2008年 第16回 日本介護福祉学会「認知症高齢者における薬物療法の代替・補完的手法の自律神経安定への有効性-タクティールケアとリフレクソロジーを用いて-」

認知症高齢者における薬物療法の代替・補完的手法の自律神経安定への有効性

-タクティールケアとリフレクソロジーを用いて-

2008年 第16回 日本介護福祉学会大会
梶原千津子、宋恩姫、羽田野政治ら

【研究目的】

認知症におけるBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)行動心理障害は、認知機能障害に伴い判断が出来なくなったり、言語力の低下に伴いコミュニケーションが充分に出来なくなる等の心理社会的要因に起因するものや、神経伝達物質であるアセチルコリンやセロトニンの減少に伴い攻撃や焦燥などの感情の障害が見られるなどの、身体的あるいは脳器質的な要因が関与するとされるものがある。また、神経伝達物質であるアセチルコリンやセロトニンの減少は、BPSDの生起だけでなく副交感神経にも深く関連しており自律神経障害を引き起こすことになる。

自律神経には、交感神経と副交感神経が存在し、交感神経は主に活動する時に働き、緊張状態をつくって精神と身体活動を活発にさせる。副交感神経は、睡眠やリラックスした状態のときに働く。認知症はこの2つの神経がお互いにバランスをとりあうことができず、BPSDの発症を起こす原因の1つである。そこで自律神経を安定させることでBPSDの緩和を試みるべく、認知症高齢者に薬物療法の代替・補完的手法であるタクティールケアとリフレクソロジーを用いて、その有効性を検証した。

【研究方法】

対象は、認知症高齢者共同生活介護で生活する高齢者2名(A氏、82歳、女性(AD)、B氏、75歳、女性(AD))。介入期間は2008年7月31日~8月4日、8月14日~18日の各5日間2クールである。1クール目にA氏リフレクソロジー、B氏タクティールケアを実施、2クール目は実施内容を入れ替えた。時間は1日20分間、育成機関の研修を受けたケアワーカー2名が実施した。介入期間全日の実施前・中・後に心電図を計測、副交感神経機能の変動(CV-RR)及び心拍数を比較した。CV-RRは%数で数値が大きい程機能障害の程度が低い。心拍数は低い方が落ち着いている。また、実施中の様子をMENFISを用いて行動観察した。

【研究結果】

A氏:タクティールケア実施期間中の心拍数は、1日目のみ実施後が一番多く実施中が最も少なかった。2日目以降は、心拍が多い方から実施前、後、中の順であった。CV-RRはばらつきがあった。実施前を基準とし実施中のCV-RRの方が2日目を除いて低く、実施後のCV-RRの方が4日目を除いて低かった。MENFISでは3日目に動機づけ機能障害得点が若干低くなった以外安定していた。リフレクソロジー実施期間の心拍数は、4日目以外、多い方から実施前、後、中の順であった。4日目は実施後が一番少なかった。CV-RRは実施前を基準とすると、最初の3日では実施中・後に係数が高くなったが、4日目では実施中の係数が低くなり、5日目は実施前より実施中、実施中より実施後に係数が低下した。MENFISでは3日目に認知機能障害得点が若干低下、5日目に動機付け機能障害、感情機能障害得点が若干上がった以外安定していた。

B氏:タクティールケア実施期間中の心拍数は、常に実施前より実施中・後の方が少なかった。CV-RR は実施2日目を除き、実施前より実施中・後に高かった。4日目は実施前後のCV-RRの増加が6.08と最も大きかった。MENFISでは2日目の感情機能障害得点が最も高かった。リフレクソロジー実施期間では、実施中の心拍数は常に実施前・後より少なかった。実施後の心拍数は、最初3日間では実施中・前よりも高く、4日目は実施中より高いが実施前よりは低くなり、5日目には最も低くなった。CV-RRは、施術1,2日目では実施前より実施中が低く、実施後に回復した。3日目は実施前・中・後で殆ど変化がなかった。4、5日目では係数が低い方から実施前、中、後の順に高くなった。MENFISでは2日目に障害得点が低く、3,4日目は高かった。

A氏、B氏はいずれの実施中にも心拍数は低下しリラックス効果が得られた。今後、実施日数を増やし検証していく予定である。

【参考文献】

1)『老人性痴呆疾患の治療・介護マニュアル-痴呆とその随伴症状への対応-』 株式会社ワールドプランニング、(2004年)

2)『目でみるからだのメカニズム』 医学書院、(1994年)

3)『自律神経機能検査』 文光堂、(1992年)

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