Scientific Dementia Care

★脳は奇跡の創造物★

脳は調和のとれたオーケストラにもたとえられます。すべてが一体となり、心の音楽を奏でているのです。

私たちの思考は脳神経細胞が生み出す協調和音“ハーモニー”なのです。

脳は見たものや想像したことを記憶し、私たちの社会や世界を形成しているのですが、認知症の方は、脳の記憶が破たんしてしまい、不協和音が生じてしまうのです。

認知症の方では、初期には考えや気持ちがまとまらなくなる状態が続く統合失調症の兆候が現れることがある・・と、報告されています。

病態はその後、妄想に襲われ落ち込むようにもなる人もいます。

被害妄想癖に襲われた認知症の初期の方の多くは、殆んど働くことが怖くなり、他人との関係性に支障をきたし職を失ってしまうことが多く、進行すると社会生活や日常生活すら送れなくなってきます。

認知症の方を介護している家族の話では、最初のころは、誰かの陰謀だと外罰的になりあたりかまわず暴言を吐き怒鳴っていたようです。そして、必ず陰謀を働いているのが、一番身近にいる人だと、皆、一様に感じているようです。

認知症の方にとっては邪魔をする人(身近な人)たちを攻撃してしまうのが特徴的な症状のようです。

しかし、なぜ認知症の方は妄想を抱くのでしょう。脳の損傷などから脳神経細胞の結合に支障をきたすことが原因ではないかと言われています。

この方の脳画像を見てみると、前頭葉に顕著な萎縮が見られ正常に機能していないようです。側頭葉や海馬にも異常が見られていました。この組織は感覚刺激を過去の記憶と比較するという重要な役割を持つところです。

海馬に蓄積された記憶は、前頭葉に送られ、情報が分析され、判断と行動を起こします。

側頭葉や海馬が傷つき萎縮してくると、前頭葉との結合に異常をきたしてくるようです。

前頭葉や側頭葉の萎縮が進行するにつれ、明らかな異常行動が現れてきます。

暴れたり、ストレス過敏になったりします。幻覚を見る人も現われますが、これは結構まれなようです。生物学的にみれば、初期は統合失調の症状と酷似しているようです。

複雑なネットワークが脳内で崩壊し始める初期では、考えや気持ちがまとまらないなどの統合失調に似た症状が頻回に出現してくるようで、本人も苦しんでいるようです。

認知症の中でも、このような前頭葉や側頭葉に顕著な萎縮がある人は、前頭側頭葉型認知症と呼ばれ、他の認知症(アルツハイマー病)に比べると、進行が早く自覚症状が有ることが多いので、心がもろく崩れる方が多いようです。

認知症では、脳神経細胞の損傷から分子的な不接合が生じてきます。

すると、脳の大部分は結合を修復しようとするのですが、結果は、正常な部分にも悪影響を及ぼしてしまうようです。

 これが、認知症と言える由縁です。

疲れることも休むことも無く、生涯脳は働き続けることが出来るように、傷ついても驚くべき再生力を発揮します

ある認知症の方の初発症状では、朝起きて、目を開けた時、左目の後ろが強く脈打つのを感じたそうです。その方は、自分の顔の前で指を動かそうとしましたが、自分の意にそぐわず指の動きがおかしくなり、ついには思ったように動かすことが出来なくなったそうです。その時初めて脳がおかしくなったと気付いたそうです。また同時にすごい強迫観念と不安に襲われたそうです。

電話で助けを呼ぼうとしましたが、番号が思い出せません。電話帳を見ても、数字と文字の区別がつかなかったそうです。

自分で助けてと言っているつもりでしたが、口から聞こえたのはウーと言う「うめき声」だけだったのです。ただの音でしかなく、言葉とはならなかったようです。

家族は脳卒中だと思ったそうで、病院に救急搬送して脳画像を見ても脳内の血流が遮断されている様子や出血はありませんでした。

但し、脳細胞の崩壊(顕著な萎縮)が始まっていたようです。多くの脳神経細胞が死に、様々な精神症状と麻痺が表れました。それらに結合された正常な脳細胞にも信号が届かなくなったことにより脳梗塞のような症状が表れたのでした。それは、まるで電話線が切れたような状態だと言います。本人にとって物凄い恐怖は記憶が飛んでしまうことのようでした。そして、側頭葉から前頭葉にかけての萎縮が見つかりました。萎縮は前頭葉の前方連合野(ブローカ領野)と呼ばれる言語野をも損傷していました。

このブローカ領野は、話すことや文字を書く能力の中枢となっているので、声を出したり、口を動かしたりすることは出来るのですが声を出して話をすることが出来ないのです。

言葉を失った認知症の方はこれだけに留まらず、その後、抑制が効かなくなり、異常な程、何度も何度も同じ行動を繰り返す様になりました。

そして、前頭側頭型認知症と診断されたのです。

現在、認知症の方のリハビリテーションやケアでは、このような認知症の方でも、残っている無傷のネットワークを使った残存能力に注目し、失った機能に置き換える訓練を始めているのです。

認知症の方の場合、回復は望めませんが、残存している脳神経細胞をうまく使うことにより驚くべき再生力が発揮できると考えられています。

例えば、パズルのピースを手にとり、大きさだけで組み合わせようとしているリハビリテーションを受けていた認知症の方に、色を認識する声掛けすると、傷ついても驚くべき再生力を発揮し、また、色を識別し始めたという例もあります。

これは、視覚で色を識別しているのではなく、記憶から色の情報を再生したということのようです。そして、繰り返し訓練することで、パズルを完成させることが出来るようになったのです。

まるで頭の中に埋もれていた記憶という名のファイルが開いたと言う事です。

認知症の方のケアでは、すべて1から、ゆっくりと繰り返しながら、人生をやり直していくと考えて、一緒に成長するように接していく寛容性が必要です。

年齢とともに、脳の機能も衰退していきます。しかし、脳も筋肉と同じです。使うほど強くなるので、活動的な生活で脳の結合を増やし、そして認知症への予防と抵抗力を蓄えていくのです。快活さは体だけでなく脳の健康さえ鍛えるのです

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