Scientific Dementia Care

★認知症は夢で治す★

私たちは、ものを考えるとき、脳を使っています。泣いたり、笑ったり、怒ったりするのも脳の働きによります。頑張ろうと決意したりするのも脳です。いわゆる「知・情・意」といわれるもの、つまり知性、感情、意思といった精神の働きは、全て脳が支配しているのです。

認知症は、時間・空間・場所・状況・目的・関係などのつながりとその意味が頭からすぐ消えてしまったり、寸断されたり、繋がらなくなったりすることにより日常の生活に様々な支障をきたしてくる脳器質性疾患です。

今回は、そんな脳の働きを利用して認知症の進行を緩和する最先端介護技術を紹介します。

脳が最も活発的に動くときは脳が休息しているときです。眠っている間、脳は最も重要な活動を行なっています。そのため長い間、睡眠を取らないでいると脳が体を停止させてしまい生命を脅かすこともあります。脳に関する最も大きな謎、それは睡眠中の動きです。

われわれが眠っている間、脳は起きている時と同じぐらい活発に動いています。

脳は睡眠を促します。

夜になると脳は小さな内分泌器から、睡眠を促す物質を分泌します。メラトニンです。

メラトニンは中枢神経に働きかけ、眠気を誘います。体の動きが緩慢になる一方で、脳は活動を続けます。つまり脳は、毎晩、調整作業を行なうのです。

日中フル活動していた部分が停止し、修復作業が行なわれます。活動によって生じた不要物が、きれいに取り除かれ一部では新たな細胞が作られます。このメンテナンス作業なしに脳は最大限の力を発揮できません。長い間睡眠を取らないでいると、脳は正常な機能をしなくなるのです。

認知症疾患者の多くは、この正常な機能が侵され睡眠障害を呈してきます。

不眠状態が続くと、思考センターに異変が起き、やがてつまらないミスを犯してきます。

何度、同じ話を聞いても理解できなくなるのです。

脳はダメージコントロールといって、重要でない機能を全て停止します。

その機能の一つに論理を司る思考中枢があります。

思考中枢が停止すると、すぐに朦朧とし認知機能と意識障害を起こします。これが“せん妄”なのです。

人間にとって一番厄介なのは自分を失うことなのです。

しかし脳は無防備ではありません。

眠っている間でも脳の一部は起きています。そのため目覚ましの音で目がさめることが出来るのです。眠っている間でも脳は完全に停止せず起きています。常に外界に注意を払っているのです。

睡眠は認知症の脳細胞ダメージのメンテナンスに役割を果たします。

それは夢です。

とても興味深い独創的な世界を私たちに見せてくれる夢です。

脳の活動が最も活発的になるのは、体が完全に休息している時間、夢を見ている時なのです。しかし、このとき一つだけ休んでいる箇所があります。論理を司る部位です。

そのため脳は論理に縛られることなく、

自由で幻想的な世界を作り出すことが出来るのです。これが妄想や幻覚を引き起こすのかもしれません。夢はいわゆる仮想世界で、そこではありとあらゆる経験が出来るのです。

夢を見ている間、まぶたの下で眼球は活発に動いています。急速眼球運動、これがREM睡眠です。

REM睡眠の間、脳の動きが活発になるため血液の流れが倍増します。夜間の血圧の変動や体温の変化もこれに関係しています。しかし、このとき体は動きません。

脳が脊椎に信号を送り、体を一時的に麻痺させているからです。また、夢は脳を楽しませるだけでなく、記憶を蓄積させる役割を担っています。

眠っている間、脳は一日の出来事をまとめ、不要な内容を整理します。

REM睡眠中、脳は大量の情報を処理し、重要なものとそうでないものに分けるのです。

人間は起きている間に体験したことを一時的に記憶します。これを陳述的記憶といいます。認知症疾患者はこの記憶が曖昧になるのです。夢を見ている間に、その中の不要な情報は捨てられ、必要な情報だけが永久に保存されるのですが、このとき陳述記憶はすてられてしまうのです。

記憶を整理するプロセスは、いまだ解明されていません。

夢の世界は、ロジックが存在せず、想像性が豊かで、アイデアの宝庫です。

夢を制御する方法はあるのでしょうか、

明晰夢(メイセキム)と呼ばれる、睡眠中にみる夢のうち、自分で夢であると自覚しながら見ている夢のことを言いますが、この明晰夢をコントロールする技術を開発し脳の力を利用する試みがなされています。

鍵は夢の中で夢だと気づくこと、

次なるステップは観たい夢を見ることです。

まぶたを通る程度の明るい光を放ち、夢を見ていることを教えます。

訓練をつめば、自由な夢の世界で自らをコントロールできるかもしれません。

この技術は様々な分野への応用が可能です。

これを利用して、認知症の治療にも役立てようというわけです。

夢こそ私たちを操作している脳を、逆に操る唯一の手段かもしれません。

脳ほど複雑で謎の多い器官はありません。

意識の有無に関わらず、われわれの命を司っています。

私たちを思いのままに操るパワーを持つ脳、

わずか1400gの器官が織り成す世界は、まだわずかしか解明されていません。 脳の科学的研究は、人類の知らせざる潜在能力を明らかにし高めてくれるでしょう。

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