Science Park 認知症に罹るか、介護者になるか、あなたが選択する時

世界で人口の高齢化が進むにつれ、いまやアルツハイマー病をはじめとする認知症を有する高齢者の絶対数が著しく増加している。今後、少なくとも80歳まで生きる方が1000万人を超えると言われています。

2019年6月18日「認知症施策推進大綱」では、認知症はだれもがなりうるものであるとし、認知症になっても住み慣れた地域で自分らしく暮らし続けられる「共生社会」を目指し、認知症対策を強化するため2025年までの施策を盛り込んだ新たな認知症施策推進大綱の中で、認知症の進行とBPSD予防に取り組むことが示されました。

また、2023年6月14日「認知症基本法」が成立し、日本国民は「共生社会」の実現を推進するために認知症に関する正しい知識と理解を深め「共生社会」の実現に努めなければならないとされました。

私たちは、皆、末永く‟生きるだろう“という希望は持てるようになったようだが、未来を覗いてみると認知症高齢者の数は2022年の時点で全国に約671万人と推計されており、約10年で1.6倍にも増える見通しだ。つまり、2025年には認知症患者数が約730万人に増加するということだ。しかも、この数値には高齢者の5人に1人と言われる認知症の前段階であるMCI(Mild Cognitive Impairment)軽度認知障害は含まれていないのです。

厚生労働省「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」日本の65歳以上の高齢者の認知症患者数と有病率の将来推計についてみると…2025年には約730万人、5人に1人が認知症になると見込まれている。75歳以上の高齢者では4人に1人が認知症になり…85歳以上の高齢者の2人に1人が認知症になり、95歳以上の高齢者の95%以上が認知症になる可能性があると試算されています。

かりに、私たちが85歳だとしよう両隣にいる2人を見ると、そのうちの1人はおそらく、アルツハイマー病を罹ることになる。多分あなたは「私は罹らない」と思っているだろうが、だとすれば…あなたは介護者になるということです。

このように何らかのかたちで、この恐ろしい疾患は、私たち皆に影響を与えることになるのです。そして、アルツハイマー病の恐さは、何もなすすべがないということにもあります。

何十年にも及ぶ研究にも関わらず、効果的な治療法はいまだ何も見つかっていないのです。

一方、薬物療法の分野において、アルツハイマー病治療薬として2023年7月7日FDA承認され、日本でも2023年8 月 21 日、厚生労働省承認されたレカネバム(※マウス抗体mAb158のヒト化版)が軽度認知障害(MCI)および軽度アルツハイマー型認知症(AD)および若年性AD対象に18か月進行抑制、症状の悪化を27%抑制したという報告があった。この薬は、家族会や学会関係者の強い要望から承認されたが、根本的治療薬とはまだまだ言えないのも事実です。

認知症の治療の側面をみても、残念ながら現時点における認知症の原因疾患に対する治療は、全て対症療法であり、原因治療が出来る認知症は極めて少ないのです。

つまり、現時点において唯一可能な薬物による対症療法においても、認知症に対する薬物の果たす役割は、それほど目覚ましいものではないのです。

したがって、認知症患者に於いては、薬剤を用いない対症療法といえる「介護」の役割がきわめて、 大きくということになります。

認知症とはどんな病気だろう

認知症の公式な定義は「後天的な脳の病気により正常に発達した知的機能が全般的かつ持続的に低下し日常生活に支障を生じる」と国際的に広く用いられている世界保健機構によるICD10や米国精神学会によるDSM-Ⅲ-RおよびDSM-Ⅳ-TRがある。

日本では、平成24年4月施行の介護保険改正法において、認知症を人への支援の在り方について次のような条文が追加されています。

「第五条の二 国及び地方公共団体は、被保険者に対して認知症(脳血管疾患、アルツハイマー病その他の要因に基づく脳の器質的な変化により日常生活に支障が生じる程度にまで記憶機能及びその他の認知機能が低下した状態をいう。以下同じ。) に係る適切な保健医療サービス及び福祉サービスを提供するため、認知症の予防、診断及び治療並びに認知症である者の心身の特性に応じた介護方法に関する調査研究の推進並びにその成果の活用に努めるとともに、認知症である者の支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずるよう努めなければならない。」

また、認知症を有する人へより適切なサービスを提供していくために、介護保険法では国と地方公共団体に対して、次のような努力義務を課しているのです。

➀認知症の予防、診断及び治療、認知症を有する方の心身の特性に応じた介護の方法に関する調査研究の推進

②認知症を有する方々への支援に係る人材の確保及び資質の向上を図るために必要な措置を講ずること

2.認知症予防の現状

「認知症にならない為にすべきこと」という…まさに認知症予防が大きなテーマだ。

予防というと、風邪やインフルエンザなどのウイルス感染の話をよく聞くと思うが、風邪にしろ、インフルエンザにせよ、原因が分からなければ予防は出来ません。

インフルエンザはウイルスによる感染症であり、主に以下の二つの経路により流行することがわかっています。

ひとつは飛沫感染でインフルエンザに感染している人がくしゃみや咳をすると、唾液が周囲に飛び散り、そのときに空気中に飛散したウイルスを周囲の人が吸い込むことで、他の人の体内にウイルスが入り感染します。

もうひとつが接触感染でインフルエンザに感染した人が手のひらで口を抑えると、手にウイルスが付着して、感染します。

その手を洗わずに多くの人が触れるところ電気のスイッチやドアノブ、つり革などに触れるとウイルスが残り後から同じところを触った人が自分の鼻や口に触れ感染していくのです。

その感染を予防するにはウイルスの入り口となる、鼻と口を覆うマスクを着用したり気温が下がり乾燥する流行時期にはどこにウイルスが付着しているかわからないので手洗いを徹底すれば大概は予防できます。

また、気をつけていても口やのどにインフルエンザウイルスが侵入する可能性は十分あるので帰宅時には必ずうがいをするなどで予防できます。

では、認知症予防は、どのようにしたらよいのだろう。残念ながら現時点では完全な予防ができるかどうか、はっきりとした予防効果を示したエビデンスは未だにないのです。

ただ、国立長寿医療研究センターの研究にMCI(Mild Cognitive Impairment:経度認知障害)を対象にコグニサイズという運動をおこなうことで記憶力の向上や海馬周辺の萎縮の抑制が認められたという報告はあります。

コグニサイズとは、「認知」という意味を表す「コグニション」と「運動」という意味を表す「エクササイズ」から作られた造語で、有酸素運動を中心に歩きながら引き算をしたり踏み台昇降をしながらしりとりをするなど運動に頭を使う作業を加えたものです。

しかし、認知症予防のために毎日コグニサイズを行うのは結構負担が大きく至難です。

かりにコグニサイズ依存の人が増えたなら発症するリスクは低減するだろうが、同時に寿命は延伸する。つまり、長寿化すれば認知症発症を先送りするだけで、結果は認知症患者の数は減るどころか増えてくることになるのではないかという話もあります。

最近は、毎日、テレビ、雑誌、特集番組など認知症という言葉がマスコミにあふれ内容も認知症の原因疾患に関する説明や診断法、予防法から介護の具体的な方法まで詳しく教えてくれているので、大体どんなものかわかると思いますが、もう少し認知症にならないためにすべきことについて深く調べてみましょう!

そのために敵を知り己を知れば、百戦危うからずにある。

もちろん敵は認知症、そして自分自身の状態をしっかり把握すれば予防においてもアドバンテージが得られるということです。

次回は、具体的な認知症予防の最前線についてお話しします。

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