認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第18回「介護職、医療職の専門職連携による認知症ケア」です。
介護や医療の分野では、これまでに社会福祉援助とか看護援助と言う言葉が頻回に使われてきました。そして介護職や医療職を対人援助職と総称し、その対象となる高齢者や障害者の人々を利用者と表現していた訳です。
対人援助職の利用者への関わり方は、介護職は主として認知症の人が人間らしく暮らせるよう日常生活動作を中心に心情的、経済的、常識的に介助し保護的にサポートを行い、よりよく豊かな生活を営めるようにケアをしています。一方の医療職は障害されたある状態像に対し治療的に人間的な生活を回復、維持、向上するリハビリテーションを中心に援助に当たっているのです。
そして利用者のニーズに応じて数多くの異なる専門職が関わっているわけですが、そうしたスタンスでは介護職は介護の視点だけで捉えたケアを医療職は医療の視点だけで捉えたケアを行っているにすぎない訳です。
認知症ケアを行うには介護職と医療職が連携して寄り添い問題や課題を解消しなくてはなりません。そのためには情報共有によりBPSDが起こる要因を分析し進行防止に向ける取り組みを連携して実践することが必須となるのです。ですから現在は対人援助職ではなく専門職連携業務での支援と言うことになるのです。
BPSDという認知症の人が呈する様々な不可思議な症状は、失われた機能と保たれている機能とのバランスの上に出現しているのですから、進行防止に向けたケアを進めていくためには対人援助職が専門職連携して保たれている残存機能を見つけ出しフル活用し、失われた機能は保っていくような支援の工夫に取り組むことが認知症ケアなのです。
また、認知症のBPSDが起る要因を分析するには専門職の持つ其々の情報を基に介入した時の反応や評価などの情報を連携して収集し分析して計画を見直すなどPDCAサイクルで導き出すのです。
例えば周辺症状が起る要因を行動観察13の項目の視点で観察し分析すると態度の観察では認知症の人の思考回路が十分に機能しているのか言語を正しく理解しているか表出することができているのかなどの思考機能の状況を把握することが出来ます。
これは、個々の状態を切れ目なくシームレスに各専門職が協働・連携してチームの中で果たすべき役割を担いながら、目的・目標を共有していることで可能にしているのです。
介護のケア現場は24時間365日の体制で、停止することなく動いています。ですから必然的にチームを組んで仕事をせざるを得ない状況なのです。従来の連携モデルは医師などがリーダーとなり指示に従って各々の専門職が仕事をするという階層構造の中で与えられた役割を果たすマルチディシプリナリーと呼ばれる連絡モデルの連携でした。連絡はうまく行くのですがシームレスなケアでないと分からないBPSDの様子や要因は見つけることが出来なかったのです。
現在では各専門職が自立支援に必要な水分、栄養、排泄、運動において情報を収集し課題の抽出を専門性を持って行いコミュニケーションやファシリテーションスキルなどで各専門職チームに統合され情報共有して分析しているインターディシプリナリーと呼ばれるネットワークモデルなのです。
また、ネットワークモデルのハブメンバーとして家族が参加したことにより生活歴や家族構成変化、初発症状の発症時期や発症の仕方などを聴取出来るようになったことは認知障害の状態を把握することを可能にし認知症のBPSD発生時期やきっかけを知ることは認知症の方の対応を知る鍵となるのです。
これにより自立支援に必要な適切なサービスを適宜、適時に状況を予測しながら支援出来ることは認知症の進行防止に向けた認知症ケアが可能になると言えるのではないでしょうか。次回は認知症進行防止に向けた取り組みと方針について学びます。