Science Park 2021~生命、新たなつむぎ~

5000万年前、丈の高いイネ科の植物が茂る草原“サバンナ”が広がり、それに伴って哺乳類は、危険が多い森を離れました。

そして、440万年前のアフリカのサバンナでは、霊長類のアルディピテクス・ラミダスが、人間になるための一歩を踏み出しました。

森を去ると、高く生い茂った草の向こう側を見るために、後足で立つように歩くことで、手や指を上手く使って、道具や食料を持ち、二足歩行で狩りをするようになりました。

前足の指関節を歩行に使わず、木々を飛び移る必要もなくなると、肩や手首が進化して、人間ならではの特性を備え始めたのです。

正確にものを投げられるようになり、肉を求めて狩りをし、獲物を仕留めることが容易になったのです。

自然界の動物は、どのように獲物を仕留めるかというと…普通は、風下から音もたてずに相手に近づいて、自分の爪や牙を使って仕留めるのです。

しかし、人間はどうでしょう?爪や歯を使って仕留めますか、それは、鋭い爪や牙もない私達には、とても無理な話です。

そこで、二足歩行となった私達の腕は変化して、人間の歴史を特徴づける狩りをする道具や武器を作る進化へと繋がることになったのです。

離れた場所からでも相手を仕留められるのは、私達人間だけなのです。

また、地球には肉を食べる肉食動物は何千種類といますが、調理して食べるのは人間だけでした。原始人が火と道具を使い、肉を消化しやすくしたことで、人体の仕組みは更に変化したのです。

肉はエネルギーの塊ですが、消化や咀嚼が困難でした。しかし、調理をすれば消化しやすくなります。すると内臓が小さくなってきたのです。

内臓が小さくなれば、エネルギーは他の器官の発達に回せるようになります。

例えば“脳”へです。

つまり、人間の脳が非常に早く発達した理由は、実は二足方向と火や石器を使って肉を調理したことから始まったのです。

人間の脳は、地球最大ではありませんが、同じ重量で比較すれば、最強でもあるのです。

一生のうち千兆ビットの情報を処理することが出来、この処理能力は、他の動物を圧倒的に凌ぐのです。

では、どうして人間の脳は大きくなったのしょう!

440万年前、アフリカ大陸の地下のマントルが上昇して巨大な噴火と共に山脈が誕生しました。その結果、山脈に遮られたアフリカの東側では乾燥が続き、森が縮小してサバンナが誕生して食べ物が手に入りにくくなったということです。

そこで役立ったのが、二足歩行です。空いている両腕を使って、遠くの食料を大量に抱えて運ぶことも出来るようになり、食料の在処を覚えるようにもなりました。

こうして、アフリカのサバンナでの生活が、人間の身体や脳を進化させながら出来るようになったのです。

そして、その遺産は、今の私達の心にも刻まれているのです。

私達の祖先は、アフリカで長い間かけて進化した後、地球上の他の種から、完全に分かれることになりました。

人間は、新たなターニングポイントを通過して、独特な存在になり始めました。

しかし、何が私達と他の動物を分けたのでしょうか?

ひとりの人間が、火を起こす方法や新たな道具を考え出し、それを仲間と共有したことが大きな要因と言われています。

そのアイデアが集団に広まり、さらに世代を超えて伝わって行ったのです。

人間は数千年に渡る共有経験を基に、知識のデータベースを構築し始めた唯一の動物なのです。

肉を調理して食べ、より大きな脳を備えたという変化がきっかけで、人間にとって重要な、大きなターニングポントが生まれた訳です。

地球の形成や生命の始まりと変わらない…集団の形成であり…人間愛の始まりです。

地球上の歴史において初めて人族が現われたということです。

最も古い化石人骨は、2013年、南アフリカのハウテンシュのライジンングスターという洞窟の奥深くで、初期の人族の起源に近い化石人骨が発見されました。

https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/a/091400034/

研究の結果、新たな種としてホモ・ナレディと名付けられたのですが、人類の進化論に新たな疑問が投げかけてしまった化石人骨でもあるのです。

その疑問とは、東アフリカでは、年代を特定できる火山灰層が「タイムスタンプ」の役割を果たすことから、320万年前のアウストラロピテクス「ルーシー」をはじめとする有名な化石人骨の年代を正確に特定してきました。

ところが、南アフリカの洞窟で発見されたホモ・ナレディの化石人骨は、年代を特定しにくいことから、同じ場所で見つかる絶滅動物の化石の種類から年代を推定したのです。

ところが、ホモ・ナレディの化石が見つかった洞窟からは、フクロウの骨が1個とげっ歯類の歯が数個しか見つかっていないことから疑問視されている訳です。

しかし、ホモ・ナレディは部分的に原始的な特徴を残し、その顔や頭骨や歯には、ヒト属に分類できるだけの現代的な特徴も見られ、集団生活をしていた様子も伺えたので、ホモ・ナルディはヒト科の動物として認められたのです。

ホモ・ナレディは原始的な人類と進化した人類の両方の性質を捉えているという点がとても特殊なのです。

また、頭蓋事の形や歯のサイズといった特徴は、ホモ・ナレディ独特のものですが、一方で、足や足首は、ホモ・サピエンスによく似ているのですが、ホモ・ナレディの脳容量はわずか500㏄しかなく、ホモ・サピエンスの3分の1しかないのです。

また、肩や胴体に至っては非常に原始的で、初期のヒト科の祖先とよく似た特徴を持っているのです。ただし、ホモ・ナレディの置かれていた状態は、とても規則正しく、何かの儀式が行われていたようで、高度に進化した生き物のようでもありました。

つまり、これらの化石と遺伝学的証拠は、人類は私達が知っている以上に、約20種程度が存在したということを浮き彫りにした訳です。

人類の系統図は、初期人類であるネアンデルタール人や現生人類ホモ・サピエンスを加えて枝分かれしていきましたが、すでに絶滅している先人類種たちも含まれます。

例えば、ネアンデルタール人、ホモ・ハビルス、ホモ・エレクトス、ホモ・ハイデルベルゲンシスなどの知性を持ち直立二足歩行のできたヒト科の霊長目です。

人類の進化の過程の長年にわたる研究の結果、これら複数の種が集団化して、映画のロード・オブ・ザ・リングのように共存していた時期があったことが分かってきたのです。

そこで、1859年に提案されたダーウィンの進化論を再検討する必要があると議論になっているのです。

余談ですが、ロード・オブ・ザ・リングに登場するホビットは、インドネシアのフローレス島のギャンバー洞窟で発見された身長1mほどの直立二足歩行ができるヒト科のホモ・フローレシエンシスがモデルになっているのです。

ダーウィンは“種の起源”という著書の中で、人間の進化論について述べています。

人類は、自然淘汰によって世代ごとに段階的な変化を遂げていき、やがて、既存の種が改造されると…、

進化論が正しければ、ゆっくり安定した進歩がみられるはずですが、実際はそうではなく急速な進化を遂げて、突然、浮上したのが初期人類ではなかと考えれてきたのです。

しかし、初期人類を地理的分布に当てはめると、彼らは世界の異なる地域に存在しており、交わることは全く無かったと言えるのです。例えば、ロシアのアルタイ地方デニソワ洞窟で発見されたデニソワ人、ホモ・フローレシエンシスはインドネシアで、ネアンデルタール人は西ヨーロッパで、そして現生人類はアフリカで進化したと…、過去20年の間の発見によれば、世界における孤立した4つの地域において4種類の異なるグループが発見されたということになるのです。

何故、このような現象が起こったんでしょう…孤立した地域で特定の種の進化がそれぞれで起こったということになります。

人類の進化や、さらには人類以前のヒト科の進化は、ダーウィンが提案した通りの道を歩んだわけではないかもしれませんね!

1972年スティーヴン・ジェイ・グールドが、ダーウィンの進化論に異論を唱える断続平衡説という進化論を発表しました。

断続平衡説では、化石人骨の記録を見る限り、ダーウィンが提案した段階的なものではなく、生物の種は、突然変異のような急激に変化をする期間と、ほとんど変化しない静止(平衡、停滞)期間があり”徐々に”進化するのでなく“区切りごとに突発的に”進化していくと唱えたのです。

しかも、そのような急激な変化は隔離された環境(離島などの特定地域)の中で小集団により形態的変化も含め進化したという進化生物学論を発表したのです。

それらの人類は、何世代にも渡って情報を蓄積していく独特な能力を発展させながら進化していったということになります。

このことが人類を独特な生物にしていると主張しているのですが、未だに物議を交わしているのも事実です。

この独特な能力とは、脳の容量が大きくなるにつれて3つの記憶方法“手続き記憶”“意味記憶”“出来事記憶”を上手に使って思考し計算する認知の力が、他の動物に比べ飛びぬけて優れているということです。

そして、初期人類は20万年前、現代人の祖先にあたる原生人類”ホモ・サピエンス“へと進化して行ったのです。

6万年前には、脳容量はやや増加(1300〜1600㏄)して頭は丸くなり、眼窩上隆起は目立たなくなって咀嚼器官は退化してきました。

顔は華奢になって奥に引っ込んで、骨格は頑丈さが衰えたが、文化的な発達により環境適応力が強まり、見た目は現代人とほぼ一緒になったのです。

彼らは集団学習能力を発達させ、生存に必要な道具と技術を得ました。

こうして様々な進歩を遂げてきた私達ですが、人類の“つむぎ”は、ともすればアフリカの地で終わっていたかもしれないのです。

私達がこうして存在しているのは、奇跡でしかないのです。

https://www.nhk.or.jp/special/plus/videos/20180509/index.htmlNHKスペシャル人類誕生

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