2/27 神奈川新聞に掲載されましたのでご報告致します。
在宅高齢者ケアを支援
~県試行 医療と介護 連携強化~
自宅療養する高齢者へのケアの質を高めようと、医療職と介護職がインターネットを活用して情報を共有し、連携を図る試みが県内で始まった。緊急時以外の健康状態の変化といった情報はこれまで、定例の会議などで報告されていたが、その場で共有する事で、素早く効果的な対応が可能という。「相互の垣根が低くなった」とコミュニケーションの深まりにも役立っている。(佐藤 奇平)
4月施行の改正介護保険法は、医療や介護、福祉、住宅を継続的に提供する「地域包括ケアシステム」の実現を推進するとしており、県は「医療と介護の連携強化」を目的に1月から、県内のNPOなどが開発した二つのシステムによるモデル事業を実施している。
社団法人「認知症高齢者研究所」(横浜市都筑区)の「KCIS」(ケーシーズ)は、ネットを通じソフトやデータを利用する「クラウド」を活用しているのが特徴。ケア記録を13項目に整理し、入力を簡素化させた。
ケアマネジャー、医師、ホームヘルパー、訪問看護師らはパソコンや携帯端末で高齢者の日々の血圧、食事量、生活の様子などを記入して情報を共有。認知症へのケアも800万件の症例データベースから検索できる。1月から順次、5人に導入している。
従来は高齢者宅のノートに記入するほか、会議などでの事後報告だったため「対応が後手に回ることもあった」と同研究所。こうした“時差”がなくなるのが最大のメリットだ。
例えば、医師が日々の血圧変化をパソコン上でチェックし、貧血による転倒防止や脳梗塞などの前兆の発見につなげられるだけでなく、「80以下なら30分後にもう一度測定を」と書き込み、介護職に一斉に指示を出せる。
協力する港北メディカルクリニック(都筑区)の竹井孝文院長は「リスク軽減に役立ち、終末期まで自宅で過ごせる可能性が高まる」と期待を寄せる。同研究所ケアマネジャーの梶原千津子さんは「ヘルパーや医師との連絡がスムーズになり、相互の敷居が低くなった」と実感している。
NPO「MYSSI(ミッシー)プロジェクト」(鎌倉市、代表・内山映子慶応大学大学院特任准教授)は、社会福祉法人の麗寿会(茅ヶ崎市)、竹生会(藤沢市)と今月下旬から、システム「MYSSI」を試行する。
同システムも、血圧や、食事量、睡眠、提供サービス内容などを医師や介護職らがネット上で情報共有するが、指紋認証を採用し、個人情報保護に細心の注意を払う。在宅高齢者数人に導入するほか、麗寿会は鎌倉市内の地域包括支援センターのブランチ(窓口)強化にも活用する。
内山代表は「ケアプラン変更など素早く対処でき、高齢者の生活の質向上に寄与できる」と強調する。
県高齢福祉課は「3月まで有効性を検証した上で、市町村に情報提供したい」としている。
認知症高齢者研究所