脳と心~介護者にとって負担となる種々の症状(前半)行動・心理症状BPSD~

20170307進化は、遺伝子の変化で生じる。もちろん脳の進化も遺伝子によるものです。

脳は進化するにつれ高度な機能や心も進化してきたわけですが、その過程で私たちが生きていくために必要な五感から入ってくる情報を処理する能力は特別に進化したといえるのではないでしょうか。

つまり、ヒトは進化するにつれて処理する情報が増し、必然的に、対応する脳の部分が巨大化してきたわけで、特に言語に関する脳は凄まじい進化を遂げているし、脳幹部が垂直に下を向いているのも先祖が直立二足歩行を始めたからだと考えられています。

また、大脳の中では進化と共に様々な機能が分かれ他の動物には無い予測や判断と言った高度な機能、いわゆる「知性」を生みだしていったのです。

 

20170308知性とは、大脳の6つの連合野で五感や運動の情報を処理することを指しています。

おもに、前頭連合野は注意、思考、意欲、情動そして短期記憶に関係し、頭頂連合野では触覚や視覚の情報と手足の運動を結びつけて制御しています。

後頭連合野は視覚の情報を分析しているし、側頭連合野は長期記憶に関係するだけでなく、感覚性言語野があり聴覚の情報も分析して処理しているのです。

そして、運動連合野は運動プログラムを作り運動野に伝える働きをしています。また、体性連合野は体が受ける複雑で機械的な刺激を処理しているのです。

また、知性を補う性格に関しては、素質は遺伝的に、形成は環境による影響が大きいといわれているのです。

そして、この性格こそが認知症ケアにおける最大の難問となっているのです。

このように連合野で機能の低下や障害が起きると進行性の中核症状だけでなく随伴して周囲の状況や環境が解釈できなくなるなどの混乱をきたしてきます。

この混乱を、認知症の行動・心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:BPSD)と呼んでいる。

20170309BPSDには多数の原因があり、内因的なものには遺伝的なものとの関連があり、外因的なものには後天的な環境の変化や介護者の要因が重大な関わりを持っているといわれています。

今回は前後半にわたってBPSDについてお話しします。

認知症の介護を行っていくためには、認知症の人が示す様々な症状を理解しなければなりません。

その実態を知らない限り、ただただ理解不能な得体のしれない現象としか見えないからです。

実は、1980年代は、このような高度な物忘れや不可解な混乱状態などの症状を問題行動と呼んでいたのですが、その後、1999年フィンケル博士とバーンス博士らが中心になって、16カ国の専門家60名のコンセンサスグループによって問題行動という用語の代わりに認知症の行動・心理症状BPSDと呼び、認知症の人に頻繁に見られる知覚、思考内容、気分または行動の障害による症状と定義されたのです。

 

20170310行動症状(黒点)とは、通常は認知症の人の観察によって明らかにされる攻撃的行動、叫声、不穏、焦燥、徘徊、文化的に不釣り合いな行動、性的脱抑制、収集癖、ののしり、つきまといなどであり、心理症状(赤点)とは、本人や家族との面接によって明らかにされる不安、抑うつ、幻覚、妄想などである。このような症状は認知症の進行過程の一部として避けられないため、本人だけでなく家族や介護者のストレスや介護費用の増大を伴うなど深刻な問題をもたらしているのです。

BPSDの原因解明を考えてみると、4つの要因が組み合わされていることに気づかされます。それは、外界の刺激を情報に変換する受容体と呼ばれるレセプターが遺伝的に障害される遺伝的要因、神経伝達物質の低下や現象による要因、性格やストレスなど心理学的要因、そして、環境や人間関係などの社会的要因です。

20170311しかし、それらの要因が関わる程度は、個々の症状ごとに異なり大雑把な関係しか見いだせておらず、明確な結論を得るには至っていないのです。

つまり、残念ながら現時点では、BPSDの対応は対症療法にゆだねられているのです。

なぜならば、認知症に対する薬物の果たす役割はそれほど目覚ましいものではないため、薬物を用いない対症療法ともいえる介護の役割が極めて大きくなるわけなのです。

 

 

20170312まず、4つの要因のうち遺伝的要因との関連を見てみると、アルツハイマー型認知症における精神病症状の出現などは、精神病の家族との関連性が高いことが分かっていますし、ドパミン受容体と精神病との関連性も認められています。

1953年ワトソン博士とクリック博士によって遺伝子のもとになるDNAモデルが提唱され、2003年にはDNAの配列であるゲノムの構造が解明されたことは認知症の本格的なゲノム研究に突入する端緒となったのです。

20170313そして、その後のゲノム研究によって人の性格は親に似ており、行動や能力が遺伝の影響を受けるなど、行動や心理には遺伝的要因が多く関与していることがわかってきたのです。

例えば、神経伝達物質セロトニンを再取り込みするセロトニントランスポーター遺伝子は統合失調症のリスクを増大させているし、「やる気」は、脳内で分泌されるドパミンによって支配されており、そのドパミンの分泌には特定の遺伝子がかかわっているのです。

 

20170314トリプトファン遺伝子は攻撃性に、ドパミンD1遺伝子は焦燥感にドパミントランスポータ遺伝子は常軌を逸した運動行動および易刺激性に関連していることが見出されています。また、妄想や攻撃性はapoE4遺伝子が関連しているなど遺伝子的異常と個々のBPSDの症状との相関に関する知識を高めることは、BPSDの対症療法やケアの工夫には有用と言えるでしょう。

キョウメーションケアでは、BPSDの出現にはセロトニンを多く分泌する遺伝子を持つと「他人との結びつきを求め」「幸福感」を感じやすく多幸になる傾向がみられ、一方、セロトニンが減ると「不安」になり「うつ病」の原因になるなど、セロトニンの重要性が際立っていると考えています。BPSDとは、本人の心に深く刻まれた過去の経験の記憶に支配された行動なのかもしれませんね。

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