Science Park 2024 認知症に罹るか、介護者になるか、あなたが選択する時

世界で人口の高齢化が進むにつれ、いまやアルツハイマー病をはじめとする認知症を有する高齢者の絶対数が著しく増加している。

今後、少なくとも80歳まで生きる方が1000万人を超えると言われていたが…、

総務省統計局は、1950年以降、一貫

して増加していた高齢者が、2023年9月15日現在の推計では3623万人と、前年(3624万人)に比べ1万人の減少となり、1950年以降初めての減少となったと発表しました。2024年9月18日の敬老の日を迎えるにあたり、各種統計から見た日本の高齢者動向をまとめたレポートで高齢者人口を詳しくみると、70歳以上人口は2889万人で、前年に比べ20万人増、75歳以上人口は2005万人で、前年に比べ72万人増、80歳以上人口は1259万人で、前年に比べ27万人増となっており、65歳以上人口以外の区分では増加傾向となっていました。

しかも、この状態は2060年頃まで続きそうなのだ。

私たちは、皆、末永く‟生きるだろう“という希望は持てるようになったようだが、未来を覗いてみると認知症高齢者の数は2012年の時点で全国に約462万人と推計されており、約10年で1.5倍にも増える見通しだったが、2023年には671万人となった。つまり、2025年には認知症患者数が約700万人に増加するということだ。しかも、この数値には高齢者の4人に1人と言われる認知症の前段階であるMCI(Mild Cognitive Impairment)軽度認知障害は含まれていない。MCIも含めれば有病者数は730万人にも及ぶという試算になる。

かりに、私たちが85歳だとしよう両隣にいる2人を見ると、そのうちの1人はおそらく、アルツハイマー病に罹ることになる。

多分あなたは「私は罹らない」と思っているだろうが、それならあなたは介護者になるだろう。

このように何らかのかたちで、この恐ろしい疾患は、私たち皆に影響を与えることになる。そして、アルツハイマー病の恐さは、何もなすすべがないということにもある。

何十年にも及ぶ研究にも関わらず、効果的な治療法はいまだ何も見つかっていないのだ。

しかし、昨年度に認知症において対症療法ではなく、病気の原因物質の除去をねらった治療薬として正式に承認されたレカネマブ(Lecanemab)でさへ、臨床試験の第3相の結果では服用18カ月で症状進行を27%の抑制効果がみられたものの完全に止めることはできず治療効果は実感できないレベルと指摘されている。

さらに、非常に高額となることから費用対効果が低く公的医療保険適用対象とすることには批判の声がでている状態だ。。

1.認知症とはどんな病気

認知症とはどんな病気だろう

認知症の公式な定義は「後天的な脳の病気により正常に発達した知的機能が全般的かつ持続的に低下し日常生活に支障を生じる」と国際的に広く用いられている世界保健機構によるICD10や米国精神学会によるDSM-Ⅲ-RおよびDSM-Ⅳ-TRがある。

日本では、平成24年4月施行の介護保険改正法において、認知症を人への支援の在り方について次のような条文が追加されている。

「第五条の二 国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症(脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態をいう。以下同じ)に係る適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供するため、認知症の予防、診断及び治療並びに認知症である者の心身の特性に応じた介護方法に関する調査研究の推進並びにその成果の活用に努めるとともに、認知症である者の支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」となっている。さらに、2023年6月14日「認知症基本法」が成立し、日本国民は「共生社会」の実現を推進するために認知症に関する正しい知識と理解を深め「共生社会」の実現に努めなければならないともされた。

また、認知症を有する人へより適切なサービスを提供していくために、介護保険法では国と地方公共団体に対して、次のような努力義務を課している。

➀認知症の予防、診断及び治療、認知症を有する方の心身の特性に応じた介護の方法に関する調査研究の推進

②認知症を有する方々への支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずること

2.認知症予防の現状

本題は「認知症にならない為にすべきこと」という…まさに認知症予防が大きなテーマだ。

予防というと、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染の話をよく聞くと思うが、風邪にしろ、インフルエンザにせよ、COVID19にせよ原因が分からなければ予防は出来ない。

インフルエンザやCOVID19はウイルスによる感染症であり、主に以下の二つの経路により流行することがわかっている。

ひとつは飛沫感染でインフルエンザやCOVID19に感染している人がくしゃみや咳をすると、唾液が周囲に飛び散り、そのときに空気中に飛散したウイルスを周囲の人が吸い込むことで、他の人の体内にウイルスが入り感染する。

もうひとつが接触感染でインフルエンザやCOVID19に感染した人が手のひらで口を抑えると、手にウイルスが付着する。

その手を洗わずに多くの人が触れるところ電気のスイッチやドアノブ、つり革などに触れるとウイルスが残り後から同じところを触った人が自分の鼻や口に触れ感染する。

その感染を予防するにはウイルスの入り口となる、鼻と口を覆うマスクを着用したり、気温が下がり乾燥する流行時期にはどこにウイルスが付着しているかわからないので手洗いを徹底すれば大概は予防できる。

また、気をつけていても口やのどにインフルエンザウイルスやCOVID19が侵入する可能性は十分あるので帰宅時には必ずうがいをするなどで予防できる。

では、認知症予防は、どのようにしたらよいのだろう。

残念ながら現時点では完全な予防ができるかどうか、はっきりとした予防効果を示したエビデンスは未だにない。

ただ、国立長寿医療研究センターの研究にMCI(Mild Cognitive Impairment:経度認知障害)を対象にコグニサイズという運動をおこなうことで記憶力の向上や海馬周辺の萎縮の抑制が認められたという報告はある。

コグニサイズとは、「認知」という意味を表す「コグニション」と「運動」という意味を表す「エクササイズ」から作られた言葉で、有酸素運動を中心に歩きながら引き算をしたり踏み台昇降をしながらしりとりをするなど運動に頭を使う作業を加えたものだ。

しかし、認知症予防のために毎日コグニサイズを行うのは結構負担が大きく至難だ。

かりにコグニサイズ依存の人が増えたなら発症するリスクは低減するだろうが、同時に寿命は延伸する。

つまり、長寿化すれば認知症発症を先送りするだけで、結果は認知症患者の数は減るどころか増えてくることになる。

一方、認知症に対する治療は全て対症療法で治療できる認知症は極めて少ないということだ。さらに、認知症に対する薬物療法も現時点ではそれほどめざましいものでもない。

したがって認知症においては、薬物を用いない介護の役割が極めて大きいのである。

最近は、毎日、テレビ、雑誌、特集番組など認知症という言葉がマスコミにあふれ内容も認知症の原因疾患に関する説明や診断法、予防法から介護の具体的な方法まで詳しく教えてくれているので、大体どんなものかわかると思うが、もう少し認知症にならないためにすべきことについて深く調べてみよう。

そのために敵を知り己を知れば、百戦危うからずにある。

もちろん敵は認知症、そして自分自身の状態をしっかり把握すれば予防においてもアドバンテージが得られるということだ。

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