Science Park★DNAに刻まれた人間らしさ(後編)★

~35億年の進化の結晶「脳」と「心」~

今回のScience Parkは、宇宙に初めて誕生した太陽系第3惑星「地球」のお話です。激動の地球の歴史は、遥か昔46億年前に始まりました。そしてその歴史は今を生きる私達にも、不思議な方法で影響を与え続けているのです。

その地球を生んだ宇宙の歴史は、現在の私達のDNAを調べることで分かるのです。つまり、まぎれもない人間の物語でもあるのです。

How the Earth made Man人体から学ぶ地球の歴史 

137億年前、何も見えない小さな世界がインフレーションという大爆発を起こし、その瞬間に目には見えない大きな世界が完成しました。

そして、今からおよそ46億年前、燃え盛る大量の溶岩の塊としてこの世に生まれた地球は、生命が宿るような環境ではありませんでした。

5億年後、地球の温度は下がり地殻が固まり、やがて表面に水の塊、海が現れ生命の素材となるタンパク質や核酸、アミノ酸、糖などの有機物が大気中の二酸化炭素や窒素、水などの無機物に雷の放電や太陽の紫外線などのエネルギーが加えられ、39億年前に最初の原始生命が生まれたのです。

10億年もの月日が経つと光からエネルギーを吸収する、はっきりとした核を持たない最初の単細胞生物が生まれました。

やがて光合成を行い自分で栄養を作り出すシアノバクテリアが住み着きました。

それから30億年地球はすざましい変化の嵐を耐え抜きます。生命は顕微鏡を使わないと見えない大きさのままです。

地球規模で生命の歴史を語ることは、バクテリアの歴史を語ることにほかなりません。

今でも単細胞以下の生物が大部分を占めています。

そして、5億年以上前、光合成によって、無機物である二酸化炭素と水からブドウ糖などの有機物を作り出し、光合成により大気中の酸素が増加したことで、より高等な生物がすむ環境が整いました。

このとき人間を含めたすべての動物の基本構造が出来ました。

3億7千年前、ティクタアリク・ロゼアエ(Tiktaalik roseae)という古代魚に手足が生え、陸上へと這い上がりました。これが人の体を動かす腕の原型となりました。

2億5千年前、トカゲに似た生き物が地上最大の大量絶滅を生き延びました。

その顎の一部が、私たちの耳の骨へと進化し、優れた聴覚が備わりました。

6千5百年前、ネズミに似た哺乳類に進化した私たちは、小惑星の衝突という大惨事を生き延びます。この時の体毛、爪、肌が後世に受け継がれました。

そして、私たちは哺乳類から霊長類へと更に進化を遂げていきますが、地球による人間の創造はまだ終わっていません。

数百万年の渡るアフリカ大陸の環境(気象)変化が、私たちを類人猿から人へと進化させます。

二足歩行で歩き、走る能力、投げる能力、狩の能力を手に入れます。

この時、人間の基礎になる感情、肉食動物への恐れ、本能が私たちの「心」に刻みこまれたのでした。

260万年前、氷期という試練の中、人の脳は3倍の大きさへと成長しました。

このように合理的な能力が備わる一方で、人には、デジャブ(déjà-vu)といった実際は一度も体験したことがないのに、既にどこかで体験したことのように感じる歪が残されたといわれています。

つまり、環境(気象)の変化という困難が、直観に従い不快と感じる能力を私たちに授けたのです。

そして、25万年前、不快感は恐怖心と相俟って、愛、驚き、恐れ、怒り、嫌悪、軽蔑といった情動と注目、接近、関心、回避、逃避をnon-verbal communicationノンバーバルコミュニケーション(態度、表情、声の大きさやテンポ)とverbal communicationバーバルコミュニケーション(絵画、絵文字、手話、口笛)を用いて表現するようになるなど私たちの体はさらなる進化を遂げます。

15万年前、アフリカの大地を離れ人間は世界へと散らばりました。

そして、7万4千年前、スマトラの「トバ火山」の大噴火により私たちは絶滅の危機にさらされたのでした。実は、この大噴火の痕跡は遺伝子の類似性として今に残っているのです。

この大噴火の後、古代シュメールを皮切りにエジプト、ギリシャ、ローマ、中世ヨーロッパ、中国では、長江文明から黄河文明、遼河文明、三皇五帝、三国時代、隋、唐を経て、日本では縄文、弥生から始まり、そして現代へと続くありとあらゆる文明が、このわずか1万年の間に華が開いたのでした。

人間の文明は書物に示され、それ以前の歴史は全て私たちの体に刻まれています。

地球の歴史が浮かび上がらせたもの、それは私たち人間が、およそ45億年の大激変の幸運な生き残りであるという粛然たる事実です。

私たちが今こうして生きていられるのは、祖先たちの素晴らしい想像力のお陰であると同時に幸運のお陰でもあるのです。

祖先は長い歴史の中で、ほかの生命体であれば、とっくに絶滅してしまうほどの大惨事に何度も巻き込まれてきたのです。

実際絶滅してもおかしくない状況もありました。単細胞生物が、この世に生を受けてから300億の種が地球に生まれ、そのうち99.9%絶滅しました。そうした過去の多くの絶滅した生命の延長線上に今の私たちがいるわけです。

そう考えると考え深いものがあります。

最初の単細胞生物の誕生から、海の中で生まれた様々な生物、そして爬虫類、恐竜、やがて哺乳類が生まれ、私たち人間へと続いている訳です。

私達は、なんという幸運なのでしょう!

ここで、ダーウインの進化論のお話をしましょう!

人的淘汰と自然的淘汰という言葉はご存知ですか、そう遠くない昔、地球上にまだ犬はいませんでした。

今は、大型犬、小型犬、番犬、狩猟犬、ありとあらゆる犬がそろっています。種類が多いのは、なぜでしょう!

犬に限らず、この地球に多種多様な生き物がいるのはなぜか、蝶やクジラ、タツノオトシゴ、植物やカメ、人間、なぜ一種類ではないのでしょう。

多種多様な生き物はどこから来たのでしょうか、答えは変身する力です。

まるでおとぎ話や神話のようですが、でもそうではないのです。

3万年目には、まだ犬はいません。最終氷期といい冬が終わらない時代です。

植物や動物すべてが野生でした。人は集団を作り放浪生活をしていました。

星空の下で眠り、空を見て物語や暦や生きるための手引を作りました。

空を見て寒さの到来や穀物の実りの時期、トナカイやバイソンの群れが動く時期を知りました。食べ物や衣服は狩りによって手に入れ、豊富に見つかるとしばらくそこに留まったのです。彼らにとって家とは、地球そのものでした。

敵はおなかをすかした肉食動物です。その中に狼がいます。狼は人間が食べているものを取りたくても、火を使う人間に怖くて近づけません。

恐怖心は血液中のストレスホルモン(コルチゾール)によるものです。これは身を守るためでもあるのです。

人間に近づくのは危険な行為なのです。

でも、狼にもいろいろいて、そのストレスホルモンが低いものもいます。

人間をあまり怖がらない狼です。

この狼は1万5千年前に、別の種類になることに決めました。見事な生き残り戦略、なんと人に飼われることにしたのです。

人に狩りをしてもらい人を襲わず、人の残り物をもらう食べ物に困らず子孫も残せます。

子孫はその性質を受け継ぎ、この家畜化は長い年月で色濃くなり、狼は犬へと自ら進化したのです。これを人的淘汰といいます。

なついたものが生き残ったのです。人にとっても好都合でした。ただ残飯を片付けるだけではありません番犬になったからです。

犬と人との共存が続くにつれて、犬の姿も変わっていきましたかわいい犬が選ばれたのです。見た目がいい犬ほど選ばれて子孫を作りやすくなりました。

そして、互いの都合で始めた共存がやがて深い友情に代わったのです。

そして、氷期と氷期の間の温暖な時期である間氷期では、どんな変化が見られたのでしょうか、気候の変動は大きな変革をもたらしました。

人は放浪をやめて定住しました。そして、出来たのが村です。

これまでのように狩もしますが、食べ物を自分たちで作っています。農業が始まったのです。

犬は人間の良きパートナーとして狩や警備、運搬などを手伝いました。

そして、人はたくさん生まれた子犬から気に入ったものだけを選びます。

そして何世代もかけて進化していきました。このような進化を人為淘汰(品種改良)と呼ばれます。

狼から犬への進化は、人類が初めて進化に介入した一例です。

その後も人は介入を続け、必要な動植物を改良してきました。

つまり、今いる犬たちは人の手で作られ、食べられない野草は小麦やトウモロコシに変えたのです。

わずか1万5千年ほどの人為淘汰で、これほど大きな変化が起きましたが、何十億年にもまたがる自然淘汰は、何をもたらしたのでしょうか?

答えは美しくて多様な生き物たちです。

意外に思うかもしれませんが、2百万年前から地球は氷河期が続いています。

今は氷期と氷期の間である間氷期なのです。

200万年前は北極の氷は下関や高知あたりまで続いていたのです。

アイルランドの凍てつく荒野に一頭の熊がいます。

ところが、その熊に特別なことが起こったのです。

熊の卵子の中を見てみましょう!微小管の上を歩きながら物質を運ぶキネシンというたんぱく質で私たちの細胞の中にもいます。

そして細胞核、この中にDNA〈デオキシリボ核酸〉が入っているのです。

太古から受け継がれる遺伝番号です。

どんな生物でも解読できる言語で書かれています。

DNAは、ねじれたハシゴで二重らせんになっています。ハシゴの段は4種類の小さな分子で出来ています。これをアルファベットの文字で表します。文字の配列によってあらゆる生物の設計図が決まります。

どのように成長し動き、食べ、周りを感知し、回復し,繁殖するDNAの二重らせんは、大きな分子の構造で原子という一千億の部品から出来ています。

ひとつのDNA分子に含まれる原子の数は、一つの銀河に含まれる星の数と同じぐらいなのですから驚かされます。

ですから、生物である私たち一人一人が小宇宙と呼ばれている由縁なのです。

DNA情報は細胞から細胞、世代から世代へと受け継がれ精密に複製されます。

新しいDNA分子の誕生は、ねじれをほどくタンパク質が二重らせんのハシゴの段を壊して鎖をほどくところから始まります。

遺伝暗号の分子は、細胞核の液体の中で浮遊しています。

ほどけた二重らせんは、失った相手を複製し、全く同じDNA分子が二つできます。こうして遺伝子は複製され世代から世代へと受け継がれるのです。

細胞が二つに分裂すると、それぞれが完ぺきなDNAの複製を持ちます。

特定のたんぱく質が、DNAが正確に複製されたかをチェックしているのです。

ただ完ぺきには行きません。

たまに間違いに気づかず、遺伝情報がわずかに書き換わることがあります。

これを突然変異といいます。

熊の卵子に突然変異が起きました。偶然によるこの些細な出来事は、とても重大な結果をもたらすことがあります。

突然変異は熊の体毛の色を決める遺伝子を変えました。

熊の子供は黒い色素を失い白くなりました。

突然変異はどのタイミングにでも起こります。

その変異が環境に適合すると生存競争に有利になるからです。

自然界では生存により適した生物が選ばれるからなのです。

白い熊と茶色の熊は分かれ、数千年の時を経てそれぞれ独自の進化を遂げました。

違う種に代わっていったのです。これが、チャールズ・ダーウィンが「種の起源」で唱えた進化論です。

個々の熊は進化しません。集団が進化するのです。何世代もかけて…

このまま地球温暖化が進み、北極の氷が解け続けると北極熊は、絶滅し氷のない世界に適用した茶色の熊が繁栄することでしょう!

犬の進化とは違い自然環境が選んだのです。

これが自然淘汰による進化で、1859年チャールズ・ダーウィンによって発表された「種の起源」の進化論で、最も革命的な考え方なのですが、未だに、この理論の物議は続いているのです。

なぜでしょう!

人と猿は祖先が同じと聞くと、あまり好い気がしない人もいるでしょう!

似ているからこそ認めたくないのです。

人に最も近いチンパンジーですが、明らかに行動は違います。

人が猿と距離をおこうとするのは、無理もないことで、人は他の動物とは違って独自に創造されたと昔から信じられてきました。「人」は特別だと考えたのでしょうね!

でも、「人」と「樹」が親戚だと言ったら…オークという植物のDNAの一部に糖を代謝する方法が書かれています。

人のDNAの同じ部分と比べてみると、そのDNAは全く一緒なのです。

つまり、この植物は私たちの遠い親戚だということです。

植物だけではありません。

太古まで遡れば、みんな祖先はつながっているのです。

虫も、魚も、鳥も、キノコも、細菌もみんな家族です。

DNAの一部が種によって違うだけです。それが、鳥と魚の違いを作っているのです。一卵性でない限り、この宇宙に全く同じDNAを持つものはいないでしょう!

種と種の遺伝子の違いが、自然淘汰が起こる要因となります。環境が生き残り増殖しやすい遺伝子を選ぶのです。

生命の最も基本的な機能に関する遺伝情報は、人も他の種もほぼ同じなのです。

それは生命の機能の根幹をなしていて、様々な生物に枝分かれする前に備わったのです。

これは我々の生命の樹、地球上のあらゆる生物の種が入った系統図を表すことが可能になりました。

遺伝的に近い親戚は、同じ枝に属し、遠い親戚ほど遠くに位置します。

小枝一本が一つの種です。

そして樹の幹が、地球上の全ての生物の共通の祖先です。

生命は順応性に優れるので、誕生した後は環境に応じて実に様々な形に変化しました。

生物学者達は、甲虫だけで50万種に分類しました。もちろん細菌の種類も無数にあります。この世には何百万種もの動物や植物がいますが、そのほとんどが未知のままなのです。

7万4千年前のスマトラの「トバ火山」の超巨大火山の噴火によって、地殻変動が起き、空は暗くなり、氷期のような寒さが6年間続いて、人類は絶滅の危機に至ったわけです。

この大噴火により、人間の数はわずか数千人までに減少してしまったので、私たちが生き残れるように…直観に従い恐怖(不快)だと感じる能力が授かったのです。

この能力の痕跡が、遺伝子の類似性として今に残っているのではないでしょうか。

トバ火山の噴火の時、突然変異した遺伝子によって、扁桃体が危機感を感じると視床下部に連絡し、脳下垂体から副腎皮質ホルモンが、副腎からコルチゾールというストレス物質を分泌させるようにしました。

そして、睡眠障害や不安、自律神経障害から抑うつ、もの忘れなどを発症して、血圧、脈拍、体温は上昇、体に攻撃反応や拒否反応を起こさせるようにしました。

つまり、人間の体や行動を形作ってきたのは、大小様々な人類への脅威なのです。

しかし7万年前に地球で起きたある出来事は、私たちが本当の意味で人間へと生まれ変わるための究極の試練を与え、結果として自然淘汰が起こったのかもしれません。

現在のPTSD心的外傷後ストレス障害(地震、洪水、天災)など命の安全が脅かされたりすると、多量にコルチゾールを分泌させて、海馬を萎縮させる記憶障害も、実は遺伝子の類似性として今に残っている痕跡なのかもしれませんね。

但し、この話がアルツハイマー型認知症の発症と関連性があるかは定かではありませんが、現代のアルツハイマー型認知症の発症には、「βタンパク前駆体遺伝子変異」「プレセニリン遺伝子変異」「Apoℇ遺伝子多型」などの突然変異があるのも、また事実です。

これは、ある種、強い精神的衝撃を受けるたびに突然変異を繰り返してきた結果だとしたら、近年の歴史の中で火事、戦争、事故、犯罪、虐待、嫌がらせ、家庭内暴力、体罰などで命の安全が脅かされ、人としての尊厳が損なわれてきたことが、何世代にも渡った結果として、認知症の発症を助長しているのではないかという仮説にたどり着くかもしれませんね。

突然変異はどのタイミングにでも起こるのですから・・・。

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