New research may increase understanding of link between olfactory decline and brain-related diseases
人間の嗅覚の低下は、パーキンソン病やアルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患の初期の兆候である可能性が認められたとモネル化学感覚研究所はBrain Health Registry (BHR)とのコラボレーション研究で明らかにした。
今回の報告では、人間の嗅覚の変化によって、扁桃核や辺縁系を含む局所萎縮が起こり健康状態の変化や認知機能障害を惹き起こすとし、その関連性が明らかになったと報告している。
モネルの嗅覚科学者Pamela Dalton (PhD, MPH)博士はこう語っている。「嗅覚機能の低下は、脳関連の神経変性疾患の初期の兆候の1つであることが実証されているが、この関連性をより深く理解するためには、もっと多くのデータが必要である。BHRの既存の大規模なデータベースに嗅覚の評価を加えることにより、嗅覚機能と神経変性疾患の予測的関係に関する最高の情報が得られる可能性がある」と語った。
Brain Health Registry (BHR) は、18歳以上の成人ボランティアから取得した健康、病歴、ライフスタイルに関する情報が格納されているオンラインリポジトリ(ビックデータ保管庫)である。
BHR登録者は、現時点の認知機能を測定するために、神経心理学に基づくオンラインテストを終えており、さらなる評価のために、生涯にわたり3-6ヶ月ごとにサイトに戻ってテストを受けるように促されている。それにより研究者は、人間の脳と認知能力の経時的変化に関する情報を得ることができる。現時点の登録者数は40,000人を超えている。
嗅覚系の機能変化は、発症前の診断が難しい神経変性疾患の発症や初期段階の特定に役立つ貴重なツールとなりうる。
なぜなら 嗅覚受容神経(ORN)と呼ばれる臭気を検出する細胞には、1) 脳の神経細胞と緊密に連携しており、2) 脳神経細胞とは異なり、人間の生涯を通じて再生し続けるという2つの優れた特性があるからだ。嗅覚機能の低下は、ORNの機能/再生能力の変化や、脳などのアクセスが困難な部位における神経細胞の劣化を示唆している可能性がある。
しかし人間の嗅覚の変化の原因となりうる要素は多数あるという、嗅覚を失ったすべての個人が脳関連疾患を発症するわけではないということを心にとどめておく必要がある。
コラボレーションから得られた初見は、嗅覚喪失のパラメータ(最も可能性が高いのは神経変性疾患を示唆する症状)の特定に役立つ可能性が高い。
Brain Health Registryの創設者であり、治験責任医師であり、サンフランシスコのカリフォルニア大学の放射線医学、生体医工学、医学、精神医学・神経学の教授でもあるMichael W. Weiner (MD)博士はこう語っている。
「モネルとのコラボレーションによりBrain Health Registryが拡充され、パーキンソン病やアルツハイマー病をはじめとする多くの脳疾患と臭気検出能力の低下との関連性に関する情報が得られるようになるだろう。」
BHRには多くの健康な成人から得た縦断的データも格納されているので、コラボレーションにより、嗅覚器系における脳障害への影響だけでなく、その基本機能に関する知識も増えていくことが予想されるだろうと語った。
一方モネルの生理学者Cristina Jaén博士はこう語っている。
「長年にわたり嗅覚機能を追跡してきた研究は多くはない。よって我々が収集するデータにより、嗅覚の経時的変化に関する理解が促進されるだろう。」
モネルの研究者達は、1000人のBHR参加者が、郵送されてきたスクラッチ&スニッフカード(scratch and sniff test card)とオンラインの回答書式を用いて自身で嗅覚検査を行えるようにするために、まずはパイロットスタディを実施し、それによってコラボレーションを開始する予定だ。
65歳を超える米国人の500万人以上がアルツハイマー病を患っており、100万人がパーキンソン病を抱えている。米国の人口の高齢化に伴い、これらの神経変性疾患に苦しむ人々の数が増えていくことが予想される。
いずれの疾患にも確実な治療法はないが、早期の診断は、症状を軽減するための治療計画の最適化に貢献し、患者とその家族に追加のサポートを求める時間を与えることができるだろうと語った。
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