Scientific Dementia Care

★認知症はグリア細胞が鍵になる★

高齢者では、感情が高まったり、他人の行動を論難したり、感情面での変化が起こりやすくなります。更に認知症では人格の変化が加わるため、興奮や大声を出すなどの感情面での気分障害が起こってくるのです。

これらの行動は、不満や不快の意思表示なのですが、実は性格と非常に関係があるのです。

今回は、認知症患者を細胞レベルから緩和する最先端介護技術を紹介します。

私たちは自分の性格を分かっているでしょうか。「気を使うタイプ」「社交的」「神経質」性格は一つの言葉では言い表せません。

性格は様々で、およそ5000種類もの特徴を持っていて、全て脳の中に記憶として埋め込まれているということです。

性格が作られるのは、生後と思いがちですが、脳神経細胞の成長と関係しているので実は受精の瞬間から始まっているのです。

ところで、自分が内向的か外交的か知っていますか、

内向的か外交的かは、両親から受け継いだ性格の中に遺伝として受け継ぐのです。

自分が内向的か外交的かを知るのに、脳の検査は必要ありません。

レモンの果汁をほんのひと絞りすれば心の働きが明らかになるのです。

内向的と外交的な性格を調べるには、分泌する唾液の量を調べることで、知ることが出来ます。内向的なほうが外交的なほうより唾液量が多いのです。

これは、脳の中にあるニューロンと呼ばれる神経細胞とグリア細胞の2つの細胞の仕業なのです。

私たちの脳の中では神経細胞が複雑な経路を作り、電気信号によってやり取りしています。実は、この神経細胞は生まれる前がピークで生後は半分程度死んでしまい、二度と増えることはないと考えられていたのです。

ところが、成人でも新たに神経細胞が増える報告がなされたことから、再生することを利用して、認知症を治療することが出来るのではないかと研究が始まっているのです。

神経細胞は、次々と突起を伸ばしては結合していきます。

その一方では不要になった突起や結合が、同じだけの速さで消失もしていきます。

これは成長にしたがって周囲で起る出来事やそれに対する反応が記憶されて性格の様々な特徴が作られていくことを意味し、不要なものを削除しているとも言えます。

新しい体験をすると脳内では神経細胞の新たな結合が起こります。つまり新たな経路が出来るのです。子供の頃に身についた性格の特徴は、たいていの場合その人が一生を終えるまで続きます。

なぜ、長く続くのでしょうか、これにはグリア細胞が大きく関わっているのです。神経細胞の結合や経路を決めているのが、神経細胞同士の接点に当たる神経細胞から伸びた軸索、その先端にあるのがシナプスと呼ばれる場所です。

ここで信号のやり取りをします。信号を受ける側をスパインと呼びます。

グリア細胞は、このスパインに絡みつくように接することで、スパインを長い時間いかし、成長させることを仕事としているからなのです。これにより一生を終えるまで性格の特徴を保つことが出来るのです。

また、特にグリア細胞が多い海馬などで、グリア細胞との接触が強いものほどシナプスは成熟し安定するということから、記憶や学習をコントロールしている可能性も分かってきたのです。

グリア細胞がよく働くと脳の記憶力が良くなると言う事です。つまりグリア細胞は記憶そのものに関わっているのです。

しかし認知症で、怒鳴ったり、叫んだりの興奮が一瞬のうちに起こってしまう気分障害は、これらの経路がうまくつながらなくなっていると考えられます。もちろん記憶障害も同様です。

そこで、グリア細胞のネットワークが、神経細胞が過剰に興奮するのを抑え安定した状態に保つと言う働きを利用して気分障害を緩和する治療が行なわれています。

3D illustration of Interconnected neurons with electrical pulses.

このグリア細胞は脳の大脳皮質や海馬に多いのですが、末梢から脳まで3種のグリア細胞乏突起(ぼうとっき)グリア細胞や星状グリア細胞、ミクログリア細胞があります。

情報伝達のスピードにも関係しているのです。熱いか暖かいかが分かるだけでグリア細胞の存在が分かります。暖かいと伝わる神経は遅い経路、熱いと伝わる神経は早い経路です。

この速さの違いにグリア細胞が関わっています。

早いと言う経路は危険という経路でオリゴデンドロサイトと呼ばれる乏突起グリア細胞が数本の突起を広げて随鞘(ずいしょう)を作り軸索についています。のんびり伝わる細胞には乏突起グリア細胞がついていません。

最近ではグリア細胞による別のネットワークがあることや神経細胞と同じように興奮することが出来て、情報を周りの細胞に伝えることが出来ることが分かって来ました。

神経細胞とグリア細胞は互いに関係しあっています。

神経細胞は電気を使って非常に早くピンポイントで情報を伝達しますが、グリア細胞は電気を出さないで物質だけを使って情報を伝達します。そこで、認知症の記憶や気分の障害の緩和にグリア細胞を働かせるトレーニングとして温度差のあるものを交互に持たせるなどの知覚を刺激する試みが行なわれています。

また、神経細胞は脳出血で血液の成分が脳に入り込んだり、神経細胞が病気で変化したり、死んでしまったりしたときにSOS信号を出します。

その信号をいち早くキャッチし神経細胞に近づいて異物や死骸を処分してくれる細胞が、ミクログリア細胞です。

ミクログリアは神経細胞を常に監視し守っている脳の中の免疫とも言われています。

認知症になると記憶を司っている海馬にたんぱく質の塵、アミロイドが蓄積しこれがたまると記憶の障害をおこします。

ミクログリアはこのアミロイドを処分してくれるのですが、ミクログリアの活性化が逆に認知症の進行を早めているとも言われています。

そこで、ミクログリア細胞の活性化を抑える免疫抑制剤によって認知症の進行を抑制できる研究も始まっています。

今後は、これらの神経細胞やグリア細胞を培養し、移植することで認知症の治療が出来るようになるかもしれません。

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