Science Park2020エニアグラム

誰でも年をとると、経済力、健康、思い出、生きがい、ついには、生活歴や生きるよりどころまでもが失われていく、その時々に私たちは漠然とした恐れの感情が湧きあがってくる。この不安感こそが認知症を引き寄せる。

ある意味、認知症は年をとるごとに味わう、黙して語れない様々な生きる頼りのよりどころの喪失にあると感じる。

認知症という脳の病気によって、薄れていく記憶の中で忘れようとしても忘れられない生々とした恐ろしい記憶が急に思い出されてくる。

そんな脳裏の不安定化が、しばしば認知症の人の感情や行動を邪魔して、緊迫感と恐怖心が入り混じった世界に引き込まれていくのである。

しかも、今のところ認知症に狙われたら逃げる術は無い。

高齢者の心の変化は様々だが、不安の多くは、新しいことが覚えにくくなって物忘れや忘れっぽくなることだ。

それにあわせるように指の動きまで悪くなって物がうまくつかめなるなど体の些細な変化にもこだわるようになる。

やる気を失い、感情のコントロールが難しくなってきて落ち込むようにもなる。

認知症はこうして始まってくる脳の病である。

さて、いつまでも健やかな老後を送るために健康的な生活習慣を身につけ認知症にならない方法はあるのだろうか。

高齢者の症状は、医学書にのっているようなものが何時も現れるとは限らない、肺炎の症状が、徘徊などの性格行動の変化であったりすることも結構多い。

むしろエニアグラムにある9つの基本的な性格分類に当てはまるような行動があらわれてくるから自分のタイプを知っておくと介護されるときに役立つ。

エニアグラムとは、円周を9等分して作成された図形に人間の性格を9種類に分類しこの図形に対応させた性格類型で、9つの性格タイプそれぞれが、性格の特徴、世界観、動機、行動スタイル、エッセンス(本質的資質)をもって20歳代の性格がその人の生涯の性格になるということ、一方、認知症の人はレミニセンス・バンプといわれる長期記憶がありこのなかには自分の人生に関する「自伝的記憶」という記憶がある。

この「自伝的記憶」は、20歳代をピークに10歳代後半から30歳代前半までの、いわゆる“青春時代”の出来事とて認知症になってもたくさん思い出すからだ。

つまり、認知症になる前にエニアグラムで自分の性格を知っておけば、たとえ認知症になっても誰もがあなたの性格を分かって上で介護してくれるということになる。

また、たとえ症状があっても、自ら訴えなかったり、訴えられないこともしばしばだから、私は、声に出して「なんか…おかしい」「なんか…ヘンだ」と自ら訴えなさいと話を始める。

認知症予防は身近な人にまず声を出して甘えることが大切だと…そこには何か病気が隠れているかもしれないし、風邪の症状が徘徊するなどの性格行動変化であったりもする。

自分の変化に気づくのは誰でもない自分…なのだから、年老いたら自分に対してきめ細かい注意と配慮が大事だと伝えます。

たとえば、毎日朝1回の体温測定を続けるだけでも認知症予防になると…これが、認知症予防の第1歩にもつながるのだ。

私は、多くの認知症高齢者の介護に従事しながら、介護の対象となる方が目の前で、意味不明な行動や理解不能な言動によって、家族や介護者との関係を悪化させてしまい日常生活や社会生活にさまざまな支障がきたしていることを目の当たりにしてきた。

これらの出来事が、極めて悲しい出来事となって、家族や身近な人と一緒に暮らせなくなる要因になって施設入居になってしまう。

このような認知症の症状は、脳の病気によって正常であった記憶や判断力、知的機能などの認知機能の低下は、脳の情報処理や情報伝達を行う神経細胞に生じた病変によって起こる脳の機能障害の結果なのだ。いいかえれば、一つひとつの症状には、それに対応した機能障害の異常が潜んでいることになる。

つまり、手に負えないように見える症状も、脳機能障害に基づく病態として理解できるので、それに対する理屈に合った対策が可能だということだ。

狂言の舞台で、道行という独語を言いながら舞台をさまよい一巡する叙景があるが、もともと道行とは旅をしながら歩く様子を指し、徘徊はその仕草に一見似た所がある。

徘徊とは目的も無く、しきりと住居の内外を繰り返し歩く情動的な行動だが、認知症の人によっては何らかの原因、理由が有ることも分かっている。

徘徊を伴う人には、人格や運動機能に障害が出るが、早期には障害されにくいともいわれている。

逆に言えば、認知症の人が徘徊を起こすのは、神経学的には四肢には問題がなく運動機能が残っているからなのだ。

これだけ見ても認知症は体の病というより心の病が優先されることが分かる。

また、あまり知られていない徘徊に、認知症の人が外出をすると街並みは覚えているのだが道に迷ったりする道順障害や、まったく逆に自宅は認識しているのだが家路にたどり着けない街並障害など地理的記憶の障害は、全く違う機能からなる記憶障害だが、人の顔を見ても誰だか分からない相貌失認と並行して起こる特徴がある。

そのため徘徊中に家族や介護者が声を掛けても無視して歩き続けてしまうのはこのためなのだ。

場所や空間の見当識障害が早い時期から起こっていることが原因だが、アルツハイマー病(Alzheimer’s Disease : AD)などは長期間認められるため周囲からなかなか理解されないのが徘徊だ。

しかし、徘徊とは介護者側から見た場合の現象で、本人からいえばその根底には記憶障害から認識出来ない状態や時間や場所などの見当識障害、やってはいけないなどの行動を抑制する能力の低下や行動への強迫観念などが引金になって徘徊が始まると考えられている。 

つまり、それらの実態をよく知れば具体的で科学的な徘徊への対策が可能になる。

認知症は加齢に従って発症頻度が増えてくる病気だから、誰もが歳をとればとるほど罹る可能性がある。

だからこそ、自分で気づくこと、そのことを意識すること,身近な人に打明けることから始めることは、認知症予防につながるだけでなく、認知症になったとしてもあなたの行動や言動を理解してもらえる大切な情報になる。

国際アルツハイマー病協会(Alzheimer’s Disease International:ADI)は、「世界アルツハイマー・デー」で、世界の認知症人口は、2015年で4,680万人と推測していたが、現在では3.2秒に1人が発症している状態であり、このままだと2030年までに7,470万人に増加し、2050年までに1億3,150万人に増加すると予測しているのです。これは大変な数です。

私達にとっては年をとるにつれ近づいてくる認知症は恐ろしい病でもある。

症状である困惑した表情や手の震え、絶えず訪れる不安や頻回に襲い来る極度な健忘状態…増える患者数に私たちは恐怖感を抱かずにはいられない。

アルツハイマー病のような重篤な疾患への遺伝的素因に直面している多くの人々は、自分自身に「私には起こり得ない」と自己暗示的に言い聞かせては否定する傾向にある。

予防策をとっている人々は、自分はアルツハイマー病にはならないはずだ・・・と、信じている。しかしながら、今のところアルツハイマー病に狙われたら逃げる術は無いのだ。

だから、自分が認知症になる準備を今からしておくことだ。

たとえば、好きな食物、苦手な食物、得意なこと、苦手なこと、趣味、関心、大切な思い出、不安や心配事、人にしてほしいことやしてほしくないこと、介護への要望などを書き残しておくだけで、将来、自分が認知症になったとしても自身を理解して適切にケアしてもらえるのだ。

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