人生40億回目の鼓動、この記念すべき心拍数に達したら、幸運を祝ってほしい・・・
人生に乾杯、そして、素晴らしい旅に祝福あれLIFE、それは一人の人間が歩む、素晴らしい人生の物語、しかし、私の懐かしき思い出は鼓動の響に逆向しながら落ちて消えていく・・・
~第1章 誕生~
想像も及ばないほどの劇的な変化が、内側でも外側でも起こっていました。
今回は、「人」の物語「LIFE」です。
よく見てみれば、あなたの物語でもあるのです。すべての人が歩む人生という名の長い旅なのですから。
1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒、相模湾北部を震源とする海溝型の巨大地震が発生しました。
私の両親が住む神奈川県三浦でも6mの津波が押し寄せていた。
両親はこの夜、柱に囲まれた幸いにして持ちこたえている仏間で、余震の恐怖に震えながら、抱き合って夜を越したそうです。
その時、私を授かったと信じているのです。
そのことは、のちに付けられた私の名前で分かりました。
しかし、実際にはこの時はスタート地点に立つための資格を得たに過ぎなかったのです。
命を懸けたレース、3億もの精子が一斉に広く過酷な世界に向けて壮大な旅に出たのです。
彼らが目指すものは、ただ1つ、卵子です。
たどり着ける精子は1つだけ、あなたも私も、このレースの勝者なのです。想像してみてください驚くべきことに、この時点で私の順位は1億番目よりも下でした。大きさも、早さも、強さも、飛び抜けてはいなかったのです。
それでも大丈夫、勝つために必要なのは、強運とスタミナ、そして、とりわけ大切なものがあります。タイミングです。
12時間後、母の体内では、人知れず奇跡が起きようとしていました。
先に着いた兄弟たちが、卵子の保護層を緩めておいてくれたのです。そのお陰で私は、中に侵入できました。
この時こそが、受胎の瞬間・・・人生の始まりです。
しかし、母は妊娠の瞬間を何も感じていませんでした。
同じ部屋にいた父も知ったら驚いたでしょうね。
卵子の中では、父母から23本ずつ受け継いだ染色体が合体していました。
46本の染色体のDNAコードで、その人の特徴が決まります。
1つの細胞の中に、新しい命の設計図があるのです。
この後は、もう待つだけ、細胞は2つになり、4つになり、分裂を繰り返します。
約3週間後には、私の出来たての心臓が最初の鼓動を打ちました。ドクン!ドクン!ドクン!・・・
心拍をコントロールするのは、洞房結節という組織で、必要に応じて心拍を調整します。意識しなくても、この組織は、生きている間、休まずに働き続けるのです。
5週目になると器官形成期になり、各器官の形成が一斉にスタートします。
大きく3つの組織から形成されていきます。外胚葉、中胚葉、内胚葉で、外肺葉は皮膚、爪、毛髪(髪の毛)、眼球(目のレンズ)、鼻、下垂体、乳腺、肛門、歯のエナメル質、そして、神経システムに脳、中胚葉は筋肉、骨、リンパ腺、汗腺・循環器(血液組織)、生殖器、泌尿器系(排泄器)、そして心臓に外肺葉は消化器官、舌、肝臓・扁桃腺、尿道、膀胱、気管支や肺になります。
4か月後、鼓動の数が2700万回を数えた頃、私は存在を主張し始めます。
当時の私の身長はわずか28㎝、だけど頭の中では、内耳の蝸牛という機関がすでに機能しているのです。
母親を通して入ってきた外部の音が、聴毛という細い毛を揺らし、聴毛が音の信号を脳に伝えます。
21週目には、内耳と外耳という基本形態が完成して、はっきりではありませんが、音楽や両親の声が聞こえるのです。
子宮内で最も発達するのは脳です。
指令室である脳は、絶え間なく働き毎秒約5万個もの神経細胞を作り出します。
受胎後に始まる脳の形成は、生物の生命そのものの進化を辿ってきます。
たとえば、今から5億年前に生物が獲得した神経管は受胎後3週目に形成され、神経管の発生時は1本の管になっていますが、次第に隆起していき,
前方から大脳、間脳、中脳、小脳、延髄、脊髄に分化していきます。
さらに、今から6500年前に発達した大脳皮質は、17週目頃に140億個程度の神経細胞によって形成されるのです。
また、神経管の壁面内部では、マトリックス細胞が分裂を始め、増殖を重ねて神経管の壁面は成長していきます。
そして、神経管の外側には神経細胞が蓄積され,樹状突起を伸ばして神経回路が形成されていきます。
生まれるころには1000億もの神経細胞が出来上がっています。
打が、急速な発達には問題もあります。9カ月で脳は大人の4分の1の大きさにまで育ちます。
母親から取り出せるぎりぎりの大きさなのです。
1924年7月25日金曜日の明け方、ついにその時が訪れました。
生まれても、まだ油断はできません。
しかし、生き残れるか否かは、誕生して最初の1回目の鼓動に懸かっているのです。
子宮の中で酸素を母親からもらっていたときは、心臓の穴が肺の代わりをしていたのです。
生まれた後は、すぐにその穴を閉じなければなりません。
血液が流れ込み、肺が機能し始めるからです。
血液は右心室から肺に送り出され、肺の入った血液は酸素を取り込みます。
その後、血液は左心室から全身に送り出されるのです。
その機能が働けば、ついに独り立ちです。そして、賢治と名付けられました。
http://Japan-brain-science.com/
私の父は、熱心な仏教徒だったので、仏教の教えを意味する賢と、布教を意味する治を併せ持たせたそうです。やはり、仏間での出来事だったということです。
退院後 背は2.5㎝伸び、体重は200g増えました。
小さな数字に見えますが、この調子で成長すれば10歳になる頃には身長3.5mということになるわけで・・・
目も見えるようになってきます。生後1カ月でピントが合うのは20㎝の距離まで、実はそれだって大きな進歩なのです。
目の仕組みは、カメラと似ていて上下左右が逆さまに映っているのです。正しく見えるようになるには、脳が見方を学ばなければならないのです。ピント合わせや、奥行きの把握にはさらに時間がかかります。生後6か月たつと、目は正常に働くようになります。
しかし、この頃から、私は体に次の大きな変化が起こり始めていたからだ、初めて味わう苦い苦しみ「痛み」歯の萌出です。
成長過程で、これほど苦痛なものはありません。
歯のエレメント質は体内で最も硬く、乳歯が生えそろうまで20回この痛みに耐えねばならないのです。つらいのは、私だけではありません。
一度母親をかんでしまうと哺乳瓶の出番になってしまいます。ミルクを卒業し、消化器官が発達すると、食べ物から栄養が取れるようになります。
タンパク質、炭水化物、脂肪、ビタミンなどなど・・・
成長に必要な栄養素です。
それ以降、驚くことに、今日まで私が消化した食べ物は63t分にもなるのです。
栄養をたっぷり取った私は、念願かなって、独り行動を始めました。
ハイハイは体の成長にとても役立ちます。
筋肉が付き、バランス感覚を養えます。急成長中の骨格にも、いい運動になります。生まれた時、約300本あった小さな骨は、成長と共にくっ付いて206本になりました。
1日1日の成長は、ほんのわずかでも時間を早回ししてみると、変化の大きさに気づきます。生まれたからの1年間は、毎日が変化の連続です。
Happy Birthday賢治、初めての誕生日です。
そして、私はこの日、初めて言葉を発しました。
完璧とはいかなかったけど、両親は飛び跳ねて喜んでくれました。
やがて、私は大きな可能性を開く1歩を踏み出します。
小さな1歩ですが、これから歩く約2億歩は地球を
4周できるだけの歩数です。
その年の12月25日、大正天皇が崩御され「昭和」の時代になりました。
次回の人生40億回の鼓動は、新しい体験をするたび、脳内にある何十億もの神経細胞がつながっていく幼少期、581,042,006回目の鼓動の時、何が起こったのか、お話します。