第17回「脳血管性認知症の対応2」

認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第17回目「脳血管性認知症の対応2」です。
タイプ別に分類し、治療やケアの方針決定を
様々な症状が現れる脳血管性認知症は、ケアが最も難しい認知症と呼ばれています。前半では、脳動脈の領域に障害が起きたことによって生じる認知症状や程度が異なる脳血管性認知症のお話でした。後半は、脳血管性障害が起こる部位の違いや時間経過の違い絵で発症する認知症状について学びましょう。
まず、脳卒中を起こした部位の疾患によって分けた脳血管性認知症のタイプについてです。脳卒中は出血タイプと梗塞タイプに分けられ、1か所で起きる単一型の場合と複数個所にわたって起きる多発型があります。
単一型の脳血管性認知症を梗塞性認知症と呼び、また、複数個所にわたって多発性梗塞が起こる脳血管性認知症を多発梗塞性認知症と呼びます。そして、出血性の脳卒中が原因として起こる脳血管性認知症を脳血管型認知症と呼んでいます。しかも、症状の多様性だけではなく、症状が現れてくる時期や時間経過の違いでも脳血管性認知症をタイプ分類しているのです。では、どんな分類があるのでしょうか。
第1分類は、脳卒中後3か月以内に認知症が現れるタイプで、慢性の高血圧の方に認められるビンズワンガー病は発症時期が明確ではなく、脳血管性認知症でありながらアルツハイマー型認知症のように穏やかに進行するのが特徴です。
第2分類は、既に認知症があり、脳卒中の直後から認知症が顕著になるタイプで、脳卒中前認知症や低灌流性認知症があります。そして第3分類は、繰り返し起こる脳卒中後に認知症が強く現れる脳血管性認知症で、小梗塞が多数起きるタイプの多発性ラクナ梗塞などがこのタイプに属しているのです。
このように脳血管性認知症を部位や疾患でタイプ別に分けることは、実は治療やケアを行う上で大切な方針を決定する視点になるからです。
脳血管性認知症の方は根底にアルツハイマー病が既に存在している方が多いのです。ですから、脳血管性認知症の場合はこれらのタイプを念頭に入れて、それぞれのタイプにより発症してくる多種多様な症状や経過を記録することで生活の中から発症してくる精神症状を行動観察により予測していきます。梗塞型か出血型か、病変の数や大きさ、部位などの違いを理解し、また、具体的には経過や介護の方針策定のため、脳血管性認知症の方は約30日感の状態観察を行い、タイプ分類をした上で生活支援の計画を作成すると共に、個別ケア中心の支援を行うなど認知症の中では最もケアが難しいとされているのです。
まず、治療やケアでは再び脳血管障害を起こさない再発防止の対応が重視されます。再発によって、認知機能も含めた様々な機能が悪化したり、さらに新たな障害が発症する恐れがあるからです。治療やケアでは脳血管障害を引き起こす要因である危険因子を管理するのがポイントです。危険因子には、動脈硬化、高血圧、糖尿病、心疾患、高脂血症、喫煙などがあると言われています。いずれも、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす動脈瘤や動脈硬化など血管異常の原因になる病気です。これらの危険因子を出来る限り減らすことがケアでは最優先になります。
薬をきちんと飲んでいるか、食事をきちんと食べているか、体を動かすことのサポートはもちろん、そのために血圧値などにも目を配りながらケアにあたることが求められます。
脳血管性認知症の方のケアでは、常に多職種連携が必要かつ重要で、治療とケアが一体的で計画性があり、改善・緩和の目標を持ってアプローチすることが基本となるのです。
次回は、予見可能性を高める思考の展開方法ヒューマンサービスと専門職連携による認知症のケア対応を学びます。

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