは何故でしょう!
ひとつの行為を何度も何度も反復したからと言って、そこで見たもの、したことを思いだせる保証はないのです。
実際には、その反対で、一つの行為を繰り返せば繰り返すほど、それが習慣的になり、注意も払わなくなるので、思い出しにくくなってしまうのです。
何百回も歌ってきた、歌の歌詞を忘れてしまったり、毎日アクセスする、ウェブサイトのアクセスコードを度忘れするのもこのせいです。
しかし、ジャック・ダニエルの度忘れは、より深刻となりました。
結果的に死を招いたからです。
ジャックはあかない金庫に短気を起こして、それを蹴飛ばしました。そして、つま先からばい菌が入り、壊疽を起こしてしまったのです。
金庫を蹴ってから6年後、ジャックはその怪我がもとで死にました。
度忘れが、苦痛と死を招いた例です。
その死を悼むべく、ジャック・ダニエルのラベルは、黒となったのです。
ありがたいことに、度忘れで死ぬことは稀ですが…
しかし、あなたも日頃の生活の中で、写真を見るたび、会話をするたび、そして、例えば金庫のダイヤル番号を思い出そうとするたびに細部の記憶は失われていくのです。
それが、脳の仕組みなので仕方ありませんね!
脳は推定で1秒間に4000億ビット分の情報を獲ているとされていますが、私たちは、そのうちの2000ビット分しか意識していないのです。
つまり、私たちは、日々の生活で1秒間に経験する物事の2億分の1しか記憶していないことになります。少ないですよね!
しかも、その情報がどのぐらい大事で、いつ必要になるかといった判断もつかないのです。
人の記憶とは、情報を格納する記憶ホルダーがいっぱいにつまった。ファイルキャビネットの様なものだといった人がいます。
しかし、記憶というのは、これまで考えられていたよりも遥かに複雑で捕らえどころのないものだそうです。
それは、単純に一つのシステムでなく脳全体にまたがる複雑なプロセスだというのです。
記憶はわれられの想像以上に精巧なものなのです。
単に過去の物事を思い出すだけのものではありません。記憶は細かい除法の維持を苦手とします。
しかし、脳にも問題はあります。時折記憶を作り出してしますのです。
そこには、人や場所、出来事の詳細が盛り込まれているため、あたかも実体験の様に勘違いしてしまうのです。
人はだれでも、過去の出来事を思い出しますが、これは回想記憶と呼ばれています。
人によっては、前世の記憶を覚えているという人も少なくありませんが、自分の金庫のダイヤル番号すら思い出せない時があるのに、前世の出来事を思い出せると信じる根拠は何なのでしょうか?
それはおそらく脳による最後の生理方法が記憶の実態と左右するからでは無いでしょうか。
事実、出来事の細部に手を加えてやれば、誰かに偽の記憶を植え付けることも可能なのです。
人間は、事件や強く焼き付いた出来事の記憶を変質させることがあります。
自発的想起とか、残留記憶とか呼ばれる記憶です。
歴史的な出来事を、歴史書で精査し、その細部までに至ったときや、小説に「はまる」と自分もその場にいたと思ったりするのです。認知症のTV妄想も、これに似ています。
微に入り細に入り、学んでいくうちにこれらが、人生の一部になってしまったのでしょうか!人の脳と記憶はたやすく操られてしまうのですね。
特定の出来事の詳細な情報を与えられれば、脳はそれを自らの体験ととらえ始めてしまいます。それは、まさに自発的想起と言えるでしょう。実体験かどうかは関係ないのです。
脳内の記憶は、新しい情報で汚染されてしまうのです。人の記憶は操れ、本人の意志とは関係なく、記憶の細部を混乱させられてしまうわけです。
実際、記憶を混乱させ、事実を間違って受け止めるのは、人間の脳の特性なのです。
私たちはなぜ、事実でもない記憶にたいそうな自信を持てるのでしょうか…
短期記憶のテストをします。
うさぎ・シャベル・時計・パスポート・バスケットボール・アゲハ蝶・5円玉・うちわ・ダーツ・犬・パイナップル・鍵・野球帽・イチョウの葉・ひまわり・これらの単語をできるだけ多く記憶してください!“
持ち時間は10分です。その記憶を数分間とどめてください!
人の短期記憶は、1回の出来事で4~7つのデテールしか脳内に保持できないのです。
これをマジック7といいます。
その数を超えると、人は記憶違いを起こすのです。信じられますか!短期記憶が保持できない情報量に達したとき、人は混乱し始めます。
では、テストに戻ります。
今から、先ほどの記憶してもらった単語を、絵を見ないで、いくつ書き上げられるか自身で確認してみてください。
このように、わずかな時間でも記憶が曖昧になってしまいます。この仕組みが、虚偽記憶で日々の生活の中で、勘違いを生み、それを私達は信じてしまうのです。
このように虚偽記憶は珍しいことではありません。特に感情が高ぶる出来事の時は、こうした虚偽記憶が生じやすいのです。
記憶に自信があっても、その記憶が正しいとは限りません。記憶は書き換え可能だからです。
私たちの脳には、数多くの記憶が詰まっていますが、それらが正しいかどうか、実は証明することはすごく難しいのです!
つまり、記憶を思い出すことは、信じることRemembering is believingかもしれませんね!
人は、聞きなれた話題の場合、過大評価してしまう傾向にあるのです。
その心理現象は真実性錯覚効果として知られています。
人は一つの主張を聞けば、聞くほど客観的な真実に関係なく、その主張を信じてしまうのです。
メッセージを反復すれば、人の頭に記憶をねじ込み、虚偽の真実を強化してしまうことになり、継続的なプロパガンダが効果的なのも、広告会社が同じコマーシャルを繰り返すのも記憶の中にメッセージを植え込む真実性錯覚効果ということです。
脳は、自身が得たい情報の判読が終わると、いともたやすく、細部を見過ごしてしまうのです。
そして、予期していないものは「見ない」のです。
脳は全体像を把握する過程で、細部を蔑ろにしてしまいます。
このように人の記憶の重要な役割が浮き彫りになります。ただの間違いに思えることでも、実はそれが脳の仕組みを表しているわけです。進化しているといってもこの程度なのです。
人の脳は効率を優先します。
脳の消費エネルギーは、およそ15ワット程度ですから、大事なことのみに集中しなくてはなりません。そう考えると、私たちが思い出す、記憶は、脳の失敗による産物かもしれませんね?
私たちの日常にストレスはつきもの、赤ちゃんの泣き声に、上司の小言、交通渋滞に、期末試験、一方でストレスは危険から身を守る役目も果たしています。
人間は不安に駆られると、脳の中で次々とホルモンが分泌され、体の状態に変化が起こります。つまりストレスを感じるのです。ストレスを感じると、心臓がバクバク、舌はもつれて動かない、頭は真っ白…完全にフリーズしてしまいます。
このような、一連の体の反応を引き起こすのは、脳の中にある偏桃体です。
ストレスを感じると、偏桃体が警告を発し、アドレナリンとコルチゾールが過剰に分泌されます。
これらのホルモンが出ると呼吸が早くなり、心拍数が増え、瞳孔が拡大します。
全て危険から身を守るための反応なのです。
では、日々感じるストレスの正体とはいったい何でしょう!
カリフォルニア工科大学の神経科学者、チェス・ステットソンChess Stetson博士によれば、ストレスは刺激を受けた時に起こる一連の反応を指すと言います。
それが原因で、様々な生理現象が引き起こされるのです。
心拍数が上がるのも、悪いこととは言い切れません、その状況を早く切り抜けるために役立つこともあるのです。つまりストレスに対する反応は、人によって違うのです。ストレスによる緊張に負ける人もいれば、緊張を味方につける人もいるのです。
些細なことで、直ぐパニックになる人もいれば、緊迫した状況でも冷静に行動できる人もいます。貴方はどちらですか、うまくストレスに対処できる方ですか、それともできないタイプですか…
人は無意識に、体は攻撃逃避反応を示します。人間の脳は危険だと感じると、とっさに攻撃逃避反応をする仕組みを持っているのです。
つまり身の安全を最優先するように、出来ているわけで、身を守るためとはいえ、現代人はこの反応を引き起こす要因に囲まれて生きているようなもの・・・その結果、気分や健康、更には記憶に影響を及ぼすことになってしまうのです。
では、それを証明してみましょう!
これから一つずつ指示を出します。その指示を正確にこなしてください!次の指示を出すまで、それをずっと続けてください。
手を叩いて・1から10まで数えて・手を頭の上に・足踏みして・ニワトリの鳴きまね・
バカバカしい気分になりましたか・・・それとも、簡単に出来ましたか・・・
問題は、さて3番目の指示は何でした。
その理由は、次々に飛んでくる指示にストレスを受けた脳が、ストレスホルモンを分泌し、短期記憶を低下させたからなのです。
このストレスホルモンの分泌が続くと、記憶を司る海馬の細胞が損傷します。つまり、身を守ろうとして逆に自分を傷つけてしまうのです。だからこそストレスを貯めないことが大事です。ストレスの原因となるのは、視覚情報だけではありません…目から入る情報だけでなく、音もストレスの原因となります。
脳は大きな雑音に素早く反応するように進化したからです。
現代では、脳がストレスを受けそうなノイズが街にあふれています。
ストレスを強く感じて作業しているときは、20%しか能率が上がりませんが、応援されたり、期待されたり、褒められて作業を行うと、80%も能率が上がるという報告があります。
ストレスに直面したときは、ポジティブな応援の言葉が、良い結果を生むということです。
ストレスに遭遇したら、否定的なことを考えず、前向きに対処していきましょう!
ストレスを完全に排除するのは不可能ですが,でも、ストレスを確実に対処できる方法が笑うこと…笑いが最善の方法なのですから、心して笑うことに努めてみてはどうですか