Science Park 4月号

❖介護者の七つの大罪と認知症ケア❖

認知症高齢者の介護は長期間に渡るため、その間、介護者は様々な出来事に出会います。ことに身近な家族の認知症の症状は、受け入れがたいもので、なんとか元の状態に戻らないかと、一生懸命になるがあまり、いつの間にか義務感に変わり気持ちに余裕がなくなって辛く当たってしまいます。

そして、「ひどいことをしてしまった」と罪の意識が芽生え反省することがしばしばあります。

しかも無意識のうちに、あまりにも理想の介護を望むばかりに、自分が介護をしなくてはいけないのに、施設に入れてしまったと罪悪感にかられるのです。

その結果、必要以上に自分を追い詰めてしまい、悲しいことですが介護疲れから自殺や肉親を手にかけてしまうのです。

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では、このような罪悪感や義務感はどこから生まれてくるのでしょう。

人間とは欲望に支配される動物です。

いけないと知っていることをついやってしまう理由とは、その原因は…

脳にあるのかもしれません。

今回は、私たちの脳を惑わす罪深い欲望の数々、脳がその魅力にあらがえない仕組みを解明するための研究です。

認知症ケアで、ついついやってしまう悪い行いには、どんなものがあるでしょう!

間違いが許容できずに叱責してしまう、起ることを次から次に忘れるので、質問攻めにしたり、強制的に指導してしまう、理屈で説得してしまう、心のペース(感じ方、考え方、安心の仕方)に合わせられず否定してしまう…

罪の意識は人それぞれですが、中には重い罪とされるものもあります。

6世紀に、ローマ教皇グレゴリウス(Gregorius)1世が身を亡ぼす恐れのある罪を定めました。

七つの大罪です。

7DEADLY SINS

七つの大罪ってなんでしょう!

ひとつは高慢Pride, 怠惰Sloth,

強欲Greed,暴食Gluttony,色欲Lust,嫉妬Envy,怒りAnger!

では、介護者がその専門性を持つがゆえに陥る、うぬぼれの強い高慢Prideからみてみましょう!これは罪深いことでしょうか?

ここに何かが逆さまになって表示されています。

①は何でしょう?そうパイナップルです。

では②は?逆さまになっているのは分かっていても、それが何かは分かりづらいですよね!これは人の顔です。

脳は顔と物体とを異なる方法で認識します。

物体は全体像を捕らえますが、顔はパーツに着目するのです。

目・鼻・口・髪・顎といったパーツのわずかな違いで人物の顔を識別します。

脳が人の顔を識別する力は、驚くほど精密で特に、人間は見慣れない顔より、見慣れた顔に引かれる性質を持っているのです。

専門家曰く、大昔出くわした相手が同じ部族の仲間か敵かを一瞬で見分ける必要があったからだといいます。

つまり、見慣れた顔には何かが含まれているのです。それは、その中に自分自身のパーツが22%程度含まれていると見慣れた顔として認識すると言う報告があります。

つまり、相手の顔の中に自分の顔を見つけると見慣れた顔として認知するのだということのようです。

自分の顔が好きなのは悪いことでしょうか!介護者がよく陥るのに、「遠くの身内より、近くの他人」という現象です。

これは認知症ケアでは未知顔(知らない人)と既知顔(知っている人)といわれる心的距離の問題なのですが、

たとえば、介護している息子の嫁や娘が、老人を叱責、侮辱、無視、放置などし続けると、心の距離が出来て身内であるのに「鬼嫁」や「鬼娘」と言ったり、健忘が始まると「あなたは誰」と逸早く未知顔になってしまうのです。

ところが、人は相手の瞳の中に自分の顔が映り込むほど接近(0∼15㎝の近接相)できるようになると、見慣れた顔になるとカルガリー大学のピアース・スティール(Piers Steel)博士は言います。

これが22%の見慣れた顔と結びつくかは分かりませんが、同調迎合し合って結びついていき「馴染の関係」になることは確かなようです。

未知顔であった他人のはずなのに、認知症の人は、その顔を兄嫁とか従妹など身内として既知顔され、同級生や近所の友人と勘違いするので、本当の身内は自尊心や自負心を傷つけられたと思い込み高慢さが出て、他人の干渉を排除しようとしてしまうことが少なくないのです。

人が自分の尊厳を意識し自尊心を描くときには、前頭前皮質prefrontal cortexの「反省」を司る領域はほぼ活動しなくなります。

その結果、自分は身内だという自負や自尊心が、既知顔されている介護者に対して、自分の尊厳を意識・主張するがために高慢になり、介護者の干渉を排除しようとする心理・態度を示すのです。

つまり、家族だからという自信や誇りから周りが見えなくなりがちになるのです。

高慢Pride、つまり「うぬぼれ」が強すぎると介護者達など周囲との関係が立たれてしまい、結果、高慢がゆえに、かえってZaritの定義でいわれる介護負担「親族を介護した結果、介護者が情緒的・身体的健康・社会生活および経済状態に関して被る被害」が増してしまうという「遠い身内」の大罪を起してしまうのです。

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次は、世間に関心を持たず利己的になり積極的に行動しない怠惰Slothです。

これは、罪でしょうか?さて、ここでゲームです。三角形はいくつあるでしょう。

◎考える時間は7秒です

小さなものから大きなものまで、全部で16個の三角形は見つかりましたか?

全部見つけられましたか、直ぐにあきらめてしまいませんでしたか?

ただし、直ぐにあきらめてしまう人が怠惰というわけではありません。

気楽にやるほうが良い結果を残すこともあるからです。

“怠け心”が脳に与える影響を解明するには、脳の二つの領域に注目すべきだと

ピアース博士は言います。

意志を司る前頭前皮質と、脳幹の一部で視覚、聴覚、触覚などを大脳へ中継する視床thalamusで、今、楽しいかどうかという感覚に敏感に働くところです。

つまり、何かをしようとする意志の力と今を楽しみたいという欲求が戦って怠惰Slothを惹き起こしているのです。

例えば、10名ずつAとBの2つのチームに分けて、最初は大豆を右の皿から、左の皿へ移動する退屈な繰り返し作業を15分間やり続けてもらいます。

その後、Aチームには、引き続き新聞の中から「あ」という文字全てに丸を付ける作業を15分間してもらいました。

一方、BチームはAチームが作業している間、休憩をしてもらいます。

そして15分後、Aチームに選択肢を与えます。

課題を家に持ち帰ってやって後日持ってきてくれても結構ですし、今、作業を終わらせてもかまいませんと指示します。

すると、大半が中断してしまいました。

問題を先送りする主な要因は、衝動性であるということが分かっています。

今すぐ楽をしたいという欲求に負けてしまうのです。

認知症ケアでも同じで、介護は負担だからやめる、楽だから続けるといった介護者と実際の介護のズレにあるようです。

ナラティブ的に更衣・整容・洗面・歩行・排泄・食事・入浴といった介護領域から生活継続のための掃除・洗濯・買物まで、家族や介護者は休む間もなく介護を続けている衝動性のネグレクトneglect現象が生まれ、老人虐待や食事や衣服の世話を怠ったり、長時間放置したり、介護を放棄してしまう介護者自ら問題化してしまい問題を見逃し問題を先延ばしにしてしまうのです。

では、15分の休憩を取ったBチームはどうでしょう!Aチームと同じ課題をやってもらいました。

すると、Bチームは問題を先送りにする人は殆どいなかったのです。

ほんの少し休憩を取っただけで、視床により前頭前皮質の意志力がリセットされ、作業を続けることが出来たわけです。

実は、前頭前皮質はワーキングメモリーを扱っている領域でもあるし、推論・思考・暗記・計算・集中など流動性知能と言われる問題可決能力で、脳の中でも非常にエネルギーを消費します。

ですから、休憩を取らなければ、集中量が途切れ利己的になり積極的に行動しなくなって介護放棄してしまうのです。

どんなに高い集中力を持っていても、長時間の介護の合間に休憩は必要です。

ですから、怠惰に関しては、短い時間であれば、脳をリセットする有効な手段であるということを忘れないでください。

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次は、うっかりすると体重が増えてしまう罪、暴食gluttonyです。

暴食は罪とは言っても、生きるために欠かせない本能的な欲求です。

でも、簡単に食料が手に入る現代では、食べ過ぎてしまうことが問題となっているのです。過食の衝動について調べてみました。

二つの異なる環境を用意して、食欲の度合いを調べました。

最初の環境はブラインドをおろし少し暗めにして、クラッシックの生演奏が流れる環境で料理を好きなだけ堪能してもらいました。

優雅な雰囲気の中、食事を1時間存分に楽しんでもらいました。そして、もう一つの環境は明るい食堂にアップテンポな音楽、この二つの環境は食欲にどのような影響があるでしょう。

実は、クラッシクを聞きながら食べた人よりもアップテンポの曲を聴きながら食事をした人のほうが33%も多く食べたのです。しかし、アップテンポで食べた人は、にぎやかな環境にペースが乱れたようにも見受けられました。

食欲の発生と密接な関わりがあるホルモンにはグレニンとレプチンがあります。

グレニンは空腹になると胃から分泌されるホルモンで、脳の視床下部にある食欲中枢が刺激されて、食欲が増すことになります。

一方、食事をすると、脂肪細胞でレプチンというホルモンが分泌され、脳に満腹だという信号が送られるのです。

満腹感と空腹感の関係を調べると、まず人は空腹になると迷走神経節のグレニン受容体を胃に輸送して、胃で発生したグレリンを受容して食事が促されます。

やがて、食物が胃に入ってくると胃壁が拡張し逆に迷走神経を摂食と成長ホルモンの分泌情報が流れて満腹感を発生させていきます。これに合わせるように小腸では血糖値の上昇を脳に伝えて満腹感を発生させるのです。

一方、空腹感では、食物刺激が聴覚「料理をする音」嗅覚「食物の臭い」視覚「食物の外見」味覚「食物の味」触覚「食物の舌触り」など感覚器によってグレリンの分泌を促進します。さらに食物の記憶が加わり空腹感が発生するわけですが、アップテンポの音楽に乗って、食べ物をどんどん胃に押し込むと、脳がレプチンの信号を検知できなくて、その結果、満腹感が遅れてやってくるのです。

脳の仕組みを理解すれば、食べ過ぎを防ぎながら食事を楽しむことが出来るといいます。

実は、この二つのホルモンには、睡眠とも深い関係があり、睡眠時間が短い人ほど食欲を刺激するグレリンが多く分泌され、食欲を抑制するレプチンが減少するというのです。

ですから、介護者として認知症の人に食事介護の拒否や拒絶、介護負担を増やさないためにはクラッシクの音楽を流しながら、少し照明を落とし優雅にゆっくりと時間をかけて、見慣れた食器で食べて頂くことをお勧めします。

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次の罪は、嫉妬envyです。

もっと大きな家や車、名誉やお金がほしい!欲しいものが手に入らないと他人が何かを失うことに、たいがいの人は喜びを感じるのです。

認知症の人は、妄想と相まって、本人は正しいと確信しているが明らかに違った判断や考え方により自分の愛する人の愛情が他に向くのを恨み憎む妄想として表れます。

これは、配偶者が生存していることが多いためのようです。認知症の人の妄想の中でも出現頻度の高い症状です。

嫉妬妄想は、記銘力の低下が根底にあり妻が外出して家に一人取り残されると心細くなり不安が生じて、嫉妬妄想に転じるようです。逆に妻の方は「夫が他に女を作っている」と妄想を抱くのです。

その他に認知機能の障害から考えると、成り立ちには病前性格や生活環境、感情の状態などから、理解できる「羨ましく思う」感情なのです。

嫉妬という醜い感情について、このような感情を人間が持つようになったのは生きるための競争が激化したことがきっかけとなって、人格変化をきたす情動的な行為によるものだとテュレーン大学Tulane Universityのキャリー・ワトソンCarrie Wyland博士は言います。

この嫉妬や妄想などの感情を司っているのは、脳の前帯状皮質anterior cingulate cortexという領域です。

痛みや拒絶など、私たちにマイナスの影響を与える感情と同じ脳の領域が嫉妬や妄想を扱うのです。

嫉妬心を起こさせる人物に、自分が傷つけられていると感じる妄想で、不当に扱われたと感じた時など、特にこのようなマイナスの感情は強まるのです。

嫉妬の本質に迫る場面は、日常生活の中でよく見かけることが出来ます。

よく調子に乗って大声で自慢話をする人がいますが、その話を聞いている周りの人は、次第に白い目で見るようになります。

自慢話をしている人が、何か不運な状態に遭遇すると、なぜか、周りの人は同情せずに喜ぶのです。このような状態の時には脳は、どのように反応しているのでしょうか!

このような感情を表現する言葉があります。シャーデンフロイデschadenfreude「恥ずべき喜び」「harm joy」日本語では「様を見ろ」を意味するドイツ語です。

羨ましく思う相手が、不運に見舞われると、嫉妬心がかき消されて、なんとなく嬉しい気分になるのです。他人の不幸を喜ぶ感覚です。

ですから、このシャーデンフロイデの反対は、同情だと考えられています。

嫌いな人でなく好きな人が不運に見舞われると、喜びは感じられないということです。つまり、認知症の介護をする上では、シャーデンフロイデの感覚を拭い去るように努めることが、介護者の「共感的な心のあり方」といえるのです。

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次は怒りwrathです。

怒りが爆発してしまいそうな時はどういうときでしょう!

認知症の初期や中期では、実際に上機嫌な状態から怒りのモードへと簡単にスイッチは入れ替わります。

激しい怒りを感じると、脳の認識力と言われる知覚・記憶・学習・思考・言語などが制限されるとルイジアナ州立大学Louisiana State Universityのアレックス・コーエンAlex Cohen博士は言います。

自分の置かれた状況に集中し、脅威となりそうな事柄を探し出すのです。

例えば、不当な扱いが続くと脅威と感じて脳内で葛藤が生じます。

偏桃体amygdalaが脅威を感じると、アドレナリンとノルアドレナリンが分泌され戦うか逃げるかの選択を迫るのです。

人間は怒りに適用し、先を見越した行動がとれるようにも進化したので、必ずしも衝動的になる必要はなく怒りを処理するすべを人間の長い歴史の中で身に着けてきました。

認知症の人は、身体的にも精神的にも老化が生じるため、挑発されると直ぐに興奮する易怒性や攻撃性、いきなり気分障害を起す情動易変性など感情面で変化が起こりやすくなります。その殆どが、不満や不快の意思表示なのです。

怒りに対しての対応は、押さえつけるよりも、叱らず興奮の治まるのを待って認知症の人の苦しい状態を理解することが重要です。

場合によっては、温かい声掛けや認知症の人の望む人物像をある程度、演じることも必要となるでしょう。

介護者がひどく疲れていたり、人間関係がよくなかったりすると行動・心理症状BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia が増悪すると言われます。介護者の思いやり愛着が薄く回避傾向にある場合や認知症の方が、イライラ感(焦燥)が強く精神的に落ち着かない状態が続く時にはBPSDの発症率が高くなるのです。たとえば、介護者が焦燥感を挑発行為と誤って解釈し、怒って言い返すことで事態がさらに悪化することが少ないのです。

介護者による不適切な対応は、妄想・攻撃性・多動に関連がることが報告されているのです。

同様に認知症で怒りが強い方は、自分の空間に介護者が侵入してくることに対して様々な反応を示します。特に焦燥症状と重度の認知機能障害のある方は、触れられるだけで怒りや攻撃性は増加するのです。

しかし、それ以外の行動症状は減少したという報告があります。

触れるだけで攻撃性が増すということは、触れられるのが一部の認知症の方にとっては、個人的空間の侵害を意味する場合があるということです。

逆に言えば、触れられることは安心と慰めをもたらすコミュニケーションとも言えるのです。そのため、その他のBPSDが減少したのではないでしょうか。

介護者は、特に施設で働く介護専門員の方々には「怒り」については知ってもらいたいことですね!

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罪深い本能を有効に活用する方法はないのでしょうか!例えば強欲greedこの罪にはあなたの知らない使い道があるかもしれません!

強欲は時には獲得のシナリオといって、お金の決断をするときには、脳の特定の領域が活発になります。

海馬 Hippocampus

前頭前皮質Prefrontal cortex

前帯状皮質Anterior cingulate cortexです。

研究によると偏桃体Amygdalaは、お金を獲るときはあまり活発ではないといいます。しかし、お金を失うと興奮するのです。

私達の脳には、損失回避Loss aversionという性質が備わっていて、お金を損失すると大きな痛手を感じるのです。

脳は利益を得る満足感よりも損失を追う事への損失のほうが大きいと感じるのです。お金の話は、認知症の人の喪失感に繋がります。

人間は加齢に伴い、家族・仕事・収入・活動・役割・位置・健康・生きがい・知的機能・自分史など大切なものを一つひとつ喪失(損失)していくのです。この喪失感が認知症の進行に伴って表出してくるので、ヒトのエゴ、強欲が認知症の進行に大きく関与しているかもしれません。

アメリカの精神学者エリック・バーンEric Berne博士は、人間関係は、自分との関わりのある人との性格特徴を比較することで問題解決につながると言っています。

BPSD自体が介護者の負担の大きな要因になっていることは明らかですが、BPSDに対する介護者の反応も重要になります。

一般的には、BPSDは介護者の負担の原因となっていると推定されていますが、その逆の可能性があるのです。

経験豊富な介護者は、BPSDをもつ人に対する介護者の強欲と言われる行動が認知症の人に対して、直接的かつ重要な影響を及ぼしていると報告しています。

例えば、多くの介護者はBPSDが制御できるものだと思っているのです。これは、介護者が介護者に対しての敵対感情に違いないと考えているからなのです。

この様な介護者は、認知症の方の忘れっぽさは、無責任さであり、怒りっぽいのは感謝の気持ちが欠けているからで、繰り返し質問をするのは故意にやっているのだと思い込んでいるのです。

そのため、介護が強欲になり、批判や敵意をむき出しにして、受容することを忘れあくことを知らずに責め立てるのです。その結果、行動を悪化させて益々介護負担を大きくしている罪を背負ってしまうのではないでしょうか。

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そして、最後の大罪は色欲lustです。

この内なる欲求がなければ、私たちは生まれていません。

後世に子孫を残すために脳にプログラミングされているのです。

しかも、本能の奥深い部分に根差しているゆえに、時にこの欲求に強く捕らわれてしまうことがあります。

抑えきれない欲望、これは何が引き起こしているのでしょう!

色欲について、ヴァッサー大学Vassar Collegeのアビゲイル・バードAbigail Baird博士は、脳内でドーパミンを分泌させ、報酬系(A10)と呼ばれる神経系を活性化させることが分かっているといいます。

ドーパミンによって人は快楽や興奮を覚えます。男性はきれいな女性を見るとドキドキしますが、見た目意外に要因はないのでしょうか!

男性は視覚によって色欲を刺激されますが、女性は、ある化学物質が鍵を握ることが分かっています。女性は性的魅力を感じ取るのに、視覚なのか、それとも視覚に勝る感覚があるのでしょうか!実は、女性は嗅覚を駆使することが分かっています。嗅覚とは匂いの感覚のこと、匂いで最適の相手が分かるのです。

では、嗅覚はどのような働きをするのでしょうか、女性は男性の汗に混じるタンパク質の匂いを感知し、彼らの免疫システムが生物学的に最適か判断するのです。生物学的に最適とは、相手が自分とは異なる遺伝子や免疫システムを持っているということです。

二人の間に生まれる子は、多様な細菌やウイルスに対して抵抗力を持つため、より生存に適するようになるのです。

嗅覚は同時にフェロモンをも感知します。

フェロモンとは、脳内で様々な反応を引き起こす化学物質です。

フェロモンは異性を性的に刺激する信号であり、女性は嗅覚で最適な遺伝子を判断する脳力に優れているのです。

女性の視覚と嗅覚など感覚はうまく連結していないのでしょうか、生物学的には最適な相手を選ぶとき視覚は騙せても脳は騙せません。色欲を刺激するのは、実は匂いなのです。これは近親相姦を防ぐ本能のためとも言われ、遺伝的に悪影響を与えるとして人間の本能から避けられているとも言われています。

認知症のBPSDに性的逸脱行為がありますが、これも本来人間にとってごく自然なもので、老人になっても持ち続けているものです。特に男性の場合は、年齢とともに変化するとバード博士は言います。

年齢を重ねれば食べ物のだけでなく異性の好みも変わってくるという訳です。

女性の場合は、見た目より性格や相性など他の部分に行為を抱ける柔軟性を持っていますが、男性は2段階で女性を選考しているようです。まず「女性の容姿・外見」が自分の好みかを見極めます。次に内面ということになりますが、この内面が歳を取るごとに「優しくしてほしい」「寂しさを受け止めてくれる」といった思いが強くなるようです。男性は好みにあった女性に対しては、より仲良くなるために、様々なアピールを行います。触れたりするアクションは、アピールなのです。

囁くのは聴覚によるアクションです。

一緒に過ごすことで、本当に自分に合うか、自分のことをどう思ってくれているのかなどを観察して確認しているのです。

それが上手く表現化できなかったり、言語化できないために性的逸脱行為として捉われてしまっているようです。

つまり、色欲は非常に本能的な欲求だということです。「好意的に受け入れる」接し方や受け止め方について深く考える必要が有るようです。

認知症になると、既知顔すら分からなくなるなど深い孤独感や不安感、疎外感を抱いていることは確かなのですから…性的逸脱行為が香りやマスクで顔を隠すだけでも軽減されるのは、この色欲のお蔭かも知れませんね!

しかし、なぜ人はこれらの欲求に「あらがえない」のでしょうか!

脳が「あしき欲望」に支配されるという見方は面白いのですが、衝動的にとる行動の多くは、生命や種の存続に「かかわる」ものでもあるからでしょうか。

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