2011年 MDS学会 「認知症ケアの質とKCISの可能性」

認知症ケアの質を高めるには

認知症ケアにおける質を確保するためには、客観性、妥当性、信頼性、そして実現可能性などの側面を網羅した包括的なアセスメントが必要である。しかし現場では、5年以上の介護経験者の多くがケアマネージャーを取得するようになると、現場での知識・技術に基づく「気づき」の継承は極めて難しくなったという意見も多くある。また、医療的な知識や視点に精通していると自信を持って言える介護職はどの位いるだろうか。

このような現状は、包括的なアセスメントを可能にするための情報を集まり難くし、ケアプランの作成を担当するCMを悩ませている。情報を漏れなく収集・把握しようとするとかなりの時間を必要とし、さらにカンファレンスでは、情報の伝達とその共有に時間がとられ、本来の目的である課題(ニーズ)の明確化と解決に向けたサービス内容の検討には至らないこともある。決められた時間内でカンフレンスを終了することの困難さを苦々しく思ったことは少なくない。

そこでアセスメントを、包括的なアセスメントとケアマネジメントサイクル(アセスメント→判断→ケアプラン作成→ケア提供→評価)を現場での介護負担感を軽減し、無理なく実現することを課題とし、ITを活用したKyomation Care InterfaceSystem:KCISを開発した。

これは、まず情報として、自覚症状が伴わない方の客観的な情報収集のために、次のような観察項目を追加している。①SOAP方式の記録(言ったこと、観察した事、感想、行ったこと)の記録。これはCaps/Rapsに判断根拠を明らかにできる。②態度・表情・服装・行動・言語の理解力・構音障害・記憶障害・見当識障害・思考・計算・判断・感情・意欲の様子観察13項目③精神機能評価法MENFIS(認知機能・動機付け機能・感情機能の評価)④睡眠排泄パターン(排泄と睡眠によるパターンをグラフ化して生活リズムを明らかにする)⑤知的機能検査である。KCISは、これらの情報をMDSのアセスメント項目に反映できるようなシステムとした。この仕組みを活用することでケアマネージャーは、トリガーされた問題領域と、画像診断の結果や各療法士などの情報も交え、Caps/Raps、ガイドラインを参考に暫定プランが作成できる。これをNET上のカンファレンスにより、その人の嗜好や人生の背景、脳機能の状態などから包括的に課題抽出して、解決に向けた対応や生活支援内容を細かくケアプランに言語化した。また、この取り組みでは、ケアプランの遂行率を高めるタイムマネジメントを取り入れ、ケアマネジメントサイクルを廻すことを意識した。

KCISを活用して良いケアマネージメントを構築するためには、システムに頼るのではなく、介護者としての意識を高め、知識・技術が習得できる教育体系と現場でのOJT化が必要だと考えている。

このため実践では、年間48時間の勉強会とOJT,OFF-JTにより気づきを高め、専門的な意識を育てるようにした。また、介護、医療、ケアマネージャー等が、共通情報・役割分担の明確化を進め、チームアプローチを促進するようにした。

認知症の方との接し方は、決して一方向ではなく、常に相互作用と言う双方向の関わりであると言う視点を再認識できるように介護者が相互作用のずれに気づくことができるようMDSで再確認を取っている。

羽田野は、Kyomation careにおいて認知症に至るプロセスは、時間、空間、目的、関係などの「繋がりとその意味」が障害によって寸断されたり繋がらなくなる病態イメージと考えることで様子観察の13項目から、その病態イメージを導き出すことによって、認知症の方の的確に表現できない言動が理解しやすくなるコミュニケーションメゾッドとして開発している。また、認知症の方に、①持てる 力の発見②その力を十分に活用することを提示する。これらの力を活かせるのが、ケアスタッフの感性と知性、創造性に委ねられており、そのための教育システムとしてもKyomation Careは存在していると述べている。

この実践で私達が2008年に行った(対象はアルツハイマー型認知症でBPSDが顕著な状態によりGHに入居した32名の方の入居経過における追跡調査)では、介護者がケア情報の根拠に基づき主体的に関わっていった結果、BPSDの単純総計でも、約7割のBPSDが3カ月以内に消失した。本調査から適切なアセスメントとケアプランに基づく実践を行うこと、各専門職との十分な連携がなされることにより、実践者が安心して認知症の方と関わることができ、この環境が認知症の方の生活の質に影響を及ぼすと考えられる点である。

Kyomation Care(KC)は、認知症ケア研究者の羽田野政治氏により、各分野の研究成果を認知症介護の実践に仮説思考的に構築し、有用性を検証しながら体系化してきた理論である。

このKC実践は、2002年 国際在宅看護介護学会(カナダ)、2003年 在宅看護・介護国際シンポジューム(スペイン)にて報告され、認知症グループホーム8ユニットにおいて、介護職員の教育とITシステムの開発と同時に進めてきた。2008年には、韓国地域社会学会にてPractices Prize賞を受賞している。

近年では、行動観察と脳皮質の委縮について2009年 日本老年精神医学会にて KBS(キョーメーションバランスシート)を報告した。介護分野では、2010年 日本認知症ケア学会にて石崎賞を受賞、2010年には Human Brain Mapping学会(スペイン・バルセロナ)にて、適切なケアがBPSDを抑制できることを報告した。

現在、2012年4月を目標に一般公開に向けて、協力法人のモニタリング調査を予定している。

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