2008年 第16回 日本介護福祉学会「認知症対応型共同生活介護事業におけるKyomation Trainingの効果検証-自己覚知の影響-」

認知症対応型共同生活介護事業におけるKyomation Trainingの効果検証
-自己覚知の影響-

2008年度 第16回 日本介護福祉学会大会

井戸和宏、羽田野政治ら

【研究目的】

不安や不快感により重症化する特性のある認知症高齢者のケアでは、身体状態への対応と同時に、気持ちに寄り添うことが重要であり、ケアワーカーには他者への深い理解と共感が求められる。他者理解を促すきっかけとして自己覚知がある。自己覚知とは、無意識的に体験している自分の態度・動機・反応及び防衛機制についての洞察であり、自らの感情を客観視し、利用者や同僚の多様な感情の在り様を受容する素地となる。Kyomation Careでは、自己覚知は利用者のBPSDなどの困難な事態の受け止め方・対処に幅をもたらし、ストレスを軽減すると考える。本研究では研修効果の検討を通し、自己覚知のワーク・モティベーションとストレスへの影響を検証する。

【研究方法】

対象は横浜市内の認知症対応型共同生活介護事業所(1法人3施設8ユニット)の介護職員である。入職時に自己覚知を目標の一つとし、1泊2日を基本とした宿泊研修(Kyomation Training)を実施している。研修では自己覚知・共感的理解・無条件の肯定的尊重を体感的に理解することを目指し、自己分析・相互評価などを交えて行う。効果検証には職員対象の縦断的質問紙調査(過去13回実施)を使用した。尺度は、身体・心理・精神的疲弊感:Pines Burnout Measure(BM)日本語版(稲岡, 1995)、ストレッサー:先行研究を元に作成、ワーク・モティベーション:HRMチェックリスト(日本労働研究機構,2003)の組織コミットメントとキャリアコミットメントの合成変数を使用した。最終回の調査でKyomation Trainingへの評価と自己覚知の程度を(1.NO-2.どちらかというとNO-3.どちらともいえない-4.どちらかというとYES-5.YES)の5件法で尋ねた。倫理的配慮のため、質問紙は無記名とし、封入してもらった。時系列の分析の際は本人記述のIDを照合に使用した。調査期間は2003年8月~2008年3月。最初の10回を3か月毎に、最後の3回を概ね10か月毎に実施した。

【結果と考察】

研修への評価は、「自己覚知の経験」で平均4.02(SD=.88, n=64)、「内面変化」では平均3.92(SD=1.02, n=64)、「心の持ちようの変化」では平均4.04(SD=.87, n=64)、「Kyomation Trainingの必要度」では平均4.45(SD=.73, n=64)であった。「1.NO-2.どちらかというとNO」と回答した者はいずれも3.1%以下であり研修の目的はほぼ達成された。

次に宿泊研修での自己覚知の長期的効果を検証した。縦断的質問紙調査に第10回目(2005年12月)以前から最終の第13回目まで参加し、対象者にとっての初回と、第11回(2006年10月)、第13回(2008年3月)のサーベイを提出した21名を対象とした。宿泊研修における「自己覚知の経験」への回答により、対象者を「4.どちらかというとYES、5.YES」の①自己覚知群とそれ以外の②なし群の2群にわけ、ワーク・モティベーション・BM・ストレッサーについてウィルコクスンの順位和検定を実施した。その結果、ワーク・モティベーションでは、初回と最終の自己覚知群で有意に高かった(①自己覚知群:初回4.0, 第11回3.6, 最終回3.6、 ②なし群:3.0, 3.3, 3.0)。身体・心理・精神的疲弊は自己覚知群の方が低かったが(①2.7, 3.1 ,2.8 ②3.4, 3.7,3.8)有意差はなかった。ストレッサーは全ての項目、時期において自己覚知群が低かった。有意差があったのは利用者(初回、11回)、職場の人間関係(初回、11回、最終回)、サポート欠如(初回、最終回)、役割曖昧(初回)、役割葛藤(初回、最終回)ストレッサーであった。ストレッサーの低さはストレス要因の排除と、事態への前向きな認知が関連する。自己覚知は利用者及び職場の同僚など、人間関係に影響を及ぼしていた。本調査には退職者が含まれないため、調査の継続と退職者を含めた効果検証が課題である。

【参考文献】

  • 1) 『組織の診断と活性化のための基盤尺度の研究開発―HRMチェックリストの開発と利用・活用―』 日本労働研究機構、(2003年)

『看護管理シリーズ2 人間関係論』 日本看護協会出版会、(1995年)

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