Science Park 一回限りの現象を扱う科学 第1回

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一回限りの現象を扱う科学 第1

~人類のイマジネーションが生んだ世界~

私が師事する岩田誠(東京女子医科大学名誉教授)先生は、認知症の脳科学の著書の中で、一般的な科学の研究の多くは、互に似た条件のもとでは、互によく似た現象や結果が起こると考えてよいのだが、人間の脳とか精神とかが微妙に関与する現象に対しては、それと違う着眼が必要だといっています。

そして、自然科学の中でも宇宙起源論や生命起源論は、それと似た考え方によるもので、何か基準になる場合との比較は問題にならないとし、特定の個人の行動の歩みも、どちらもそれ自体はただ一回限りの現象で、反復可能なことを証明できる現象ではなく、一例一例の現象を丹念に観察して分析するというやり方も、科学の研究には必要だと…

そんなことから、今回からシリーズで、様々な角度から一回限りの現象を科学してみました。

今や私達の世界は、構築されたネットワーク網が繁栄をもたらし、世界を複雑に結びつけています。

まず、私たちのイマジネーション(想像力)は、いかにこの世界を創ったのでしょうか…未来のために、創造力をどう使うのか、人類の歩みを見ながら一緒に考えていきましょう。

1回目は、人類のイマジネーションが生んだ世界を見てみましょう。

人類の旅は人口が約500万にも満たない頃に始まりました。

地中海東側の肥沃な三日月地帯、時は紀元前1万年前の事です。

ここは人類に残る出来事があった場所の一つです。

この肥えた大地に初めて、私たちの先祖は、種をまいたのです。この些細に思える行動が人類の進む道を大きく変えたとは、誰も分からなかったでしょう。

種をまくという行為によって、食料確保の方法が一変しました。

それまでの人類は、狩猟採集民でしたが、この時から、農民としての歴史が始まったのです。

しかし、中東以外にも作物の栽培を始めた地域は世界中に存在します。

メキシコでは、9千年前にトウモロコシが栽培され、ペルーでは8千年前にジャガイモが収穫されました。

そして、私たちが主食としているコメは、中国の珠江で、7千年前に初めて植えられたのでした。

その後、紀元前3千年になると小麦がヨーロッパに広がりました。

今でも農業は、唯一最大の人類の活動です。

人類の残して来た巨大な痕跡は、宇宙からも確認できるのです。

私達の地球の陸地の10%を農地に使用し、20%を畜産に使用しています。

ちなみに、世界最大の畜産農場はアメリカにあり、その面積はイスラエルよりも広いのです。

小麦の栽培面積は、グリーンランドと同等です。

陸地の50%が食糧生産に使われており、その面積は日々、増加しています。

そして、農業の一番の功績は、私達の生活様式を一変させた事です。私達は農業の発展によって、飢える心配がなくなり、時間に余裕が出来たのです。私達は、何万年もの間、小さな集団を作り食料を求めて放浪していました。

だが農業が定住を可能にしたのです。

食料を探し回る必要がなくなった事で、定住が可能になったのです。私達は定住化によりある人間的特徴を強めました。

協力です。

共に働く事で、アイデアや技術を共有したのです。その結果、私達の文明が開花したのです。

大工や織工、それに鍛治工など、社会の中で専門的な役割を担う人が現れ始めたのです。農業を基盤とした文明が栄えたわけです。

人類は新たな技術を得て、初の文明を築いたのですが、初めて農業が行われた土地に、その奇跡は今も残っています。

農業から興こった最古の都市が中東の死海傍にあるエリコやアルビー、地中海傍のビブロスなのです。

人類は、最古の都市に1万千年も住んでいます。

これらが現代世界のルーツなのです。

種を植えるという行動が、人類のあり方を変えました。

農業によって定住が可能になり、その結果、都市が発展して今日の社会が出来たのです。

都市の発展の様子は、宇宙から見るとよくわかります。

都市が集まって大都市を形成し、そこへ5千万人以上が集まる。宇宙から見た地球の写真は、アパラチア山脈と海岸に挟まれた大都市や三日月のような日本、カナダの氷原までもが一度に見えます。

地球を1周すると人類の影響力を感じます。

人類は世界中にいるのです。人口が100万を超える都市は、現在の世界に500以上あります。

こうした近代都市の急成長は、250年前に始まったばかりです。歴史で語られるのは、一握りの大都市だけです。

大半の人は、地方で農業をしていました。

相互に結びついた世界は、数千年かけて築かれました。何千年もの間、都市の人口は停滞していました。

しかし、何が巨大都市の成長を促したのか、その答えは、250年前、一人の男の発明にあったのではないでしょうか。

彼のアイデアが世界に革新をもたらし、大量の人口が都市に流入することになったのです。

1765年イギリスの大半が農民だった時代に、ジェームズ・ワットがある発明品の改良に着手しました。

蒸気機関です。

旧式の蒸気機関は、用途が限られていました。そこで、ワットは改良を加え、性能を向上させたのです。

蒸気が持つ力を解き放った機関を完成させたのです。

過去に、人類史上では3回の飛躍がありました。

火の扱い方の習得、農業の習得、そして蒸気を動力として利用する方法の習得です。

ワットの発明は認められ、新たな革新の到来が突如として告げられました。炭鉱では、1台の蒸気式の送水ポンプが、500頭の馬に取って代わったのです。

今では、私達は手だけでなく機械でも製品を造れるようになりました。

肉体労働から人類は解放され、機械に頼れる日がようやく訪れたのです。

蒸気動力が火付け役となり人類は大変動期を迎えました。

最も影響を受けた都市が、イギリスのマンチェスターです。活気のなかった街は、すぐに蒸気機関の恩恵を受けました。工場での仕事を得ようと何万という人が集まりました。

マンチェスターの人口は、わずか50年の間に2万人から16万人に急激に増えることとなりました。

その結果、世界初の工業都市に成長したのです。都市というのは、いくらでも成長できます。鉄道が運んでくる食料や石炭や人間が、大都市を構成する重要な要素になるのです。

それは、人類を本質的に変える出来事で世界を開いたのです。

産業革命は今までになく人々を結びつけました。人類史上、初めて世界中で都市の人口が大幅に増えたのです。数十年で数百万に達しました。

今日の世界を作る大きな第一歩です。

インドや中国や東京など、工業都市の人口は10年間で75万人も増加しました。

都市は爆発的に成長して全てを覆すのです。現代社会でも起こる大量の人口流入を産業革命は引き起こしました。

1800年の都市の人口は、全人口の3%程度でした。

しかし、産業革命を経た直後、急増したのです。

都市の時代が到来したのです。

世界中では週に120万人が都市を往来しています。こうした人の移動がある変化を引き起こしたのです。

2006年、人類の歴史において、2つめの特筆すべきことが起こりました。

都市の人口が地方の人口を初めて上回ったのです。産業革命は私達を真の都市社会へと導きました。

しかし、この社会の維持には、さらなる革命が必要になったのです。

偉大な技術ネットワークを生み出す革新、全人類をつなげてくれる革新…

次回は、科学技術によって変わりつつある世界を見てみましょう。

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