Science(サイエンス)は、日本語に訳すと科学と訳されますが、私たち認知症高齢者研究所では自然科学を意味しています。
また、認知症ケアの本質を探る場合においては自然科学的知識と位置付け、根拠に基づくKyomation Careの体系の根幹にもなっています。
今回は第六感が実際の認知症ケアに役立っているお話です。
感覚機能である五感、触れる・味わう・見る・嗅ぐ・聞く、人間と周囲の世界を結び付けているのは、これらの5つの感覚だけでしょうか?
科学者達は、人間の脳をめぐる様々な謎の解明に取り組んでいます。
そのひとつに「第六感」があります。
そこで、第六感の存在を科学してみましょう。
人間の脳は、驚異的な機能を持つ機関です。
天の川銀河全体の星に相当する数の神経細胞があります。
人は、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚などの五感を使い、この世界のあらゆる現象の情報を脳の膨大な神経ネットワークにさざ波のように伝えているのです。
この情報伝達には、まだ、私達には分からない、未知の方法があるかもしれません。
なぜならば、脳神経については、研究され始めたばかりですし、脳の機能についても、まだ完全に解明されていないのですから…
現代では、第六感は単なる迷信として位置づけられていますが、近い将来、科学的に証明できるかもしれませんね。
私にとっての第六感と言うと、子供のころ、いたずらをして母がしまっていた甘納豆を隠れて食べていた時、たとえ背中を向いていても、怒った母が、私をにらみ付けていることを何故か感でわかったことです。
そんなことは誰でも経験していることです。これは第六感なのでしょうか?
認知神経科学の研究の中に、ブラインドサイト(Blindsight:盲視)という研究があります。
ブラインドサイトとは、目の見えない人でも顔の表情を読み取れる不思議な現象のことです。
視覚とは目そのものの機能だと考えられがちですが、実際は、目は脳とつながっているから物が見られるのです。
以前、認知症の障害で、ものが全く見えなくなってしまった人が、施設の中をスムーズに歩いている様子に驚いたり、明暗しか分からない人がテレビの前に座って、じっとテレビを鑑賞している姿を見かけては、不思議な気持ちになったものです。
眼球や視神経など目そのものは健全なのですが、認知症と言う病によって脳の第1視覚野に障害が起こり、モノの形や明暗が分からなくなって視覚を失ってしまったのです。
健康な脳の場合、脳の視覚野と言われる部分が、目から送られた情報の電気信号を受け取ります。
ところが、脳の萎縮や卒中の原因によって、視覚野の一部が損傷すると脳は信号を受け取れなくなります。
脳萎縮によって、視覚野の左右のどちらかが損傷し視野の半分が失われることがあります。
こうした場合、脳は視覚野以外の経路で目からの電気信号を受け取って見ているようです。
ある介護士が、悲しそうな顔をしていると、同じような顔つきになって「どうしたのか」と尋ねるのを見た時には正直驚きました。
そこで、私はその人の前で笑って見せると、本人が気づいているかは分かりませんが、やはり同じように笑ってくれます。
わたしの顔が見えているのですかと・・質問すると、「見えていないけど、なんとなくわかる」と答えてくれました。まさに第六感ではないでしょうか・・・
このような現象は、科学で説明がつくのでしょうか、1986年に英国のオックスフォード大学(Oxford University)の心理学者Lバイスクランツ (l.weiskrantz)博士がブライトサイトと言う現象を見出し、実際に盲人にも視覚があると言う臨床的研究を行なって実証したのです。
ブライトサイトは脳の奥深くにある潜在的な感覚システムで、人や動物の強い感情の顔が目に写った時だけ信号を受け取る機関だと言います。
では、それは脳のどの部分なのでしょうか、
脳の内部にある複数(6層)の層に入り込んで、一番上の層から下へ下へと潜って
いき、それぞれがどのようなものかを調べているとバイスクランツ博士は考察しています。
目が受けた情報は通常、視神経を通って直接視覚野に送り込まれます。
しかし、感情が現れた表情が目に写った場合、信号は視覚野を経由せず、偏桃体や脳弓など、脳内のほかの部分を経由して伝わるのです。
人間の視覚機能には少なくても9つの信号伝達と経路(脳内ネットワーク)があると言われています。代表的な経路が、よく知られている視神経の経路、そのほかには体内時計を動かしている非視覚性経路や瞳孔の対光反応を操作する視覚性経路などが、現在分かっているだけで、その他は通常使われていないのでわからないのです。
ところが、危険を感じたり、恐怖を感じたり、信号が別の経路を通る必要が生じた場合だけ機能するのです。
人の感情という情報の信号を脳に感じさせる潜在的経路が存在することは、研究で明らかになりました。
誰もが持っている経路ですが、視覚が優先的に機能するため通常は使われていないことも分かりました。これが、人間に「第六感」があるという最初の科学的証明となった訳です。
人間の脳は未知の領域ですから、「第六感」についての様々な考え方を検討すべきです。
つまり、脳には人が意識していないものを感じる力があるということです。
さらに「第六感」の謎を解き明かしていきましょう!
そのためには、まず人間の意識と無意志の境界領域について理解する必要があります。
フロイトやユングの研究以来、「意識」は人類最大の謎の一つで、あまりにも難解です。それは、科学は客観的で意識は主観的なものとして扱われているからです。
意識とは五感を通して得られた情報に基づいて構築された複数の層であるといわれています。
それは、重ねられた鏡を見るようなものです。
つまり、意識はいくつもの異なるレベル(層)で、合成されているからです。
簡単に言うと、第1のレベルは、自分の周囲、周りにいる人やその周囲を見ることで、自分の居る位置などが得られる見当識を働かせるレベルです。
その次が、見当識から得られた情報を基に、あの人は誰だ、ここは何処だなど、自分で考え判断するレベルの意識です。
さらに次は、判断している自分がいることを意識して、問題解決をしている自分がいることを意識するレベルです。
そして、このレベルを繰り返しながら意識は次から次へと、無限に写る「合わせ鏡の中の自分」を見るように意識していきます。
しかし、意識のレベルは逆向で手前の意識に立ち戻ることも可能で、自分を見直しているという意識があり、これが前意識として解釈されることが多いようです。
つまり、意識の中にある意識をさらに意識している・・・という繰り返しが、何重にも重ねられたハンバーガーのように無限に繰り返されて、やがて、無意識となり、この意識を捉えていくわけです。
人間の意識は、いくつものレベル(層)になっているため五感で得た情報すべてが、はっきり認識されているわけではないのです。
情報の一部が意識の奥深くに潜んでいるピクルスやマスタードのような場合もあります。
認知症の人でも、意識から一度消えたものを再び思い出したり、ある種の神経活動だけが意識されたりする場合があります。
これは、なぜでしょうか?
残念ながら、人がなにかを意識したとき、脳の内部で何が起きているのかはまだ分かっていませんが、これも第六感として捉えると、意識と最も関係の深い思考にたどり着くことになるのです。
思考を「第六感」だという科学者は多いのです。
私たちは、常に目に見えないある種のエネルギーに包まれているのです。
それは、地球全体を包んでいる磁場、地磁気です。
多くの生物は、これがなければ生きていけないでしょう。
鳥、ウミガメ、クジラ、魚は地磁気によって方角を知り移動していると言われています。
人間も地磁気を利用しており、それが「第六感」の源になっているのかもしれません。
動物に影響を与えている地磁気が人間にも影響を与えているかを調べる実験では、地磁気と人間の脳に関係があるという仮説は大きな議論を呼んでいるのです。離れた場所にある情報を探知する能力というのが、「第六感」の定義の一つですが、残念ながら、そのメカニズムはまだ解明されていません。
しかし、70億人の人間すべてが地磁気にさらされているのは事実です。
この磁気が情報を伝えあう手段になりうると考えられているのです。
地磁気は、大海原の波のようなもので、脳内で発生した電気的活動が磁気の波の上に載って、別の人間に伝わる可能性があるというのです。
それを証明する実験では、互いの姿が見えず声も聞こえない6mほど離れた部屋に入り、
電気コイルを通じて制御された磁気が流れるヘッドバンドを頭部に設置します。このヘッドバンドによって二人には同じ磁気を流します。
そして、2つの部屋を暗くします。
数分後、片方の部屋だけに光が点滅する状態を作ります。
もう一方は暗室のままです。
そして脳波計で、同じ磁場を共有している二人の脳は、同じ活動をしているか確認したところ、暗室にいた人も点滅した部屋に人と同様に光の点滅を感じていました。勿論、脳波も共鳴していたのです。
つまり、別の場所のある2つの脳が、一つの経験を分かちあう可能性がることをこの実験で証明したわけです。
人間の思考は、脳の神経細胞がやり取りする電気信号の一種ですが、ある条件の下では、思考が空間を超えて伝わることが分かったのです。
世界中の人間の脳は、常に地磁気にさらされています。
脳が地磁気によって結びついているなら、一つの脳の変化が、全体に影響を及ぼす可能性もあるということです。
遠く離れた人同士が、感じたことを分かち合うのを可能にする感覚、これも「第六感」なのかもしれません。
つまり、「当てずっぽ」の介護が極めて正確にヒットする時があります。
これも「第六感」だとよく介護者は言いますが、実は認知症の人の気持や考えが、地磁場によって、見えていたり、聴こえているのかもしれません。
ただ、五感に頼る私達には、見えているや聴こえているという自覚(意識)がないだけなのかもしれませんね!
認知症の人にはが、自分が何をしているのか分からないのにもかかわらず、折り紙が折れたり、パズルを簡単に解いてしまう人がいます。
これも「第六感」なのでしょうか・・・