(1月)今月の認知症予報

あけましておめでとうございます。

私達の研究の一つに、単身・重度であっても在宅を中心とする住み慣れた地域で、認知症の人が生活を継続する事が出来る可能性を調査するシームレスケア研究があります。

そんな研究の中から、気象とBPSD(行動・心理症状)の関係について調査した結果を「今月の認知症予報」と題して報告しています。

昔から、季節の変わり目に持病が悪化する。

気温が下がると古傷が痛む、台風が近づくと喘息が悪化するなどと言われています。

これらの事柄は正しいものもあれば、間違っている場合もあります。

季節の変わり目には気温変化などによって体調を崩し肩こりや体が思うように動かないことから自閉的になり抑うつからBPSDを発症する方が多くみられます。とてもつらいことだと思います。

ただ、検査で異常がないことから、現在の症状が、内臓や脳の病気によるものではないという点です。原因不明の肩こりや嘔吐といった症状の陰には、体を働かせる自律神経のバランスが乱れていることが挙げられます。いわゆる自律神経失調症です。

認知症の人にはたいがいにしてこの自律神経失調症の症状がみられるのですが、特に季節の変わり目に体の一部が痛くなったり、精神的に落ち込んで抑うつ気分になったり、だるかったり、体が冷えたりと、人によって様々ですが、症状が重なって現れたり、出たり消えたりする認知の変動も多く見られるのもこの時期なのです。

施設や室内の気温変化に十分気をつけて、体を冷やさないようお風呂(180ℓの個浴槽)に、重層(大さじ2)クエン酸(大さじ1)粗塩(大さじ2)を、湯船につかる直前にお湯に混ぜると炭酸ガスが発生し炭酸泉になります。この炭酸泉に1015分つかるだけでも効果的です。市販の炭酸泉浴剤(入浴剤)を使えば、タブレットなので計量の手間もかかりません。
ただし、大量に炭酸ガスを発生させると酸欠になる恐れがあるので、分量には充分注意を払ってください。

また、喘息の発作と台風の接近はあまり関係がなく、喘息の発作はむしろ台風が通過した後に、高気圧が張り出してきたときのほうが多くなっているという報告があるくらいです。

喘息には実に様々な症状があって、認知症の人の喘息は「ゼーゼー型」「ヒューヒュー型」の喘鳴で、発作性の呼吸困難な息苦しさがみられることが多いのです。特にこの時期に見られるブロンコレアという症状は、咳き込みと共に痰も多く出ます。
その他にCOPD(肺気腫)は肺の病気で、喘息と鑑別を要します。この肺気腫は安静にしていれば大きな問題はないと言われています。

夜間に喘息の様な症状もなく歩いた時のみに息切れが起こりやすくなるので、歩行を始め、軽い運動や散歩、買い物時には注意が必要です。


どちらにしても、喘息の有無に関しては医師の診断や定期的な検査を受けておくと、介護を行う上で安心して対応できます。

喘息の症状の悪化の要因は様々ですが、季節性のものとしては、台風の接近よりも通過した後の方が、患者さんが約2倍に増加したなどの報告から、低気圧は来る前より過ぎた後の方が、影響が出るようです。

むしろ、春先の乾燥時期に風邪を引くと必ずと言っていいほど喘息の症状は悪化します。それは風邪のウイルスから出るサイトカイン、ケモカインなどの物質が、気道のアレルギー性炎症を活性化して悪化させるからです。喘息が起こったら、まずは医師の診断を受けることをお勧めします。介護施設では、富士山が良く見える日は風邪に注意だとも言われているくらいです。


一方、リウマチや関節痛は、低気圧や前線が近づくと悪化することが確かめられています。

このように病気の中には、気象の変化と大きく関係するものや、気象条件が原因でウイルスや花粉が増加するなど間接的に影響するものがあります。

ドイツでは古くから気象の変化と病気の関係が研究され、新聞の天気欄やテレビの天気予報の中で、その日の天気から、ある特定の病気に対する注意報が放送されています。
日本でも最近は病気と気象の関係に関する研究が進み、試験的ですが病気に対する予報の試みが始められています。
日本の医療は今まで、病気になったら適切な治療を施すということが主流でした。
しかし、高齢者の急増、それに伴う医療費の増加などから病気を予防する予防医学が注目を集めています。日本で病気を予防するための情報が初めて出されたのは、春先のスギ花粉症に対する花粉情報で1987年のことでした。

次いで紫外線に対する情報やインフルエンザに関する情報が出されるようになり、2002年には熱中症の予防情報も出されるようになりました。

実はこれらの情報はすべて日本気象協会の村山貢司さんによって開発されたもので、花粉情報や紫外線情報は今やテレビやラジオでもおなじみになっています。

国の機関でもインフルエンザの流行に関する情報がインターネットで流されるようになり、2003年の春からは環境省が花粉をリアルタイムに計測し、その情報を流すことにもなっています。

国立感染症研究所サイトはこちら

http://www.nih.go.jp/disease/influenza/

 

環境省サイトはこちら

www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/

このような情報を、ただ受け取って利用するだけでなく、重度の要介護者や認知症の人を介護する側で、積極的に病気に対する対策を立てれば、さらに情報が上手に活用できるはずです。


認知症の人だけでなく介護者本人も、自分の病気を知り、どんな条件の時に発作が起きたり、痛みがひどくなるかを知ることが出来、予防することも出来るからです。

たとえばスギ花粉症の場合には、ごく少量の花粉が飛んだだけで発症する人と、ある程度の花粉が飛ばないと発症しない人がいます。
当然少量の花粉で発症する人は早めに予防策をとったり、医師の治療を受ける必要があります。
スギ花粉症はスギの花粉を吸い込むことによって発症するわけですから、花粉が飛び始める前から予防策をとることが一番有効なのです。

その他の病気でも日記や手帳に発作が起きた日、あるいは傷みのひどかった日を記入しておいて、認知症の人や自分がどんな気象条件の時に発作が起きやすいかを知ることが大切です。

湿度の低いに日に喘息の発作が起きやすい場合には、マスクなどをして喉や鼻、気管の乾燥を防ぐことによって発作を防止することが可能になります。


このように認知症の人や介護者が自分自身で病気を予防するなどの対策をして病気を防ぐ、あるいは症状を軽くすることをセルフケアと言っています。


これに対して医師の治療をメディカルケアと呼びます。これまでの日本の医療は、ほとんどがメディカルケアに頼っていましたが、病気への対策はまず病気を防ぐセルフケアを行い、症状が出た場合でもメディカルケアとセルフケアの二本立てでいけば、より効果的になるはずです。


日本人の平均寿命は、
1900年代には男性42歳、女性43歳でしたが、この状態が大正末期の1925年頃まで続きました。それから100年経った今、医療技術が進歩し、新しい薬が次々に開発される中で平均寿命は男性、女性ともに40歳以上も伸びています。

しかし、高齢化が進めば身体の機能が低下し、病気になりやすくなることは変わりありません。さらに地球の温暖化や都市のヒートアイランド現象、大気汚染など私たちが暮らす環境も急激に変化しています。現代は今まで以上に病気になりやすい時代といってもよいでしょう。そんな中で自分自身が病気を予防し、健康で快適な生活を送ることが出来たら一番幸せだと思います。


昔から「病は気から」と言われています。
この言葉の意味は病気になるか、ならないかは人間の気の持ち方次第で、弱気の時には病気になりやすい、症状が悪化しやすくなるということですが、もしかしたら気象の気かも知れません。

気象から悪化する認知症の症状や病気の原因を知り、正しい対処の方法を知っていれば薬に頼るだけでなく、より積極的に症状を予防し、病気になった場合でも軽く済ませることが出来るはずです。

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