脳が心を作り心が脳を育む、脳と心は時として信じられない力を見せ認知症ケアの中で奇跡を起こすことがあります。
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脳は誕生とともに記憶を積み重ね、あなた自身を形成していきます。
子供から、若者、大人へと成長し、年を重ねて…なお脳は変わり続けるのです。
脳はこの時期に応じた能力を開花させることで、私たちは学んだり、挑戦したりと人生の課題を乗り越えていきます。
人生のそれぞれの段階で、脳はどのように変化していくのでしょう!そこにはどんな理由があるのでしょうか!脳の一生の終着駅が認知症なのでしょうか…!今回は脳の一生について報告します。
脳が人生とともにどう変化して行くのかについて確かめてみましょう。
子供時代からシルバーエイジまで続く、脳の変化は生まれ落ちた時すでに始まっています。まずは自分の周りの世界についてあらゆることを吸収する赤ちゃんの脳を検証します。
まだ、周りのことがぼんやりとしか感じない時期ですが、既に驚くべき能力を備えています。
顔を認識する能力は、かなり幼いころに身に付きます。
この顔を認識する能力は、側頭連合野に有る神経細胞で、まさしく「顔細胞」といいます。実は、この「顔細胞」は生まれながらにそなわっているのです。実際に活動を始めるのが生後2週間ぐらいで、しかも、ほんのわずかな情報があれば顔だと分かるのです。
視覚が未発達な赤ちゃんの顔細胞も子供と大人と同じ方法で顔を見分けているそうです。目、鼻、口、耳、眉毛…実は、顔細胞は顔のどの部分も平等に記憶するわけではなく、目に強く反応し記憶します。
ですから、幼い赤ちゃんでも目の色は額より濃く、唇は頬より赤いと知っているのです。
更に目、鼻、口の位置から目の前の物体が人の顔だと認識できるのです。
つまり、鼻や口に反応したのは、耳や頬に比べて鼻や口の方が顔の特徴を決定づけやすいからなのです。
そして、生後わずか6週間で、脳は顔を認識できるようになります。
それだけはありません、周りにいるのが人間だという存在だと知ったとき、赤ちゃんの脳はどうコミュニケーションをとるのでしょうか?
人と交流するには、目に映るものだけでなく耳に届く音も重要です。
赤ちゃんの脳の力を解明するため、音を聞くと、まず脳の聴覚野が活性化します。
さらにウェルニッケ野が活性化するなど音の種類によって反応する位置が変わります。
前頭前皮質内側部や側坐核などが、言葉なのか、音楽なのか、雑音なのかを下前頭回や上前頭回などの反応する位置で見分けているのです。
例えば、日本語だけを話す大人の脳は、日本語の音を聞いた時に聴覚野やウェルニッケ野など言語を司る領域が反応します。しかし、自分が話せない英語の音などには反応しないのです。
でも、言葉を話せない赤ちゃんの脳は、日本語でも英語でも中国語にでも反応するのです。
この段階では、赤ちゃんは言葉を話すことも理解することもまだできません。
しかし、生まれた時点で、脳は世界中のどんな言語の発音でも、すべて聞き取れる能力を備えているのです。
驚きですね!
人は言葉を学ぶにつれ他人と交流するようになります。すると脳は別の角度から世界を見るようになります。よく、他人の視点で物事を考えるといいますが、私たち人間は、わりと幼い時期に、この技術を身に着けます。
他人を認識し、その人たちの思考に気づき始めるのです。脳がどのようにして他人の視点に立って物事を見ているのか、実は簡単な検査でわかるのです。
ひらがなを思い浮かべてください、どなたも小学生のころ書き方を習ったはずです。
それでは人差し指で、自分の額に「た」というひらがなを書いてみましょう!初めに書くのは「ナ」ですね!次に「こ」はどちら側に書いたでしょうか!
左側ですか、それとも右側ですか?
それによってあなたが人生のどの段階にいるのかが分かるのです。
どちら側に「こ」を書いたかは人によって様々です。
ただし、大人と子供によって違いがあるのです。
面白いことに子供は自分に向けて「た」を書き、大人は他人から見える向きに「た」を書く傾向があるのです。
これは、幼いうちは他人がどう見るかをあまり意識しないと考えられているからです。
小さい子にとっては自分が世界の中心で、周りのことには目が向きません、でも成長するにつれて、心の理論が働いて周りのことを意識して、他人が読めるように文字を書くようになるという仮説があるのです。
つまり、心の理論とは、他人の願望や感情を推測できる心の機能を指します。
コミュニケーションだけでなくアイデンティティーの確立にも役立つ能力です。
よちよち歩きの赤ちゃんは急速に成長し、感情が支配していた脳は、理論性を身に着けます。とはいえ、まだまだ発展途上です。フロイトはこの時期の意識を無意識として原始的自我「ido」「es」と呼びました。 ◆ ◆ ◆
次は気まぐれな10歳前後の脳を検証してみましょう!
人の脳は10歳前後になると、どう決断を下すべきかを学び始めます。
その過程を見てみます。
単純な質問に人はどうこたえるでしょうか、単純な質問をした場合、回答そのものよりも、どのように答えるかで「あなた」が人生のどの段階にいるかが分かるのです。
幼い子は大人から教えられた価値観に基づいて答えます。大人もこれまでに身に着けた常識で判断します。
しかし、10歳前後の脳は違います。
10歳前後は青年期の入り口です。
世界は自分のものであり、不可能はないと感じていて自分なりの考え方が膨らむ時期なのだとヴァッサー大学Vassar collegeのアビゲイル・ベアードAbigail Baird博士はいいます。
つまり、自己中心的になるということです。
さらに言えば、表面的には自分勝手な行動をとっているように見えるので、反抗期として捉える大人も多いのですが、実際にはとても用心深く自分自身を確立しようとしている自我の形成時期なのです。
これは、前頭葉による自己コントロール、判断、感情の調節、考えの構築、計画を実行する器官が未成年期から思春期にかけて大きく変化するとともに、環境適応能力が付いてくるからなのです。
幼児は環境の種類、強さに対しては全面的に親に依存しているのですが、10歳前後では、自分の脳の発展を自分で決定する力を持つのです。
このように前頭葉は10歳~12歳にかけて目に見るように発達し20代に入ると縮んで来るのです。
もう少し詳しく脳の成長段階と発達についてお話しすると、脳の神経細胞は3つの段階を経て成長しているのです。
発達のスタートは、脳神経細胞の増殖から始まります。
脳の神経細胞は、ちょっと特殊な構造をしています。
核の部分になる細胞体から樹状突起と呼ばれる細かい枝分かれをした短い突起がいくつも出ています。
更にその一本は軸索と呼ばれる尻尾のようなものが長く伸びています。
この様な形をしているのは、様々な情報を細胞間で電気信号としてやり取りするためです。
樹状突起は脳の神経細胞からの情報を受け取る「入力アンテナ」のようなもので、軸索は他の細胞に情報を伝達するための「出力装置」のようなものです。
この脳神経細胞は10歳前後まで爆発的に増加を続けますが、思春期ぐらいになると最大限に達して、せっかく増やしたにもかかわらず、緩やかに神経細胞を刈り取り始めて減少させてしまいます。これが、脳神経細胞の「間引き現象」です。
この様に、この時期、神経細胞は邪魔で不要な細胞をどんどん間引かれて死んでいきます。この「間引き現象」のメカニズムに認知症の発症の秘密があるとも言われています。
残す細胞と、そうでない細胞がより分けられていく時が、10歳前後なのです。
ですから、細胞がより分けられるということは、子供の脳の中で「情報伝達回路」が作られていることになります。
これを発達と言います。
脳の細胞と細胞を繋ぎ合わせて、複雑で巨大な情報ネットワーク網(脳内ネットワーク)を作り出している時期が、気まぐれな10歳前後の脳なのです。
まさに、可能性の模索の時期でもあるのです。
可能性を探るのは世の中について学ぶ上で非常に大切なことです。
私たちは10歳前後を利己的な世代と思いがちですが、実は自分勝手な決断を下しているわけではなく、あらゆる可能性を検討しようとする脳の発達過程にあるようです。
そして、子供の脳はやがて、急激なホルモンの増加や感情の波に翻弄されるようになります。
◆ ◆ ◆
次は、まだ大人になり切れない思春期の脳です。
脳は顔のバランスを見て年齢を判断します。これが見た目の年齢「生理年齢」なのです。
鼻や顎など、顔の下よりのパーツが小さく見えると、幼い印象を与えます。
一方、下から見上げるように顎や首が太く大きく見えると老けて見えるのです。
思春期と言えば、無鉄砲で自ら危険に飛び込んでいく姿を想像しがちです。
でも私たちは、彼らの本当の能力を知っているでしょうか!
テンプル大学Temple Universityのジェイソン・チャインJason Chein博士は、思春期になる頃には、前頭葉がかなり発達しているので、きちんと判断を下すことが出来ると言います。
脳は人生の段階に合わせて、その時に必要な機能を発達させます。
18歳までに感覚・運動機能はかなり発達してしまうので、見た目は大人そっくりになってきますが、脳は完全に成熟しているのでしょうか!
医学的に見れば、二次性徴の発現から性的身体発達の完成まで、すなわち小児期から性成熟期への移行期ということです。
この時期は、女性では乳房発育や恥毛発生など身体的な成長が見られ、性腺から分泌される性ホルモン作用により、男性または女性として性的成熟が完成され社会適応が進行して自己同一性identityが確立する時期なのです。
この自己同一性を確立させる重要な役割を担うのがA10「報酬系」と呼ばれる神経系です。A10は、脳幹にある神経核から、各種の情報伝達物質を大脳へと伝える神経が出ています。報酬系を司る神経は“A8~A16と名付けられた神経で、その中で特に快感を感じる物質であるドーパミンの分泌に関わる報酬系をA10と呼びます。
中脳のVAT(腹側被蓋野)と呼ばれる部位から出て、前頭前野(理性中枢)・扁桃核(感情中枢)・帯状回・視床下部・側坐核(感覚中枢)・海馬などとつながってドーパミンを伝達しています。
前頭前野では興奮性のグルタミンを送り、抑制性の伝達物質GABAを送る側坐核によって制御されています。これらは、興奮と抑制の脳内ネットワークなのです。
しかし、思春期の脳のA10の働きは直ぐに変わります。
思春期は、一人でいるときは物事に集中することが出来るのですが、仲間や友人がいると偏桃核が活性化しすぎてしまい、目的がずれて大胆な行動をとるようになるのです。
注目を浴びることによって、快楽物質が放出され危険を冒す価値があると判断してしまうのです。
思春期は、テストステロン(男性ホルモン)など性ホルモンの分泌が盛んになることもあるわけですから、快楽物質であるドーパミンの量も更に増えてきます。
仲間や友人がみているせいで、ドーパミンの分泌が増え危険な状況に対する判断力がゆらぐのだとジェイソン博士は言います。
しかし、その脳の働きにも重要な意味が隠されています。
思春期の脳は一生のうち最も多くの知識を吸収することが出来、新しい経験を獲ることに貪欲になります。
頭の中では、もっと早く…出来る限り多く…物事に挑戦しろ‥・という声が鳴り響き、そうやって得た知識が将来の糧になっていくのです。
失敗を重ねながら、脳は体験、学習、判断と発達し続けていくことになります
◆ ◆ ◆
独立心が育ち、困難に立ち向かうようになり、20代の脳へと成長を遂げるのです。
情報処理速度や短期記憶などの能力は、この頃にピークを迎えます。
お陰で私たちはいくつもの作業を同時にこなせるようになります。
この様に複数の作業を同時にこなすことをマルチタスクと言います。
しかも、大人になると人生は厳しさを増します。
生活のためにはマルチタスクをこなし、働かなくてはなりません。
では、一生のうち脳が最高の脳力を発揮できる年代はいつなのでしょうか!
ミシガン大学University of Michiganのシンディ・ラスティングCindy Lustig博士は、幾つもの作業を冷静にこなさなくてはならない場合、脳の成長がどのように影響するかについて、人間は、年齢と共にスピードよりも正確さを重視するようになると言っています。
20代は、脳の成長がピークな年代なので、脳が複数の課題を同時にこなせるから、並行作業が出来るのです。
子供の脳は沢山の記憶を整理する能力が未熟なので、しばらく作業をしながら要領をつかむのでワーキングメモリーを働かせるのに苦労します。
ワーキングメモリーとは、作業記憶とも呼ばれていて物事を理解したり学習したり推理・推察しているときに他の情報を一時的に保持し自分の都合のよいように運用したり処理するシステムです。
要するに、物事を考える時に使う記憶ということで、黒板に書かれた文字をノートに移す時に、文字を一時的に覚えておく記憶がワーキングメモリーです。
では、複数のタスクに追われているとき人間の脳では何が起こっているのでしょう!
マルチタスク能力はワーキングメモリーに大きく依存します。
前頭葉になる8野と46野が、頭頂葉や前帯状皮質などの部位で複数の情報を記憶するのがワーキングメモリーです。
また、年を取ると一度に多くのことを記憶したり、長い時間覚えておくことも難しくなるので、人に言われたことを必ず繰り返し、頭の中や声を出して復唱する人が多いですよね!
この復唱もワーキングメモリーの一つの使い方ですが、年齢を重ねると、ワーキングメモリーから必要な情報を取り出すのが難しくなってしまうので、「なんだっけ」などと分からなくなってしまうのですね。
一方、子供も一度に沢山、記憶することは出来ません、ですから、マルチタスクをこなすには20~30代の脳が最も適していると言えます。
この頃のワーキングメモリーは目の前にある情報と別の情報を同時に処理できるので、まさに作業記憶と呼ばれる所以です。
ところが、マルチタスクで、ワーキングメモリーの付加が大きくなりすぎると、普段は難なくこなせる作業でさえ、一度にすべてを処理できなくなります。
しかし、情報処理速度に関しては20代が最強です。つまり、このように優れたマルチタスク能力は、若い成人の脳が持つ柔軟性の証だと言えるでしょう!
つまり、青年の脳は情報処理やタスクの切り替えが得意なのです。
ただし、マルチタスキングをしていると、ドーパミンが大量に分泌され、これが癖になってしまい脳が同じことを繰り返すように指示してしまうことが有るのです。
一種の快楽中毒となって、思考の整理や関連性のない情報を除去することが難しなり、仕事の効率や質を低下させてしまうのです。しかし、些細なタスクでも快感を惹き起こすので、満足感を得られるようになり、実際は何もしていないのに達成したような気分にさせて簡単に満足感を与えてしまうのです。
その結果、現実とのギャップにマルチタスクはストレスホルモンであるコルチゾール生成を増加させてしまい認知力の低下につながってしまうのです。
しかも、この認知力の低下は永久に続く可能性があることが示唆されています。
ここに認知症の最初のステージが見え隠れしてきます。
そして、脳は年齢を重ねると、更に変化します。
感情を理解する能力や経済的な判断力、柔軟な思考を獲ます。
次は成熟期の大人の脳です。
◆ ◆ ◆
細部への観察力は増すのでしょうか!大人になると感情面が成熟し、赤ちゃんや子供、そして若者よりも社会における責任が増します。
この頃になれば家族もできるでしょう!
追跡能力は、脳の重要な機能で日常生活に欠かせません。運転や仕事、買い物、それに子供を探すため、複数のものを同時に追跡するのは、子供や若者より大人の方が得意です。
しかし、その能力は年齢と共に衰えます。
年齢をとると「変化の見落とし」という現象が現れます。
脳は正確な視覚情報より、別の価値ある情報を優先することがあります。
大人の脳は目の前の課題に集中し、無関係な情報を捨てる傾向があります。
そうやって、困難やストレスの多い社会に適応しているのです。
注意を向けているにもかかわらず、その対象物に気付かない現象なのです。
変化の見落としを確認するのにフリッカーパラダイムと呼ばれるテストが有ります。
2枚の同じ画像のうち1枚を部分的に加工して、2枚の画像を順番に提示するものです。この時、2枚の画像間に短い時間のブランクを挟むと、2枚の画像の違いに気付くことが困難になる現象です。
https://en.wikipedia.org/wiki/Change_blindness
高齢になればなるほど、「変化の見落とし」は多くなってくるのです。
また、この頃から、「ど忘れ」と言う現象も現れてきます。
ど忘れとは、記憶の出し入れ能力の低下を意味することで、一旦覚えたことを思い出すのが困難な状態「想起障害」を言います。
そして、人生の円熟期に差し掛かると、生活のペースは次第に緩やかになり記憶を司る海馬が萎縮(ちじみ)始めます。この頃から「ど忘れ」が覚えられない状態「記憶障害」へと進行してくるのです。
ちなみにMCI(軽度認知症状)では、この想起障害の方が記憶障害よりも多く観察されることが多いそうですが、MCIから認知症に進行する人には記憶障害が想起障害よりも多くみられると言う報告もあります。
その他には、大脳と小脳の境にある大脳脚「黒質」と呼ばれる部分も老化していきます。
この黒質からの分泌されるドーパミンが減少するだけでも姿勢が前かがみになってきます。さらに進むとパーキンソニズムが現れてくるのです。
でも悪いことばかりではありません。
経験値ではどの年代の脳も高齢者の脳にはかなわないのです。
ここで、経験を重ねて成熟した脳ほど得意なゲームを紹介しましょう!
クロスワードクイズです。
経験とともに蓄積される知識や知能を結晶性知能と呼びます。
年齢を重ねるにつれて語彙が豊かになるのです!
また、年齢を重ねると物事を認識するスピードは落ちますが、その代わりに語彙が増え、感情が安定し自己抑制が出来て、論理的思考力が増します。
赤ちゃんが大人になり、年を取っていく過程で私たちの脳は段階に応じた変化を続けるのです。そうして脳に蓄積された記憶と経験こそが人格を作るのです。
言葉を覚えた赤ちゃんは10代で判断力を身に着け、青年期にマルチタスク能力を獲て、わが子を見守る存在へと変化していきます。
そして人生の最終章を迎えるのです。
でも、科学が進歩すれば、脳の一生は大きく変わります。
肉体が消えても脳内の記憶や思考に関わる信号をデータに変換して保存するのです。そして、生き続けることが出来る日が来るかもしれませんね!