脳と心 科学的認知症緩和ケア★臨界期へ子供返りする放尿・弄便の対応★

20161108部屋の中で、一心不乱に股間を抱え走り回る認知症の方が、介護者が来るまでに間に合わず部屋の中で当たりかまわず放尿をはじめてしまいました。

このことが何を意味しているのでしょうか、「トイレに行きたい」しかし、うまく表現できない記憶と認知の障害による失禁として捉える介護者も多いのです。

しかし、幼児がよくこのような行動をとることを考えると、認知症の方は神経細胞が※可塑性(かそせい)を失い「子供返り」したということになるとも考えられます。

 

 

20161109※神経細胞の可塑性とは、神経系は外界の刺激などによって常に機能的、構造的な変化を起こしており、この性質を一般に“可塑性”と呼んでいる。

神経の可塑性は大きく3つに分けられていますが、1つ目は脳が発生していく時や発達していく段階にみられる可塑性です。

2つ目は老化や障害を受けた時などに神経の機能単位が消失するのですが、それが補填・回復されていくことを可塑性と呼んでいます。

3つ目は記憶や学習などの高次の神経機能が営まれるための基盤となっているシナプスの可塑性(synaptic plasticity)です。特に神経科学にとっては3つ目が重要で、その機構についても徐々に明らかにされてきています。また、記憶には、短期記憶と長期記憶がありますが、短期記憶は主にシナプスでの伝達効率の変化により、長期記憶はシナプス結合の数や形態の変化により達せられると考えられています。20161110

 

 

 

 

 

 

 

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一般に、尿便はトイレに行ったり鼻汁や痰の処理に鼻紙を使うなどは、ある年齢(4~6歳)までに学習をします。

これを臨界期といいますが、認知症の方は学習した技能を忘却してしまい過去化し学習の臨界期前の状態に戻り、尿便や唾液、鼻汁、垢(あか)、痰(たん)などをいじったり、周囲に放置したりする行為が見られるようになるのです。

20161112放尿とはトイレ以外の場所で排泄することで、弄便(ろうべん)は自分の便をいじって衣類や部屋などを汚す行為、これらは不潔行為とも呼ばれています。

認知症の方では、尿便の付いた下着をそのまま着ている、隠す、便をこねて壁などに塗りつけるなどの行為が見られます。

排便したオムツを外そうとしたり、オムツの中に手を入れて便に触れて床に塗りつける場合もあります。

また、認知や記憶、見当識の障害からポータブルトイレを便器と理解できず、流しや洗面所、部屋の隅や、廊下の暗い所などに放尿する行為も多いと言われています。

キョウメーションケアでは、このような不潔行為に対しては睡眠・排泄のパターンを観察し、規則正しく排尿や排便があるように生活のリズムを整えることを推奨しています。

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そして、放尿や排便直後は、直ちに処理し清潔にします。

匂いを残したり始末を嫌がるような態度を示すとエスカレートする「嫌がらせ行動」もあるからです。

大事なことは失敗を叱らないことです。

様子観察13項目では特に態度、表情、行動に注意を払い排泄のタイミングなどを観察した上で対応を行います。

20161114見当識障害からトイレの場所が分からず放尿する場合には、道順障害として理解し廊下にトイレの方向を示す矢印の表示をしたりトイレ前に大きな表示を付けます。

夜間はトイレや部屋、廊下に照明をつけ明るくしておくと軽快できます。

廊下や部屋を徘徊し部屋の隅などに放尿する場合は、部屋の隅にポータブルトイレを置いたり、部屋全体を明るくして四隅が暗くならないようにするなど工夫します。

また、ふたの無い丸いゴミ箱や鉢はトイレと間違いやすいので排除します。 大事なことは、定期的にトイレ誘導することです。

放尿における多くが尿意を催して起きたにもかかわらず、それを忘れて放尿してしまうケースです。

20161115尿意の有無にかかわらず、時間を決めてトイレに連れて行くと軽快します。

定期誘導で夜間起こすときは目覚まし時計を用いたり、音楽で合図したりするのは排泄後の再入眠を安易にするので有効です。

声掛けやゆすって起こすと覚醒を促してしまい逆に生活のリズムが崩れてしまいます。

また、失禁や弄便は、認知症の末期に生じるとされますが、急速な失禁や弄便を認めた場合は、身体的な変化を検証します。興奮や話す言葉やふるまいに一時的に混乱が見られる「せん妄」状態なども念頭に入れておきます。

オムツに尿便をした場合はすぐに始末し、お尻を清拭に痒みなどの不快感を持たせないように配慮します。パウダーなどで汗疹(あせも)の予防を行なうことを忘れずにしてください。

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