今回は、生命の誕生を振り返りながら、認知症について考えてみる後編です。
地表の温度が下がってから、5億年ほどが経ちました。
有機物を含む隕石が降り注いだのは遠い昔のこと、大気は温暖で湿っています。
海の底には、単細胞生物が住んでいたかもしれませんが、私たちの祖先ではないでしょう!
大量の隕石が、再び地球を襲うことになるからです。
それらの隕石の中に、生命の起源があったとする大胆な仮説がパンスペルニア説です。
パンスペルニア説は、宇宙の他の天体で誕生した生命が、隕石に乗って地球に運ばれて来たという考え方です。
まだ、確証はありませんが、可能性としては大いにあると思っています。
データがそう言っているのです。
パンスペルニア説の発端は、およそ41億年前に起きたとされる出来事。
当時太陽系の惑星のうち、外側にあるものは軌道が定まっておらず、移動を続けていました。
その結果、重力の影響を受けて、小惑星などが次々と地球に衝突したとされます。後期重爆撃と呼ばれる現象です。
遠くから、多くの小惑星や彗星が飛んできて、地球に衝突しました。
小惑星や彗星が降り注いだ結果、海水は煮えたぎっていたでしょう!
当時、海の中に生命がいたとしても、すべて死に絶えたと考えられます。
天体が降り注いだのは地球だけではありません。
火星も同じです。当時の火星は現在とは異なっていました。火星は地球より小さいので早く冷えます。地球より先に大気と海が存在していたかもしれません。
そうだとすれば、火星でいち早く生命力の強いバクテリアが生まれていたかもしれません。
岩石の中に住んでいることで強い紫外線や過酷な環境にも耐えることが出来るのです。
火星に天体が降り注いだ時、バクテリアを含む火星の岩石が宇宙に巻き散らかされたかもしれません。
何らかの有機体が、石の中に閉じ込められたまま放りだされて、長い間、宇宙をさまよった末に地球にやってきた。そして、地球上で増えたのかもしれません。
バクテリアは、後期重爆撃によって火星の石とともにやってきた。
ありえない話ではありません。
しかし、宇宙で長期間生存できるものでしょうか、実は、バクテリアには宇宙でも生存できる生命力があるのです。
地球のバクテリアの中には、過酷な環境にさらされると、胞子を形成するものがあります。
胞子は植物の種のように、中心部の部に遺伝情報があって、何層の壁で覆われているのです。
胞子は宇宙船みたいなものなのです。
その中にいれば宇宙空間にいても、バクテリアは長い間生きていることが出来ます。
胞子のお陰で、バクテリアは信じられない期間を生き延びることが出来ます。
近年、2億5千年前の胞子から、バクテリアが再生されました。
恐竜の時代より古い太古のバクテリアです。
理論上では生命力の強さは分かっていましたが、実際に古代のバクテリアが再生されたのですから、驚きです。しかし、ハンスペルニア説は、問題の論点を変えただけで答えにはなっていません。たとえ生命の起源が地球ではなく火星にあったということが事実であったとしても、生命がどう誕生したのかという肝心な点が不明なのです。
私たちの祖先は、宇宙から来たのか、それとも地球の海で生まれたのか、いずれにしても生命がたどる道は試練に満ちています。進化が始まる前に、多くが絶滅することになるのです。
地球には、実に様々な生き物が存在しています。
植物、動物、単細胞生物、そして人のような知的生物、しかし、どの生き物も元をたどれば、共通の祖先に行き着きます。
全ての生き物は、つながっています。
ヒトのDNAの50%は、意外ですが、バナナと同じです。
細胞核もDNAもとてもよく似ています。
DNAはソフトウェアのようなもの、そこに記録されたプログラムは、複雑な構造の物質やエネルギーの作り方、そして、自己を複製する方法を細胞に伝えます。
生き物を語る時、私達はアミノ酸や分子など、体を構成する物質に目を向けがちです。
でも、生き物が物質と決定的に違うのは、情報を持っていること、注目すべきなのは、ハードウェア―ではなくソフトウェア―なのです。
DNAの最大の特徴は、変化する能力です。
長い歳月に渡り、何度もDNAの構造に変化が起きたことで、生物は多様化しました。こうした変化はDNAが損傷したときに起きます。
欠けた部分は、通常、同じヌクレオチドで複製しますが、時折、別のヌクレオチドに入れ替わることがあります。
ミスマッチは時々発生します。
一概には言えませんが、これがよい変化を起こす場合もあります。
突然変異によって、消化する能力が向上したり、あるいは視力が少し良くなって、背が少し伸びて、遠くを見渡せたり、こういう生存に役立つ突然変異は、まれですが実際に起こっているのです。
それを繰り返して進化していくのです。
人が経てきた数々の突然変異の中でも最も重要なのが、初期の変化です。
単細胞生物から、複雑な細胞構造をもつ生物への進化です。
(資料提供) 新編生物Ⅰ改訂版第1部生物体の構造と機能第4章生物体の構造A単細胞生物と多細胞生物 啓林館
細胞の複雑化がなければ、知性の獲得は望めません。
脳を作るのは脳細胞です。
細胞の働きを器官ごとに特化するには、ある程度の体の大きさが必要です。
およそ24億年前、単細胞生物は複雑な生物へと進化を始めました。
その変化のきっかけは何だったのでしょうか、それは、突然変異によって得た画期的な能力でした。
光合成です。
光合成はDNAの複製ミスで生まれたスーパーパワーです。
初めて光合成を進化させた生物が、シアノバクテリアです。
緑色の微生物は太陽光を利用して自ら栄養を作り出します。
シアノバクテリアは、自らの体内でエネルギーを作り出した最初の生物です。
太陽光さえあれば、どこにいてもエネルギーを作れるので、自由に拡散できました。シアノバクテリアは繁殖し、光合成の副産物として、大気中に酸素を放出します。しかし、当時の生物にとって、酸素は危険な物質でした。
命を奪う猛毒ガスだったのです。
酸素によって、地球上の殆どの生物が死に絶えました。
しかし、一部の生物は、酸素を活用する体に変化し、急速に変化しました。
酸素は反応しやすいので、エネルギー源としては最適です。
だから、酸素に適用することが出来たごく一部の生物は、より効率的なエネルギーを手に入れたわけです。
エネルギーが増えれば、化学反応も増えて、体の構造も複雑化します。
その結果進化が加速するのです。
酸素の力を得た単細胞生物は、それまでにない進化を遂げます。細胞の合体です。
単細胞の微生物は、賢い選択をしました。
合体すれば一つの共同体として、協力し合うことが出来ます。
やがて共同体の中の、それぞれの細胞が役割分担を始めました。
そして、一つの生命として、機能し始めたのです。
いよいよ、多細胞生物への進化が始まりました。
しかし、地球には新たな試練が近づいていました。
それは、爆発的に増えたシアノバクテリアが引き起こした現象でした。
酸素の量が異常に増えたせいで、地球全体の気候が激変したのです。
(参考)藤田保険衛生大学医学部 応用細胞再生学講座 幹細胞(Stem Cell)
大気中の酸素濃度が上がりすぎたことで、メタンなどの温室効果ガスが減少します。その結果、地球の気温は急激に低下しました。
この気候変動で、気温は大幅に下がり、地球全体が凍り付く、全球凍結という状態に落ちいりました。
生命が誕生して以降、初めての大規模な気候変動だったでしょう!
寒冷な気候は、数億年続いたともいわれています。
やがて、火山の噴火によって温室効果ガスが放出され気温が上がると、生き延びた生物達は、暖かく酸素の多い世界で、多細胞生物へと進化していきました。
多細胞生物の大進化は、酸素の増加と関係があります。その後、数億年に渡って、大気の酸素濃度が増加し続くます。
生物はより大きく、より複雑になり、こんにち地球に存在する動物へと進化します。魚類はやがて爬虫類へ、爬虫類は小型哺乳類へ、さらに霊長類へ、およそ20万年前にようやく原生人類が出現します。
今、人類があるのは酸素を生み出した祖先があるからです。
つまり、地球のように酸素があれば、他の惑星でも生命が高度な進化を遂げている可能性があるのではないでしょうか。
その答えは、まもなく見つかるかもしれません。
地球の生命の起源は、すべて解き明かされる日は、近づいています。
生命の進化に於けるポイントを上げるなら、3つ、生命の誕生、酸素による構造の複雑化、そして知能の獲得、地球の生命な誕生以来、より複雑に、より賢く進化してきました。
では、地球と同じように生命進化プロセスは、他の天体でも起こり得るのでしょうか。
答えは、地球の生物の進化を可能にした要素がほかの天体にあるかどうかにかかっています。
星間物質の観測を通して、宇宙空間に有機物が存在していることは分かっています。
また、太陽系の外にある惑星は、これまでに1千以上発見されています。
単細胞生物が生まれる環境なら、たくさんありそうです。
ただ、より複雑な多細胞生物が生まれるには、酸素の濃い大気が必要です。
NASAは現在、新型望遠鏡を開発しています。太陽系の外にある惑星の大気の酸素濃度を調べる為です。
そんな中、最近、火星で行われた調査から驚くべき結果が出ました。
酸素のある天体は意外に多くあるかもしれません。
火星の岩石に地球の岩石にみられる岩漆と言われる現象が見つかったのです。
岩漆の岩の表面を覆っている黒いものは、酸化マンガンを大量に含んだ物質です。マンガンは生物に不可欠な物質です。岩が黒いのはバクテリアの死骸から染み出たマンガンが空気中の酸素と化学反応を起こした結果だと考えられているからです。
火星にもこれと似たような岩石がみられたのです。
非常の高濃度のマンガンを含んだ岩石です。
つまり、火星はかつて酸素濃度の高い大気があり、微生物が生きていた可能性があるのです。
検出されたマンガンが、火星の土の成分だとしても、黒いシミがあるということは空気中の酸素と反応したという証拠です。
火星の大気は今ではほとんど残っていませんが、この発見には大きな意味があります。同じ太陽系の中で、二つの惑星に生命の材料となる有機物と進化を促す酸素が存在したとなれば、この広い宇宙で生命が見つかる可能性は無限大です。
そして、認知症の原因に酸素不足が言われているのです。現在の地球は、森林の伐採などにより以前の地球とは異なるほど、酸素濃度が減少しているのです。
脳は体の中で一番酸素を必要とする臓器です。
細胞内のミトコンドリアは、ブドウ糖を燃焼してエネルギーに変えています。
ですから、心不全や呼吸不全、重度の貧血で血液中の酸素濃度が低下すると認知症症状が出てくるのです。
アルツハイマー病に活性酸素が関与していることも徐々にわかってきました。アルツハイマー病では、脳内の脂質が異常に酸化した結果できるリボフスチンが脳の中にたくさん出現し、アルツハイマー病の原因となる蛋白質アミロイドβが増えてきます。アミロイドβが出す活性酸素が脳神経細胞を死滅させアルツハイマー病を惹き起こしているかです。
また、パーキンソン病やレビー小体型認知症は、一酸化炭素やマンガンなどの中毒によって惹き起こされることは分かっています。
生命誕生の物語は、宇宙で出来た水素で始まり、人類という知的生物に行き着きました、素晴らしい話ですが、生命の証こそが認知症を発生する証なのかもしれません。であるならば、認知症の根本的治療は生命誕生の秘密にあるのかもしれないのです。その解明は、地球外生物の発見にあるのかもしれませんね。
そして、地球外生物は数十年後には見つかるでしょう!