(2015年12月)今月の認知症予報★豪雨の日にBPSD発症率が増える訳!★

私達の研究の一つに、単身・重度であっても在宅を中心とする住み慣れた地域で、認知症の方が生活を継続する事が出来る可能性を調査するシームレスケア研究があります。
そんな研究の中から、天気とBPSDの関係について調査した結果を「今日の認知症予報」と題してご報告します。

冷たい雨は好きですか?それとも嫌いですか?皆さんもご存じの通り近年は、かつてない災害に見舞われている日本、しかも異常気象は未だに続いていると言います。
記憶に新しいところでも、観測史上初めてという集中豪雨で、土砂崩れや橋の決壊などにより多くの方が亡くなりました。
原因は、地球温暖化による夏の海水温の上昇と、気圧配置の変化に有るそうですが、コンピュータのシミュレーションによると、この先も台風や集中豪雨はさらに深刻化する事を示唆しているようです。
実は、BPSDの発症率も地球温暖化による豪雨と深い関係が有ると聞くと驚かれるかもしれませんね。実際に一つの行為を続けられず突然その場から立ち去ってしまう「立ち去り行動」は晴れている日よりも雨の日の方が4倍近く発症していますし、豪雨のときには身体症状の悪化に随伴して、更にパーキンソン症状や幻視などは顕著に現れてきます。

この時期は、朝に比べて昼間の気温が上がらないため、冷たい北東の風が吹き込んで、気温はどんどん冷え込んで来ます。また、どんよりと曇って豪雨になると、前頭側頭型認知症(ピック病)の方は気のおもむくまま、周囲を気にしないといった「わが道を行く行動」や「立ち去り行動」が多く出現する傾向にあるのです。
レビー小体型認知症の方では、歯車現象の筋強剛や静止時振戦が増えるなどのパーキンソン症状や幻視や錯視の訴えも顕著になるようです。

これは、仮設思考ですが、人間は明け方の低い気温から昼頃の高い気温へと気温変化のリズムに身体の生理を合わせているわけです。しかし、気圧配置の変化による豪雨で昼間の気温が下がってしまうとそのリズムが崩れ、落ち着きがなくなり、注意散漫になることで、BPSDが急激に増える傾向が有るのではないでしょうか。特に朝の豪雨は急激に昼頃から気温が低下するので、BPSDの発症には注意が必要になります。
また、貧血や運動麻痺など老年症候群の身体症状のある方は喘息の様な「咳き込み発作」や誤嚥を起こす傾向にも有るようです。

話は天気に戻しますが、天気予報で今年は「異常気象」と言う言葉をよく耳にしますが、この「異常」とか「記録」と言う言葉は何を基準にしているのでしょうか、気象予報士の原田竜彦氏によれば、日本では、過去30年間の気象の統計から気候平年値を割り出し「平年に比べ」と言う言葉を使って天気予報をしており、平年値との偏りが大きい気象現象を「異常気象」と呼んでいるそうです。つまり現在の気候平年値は1983年から2015年までの統計によるもので、その平年値に比べて今年はかつてない程の偏りが大きい異常気象だということだそうです。
天気に関する様々な文献から日本の歴史を紐解いてみると、雨もまた、心落ち着かせる情緒的なものと言われています。同じリズムで降る雨音の調べは万物を濡らす恵みの雨でも有り、人の心のイライラや不安を解消し心地よい、穏やかな状態に引き込んでくれるf分の1の「ゆらぎ」をかもし出すといいます。

このように情緒豊かな日本人は、雨ひとつとっても様々な表現で呼んでいるのです。
たとえば日本では荒れ狂う「豪雨」を石が流れて木の葉が沈むと比喩し、煙るように降る雨を「霧雨(きりさめ)」と呼び、霧雨よりももう少し雨らしいのが「小糠雨(こぬかあめ)」、細糸のようにしずしずと降る長雨を「梅雨(つゆ)」と呼びました。

篠竹のように細いけれど絶えず降り続ける雨を「篠(しの)つく雨」と呼び、こころ安らげない雷鳴轟き滝のように降る土砂降りの雨を「雄風(ゆうふう)豪雨(ごうう)」と呼んでいるのです。
雨の話しはこのくらいにして、認知症の方が、豪雨とどう関係が有るかと言うことですが、気圧配置の変化で気温が下がってリズムが崩れBPSDが発症する話はしましたが、それだけでないことが観測されたのです。
実は最近の家は密閉度が高いため、雨の日などは特に昔の木造家屋と違って自然に換気されることは殆ど有りません。

そのことが認知症の進行を早め、BPSDを発症しているということなのです。
つまり豪雨のため締め切った室内では、人間の呼吸にともなう水蒸気や汗、観葉植物からの湿気、台所の流しや浴室から蒸発する水分などが加わり次第に湿気が高くなってきます。それに加え、この時期の寒さと相まってガスコンロや湯沸かし器、石油ストーブなどによって室内の空気中の酸素が減り、一方で二酸化炭素、硫黄酸化物や窒素酸化物なども発生しています。人間の呼吸からは大量の二酸化炭素も出てきます。
つまり、閉め切っていると湿気が多くなるだけでなくアレルゲンの発生や二酸化炭素、一酸化炭素が増加して空気も汚れてきているということなのです。

もちろんこのような環境でBPSDが出現してくるのは分からなくも有りませんが、実は意外に知られていないのが、室内の空気の汚れでは無く、酸素の不足がBPSDの出現の最も危険な要因になっているということです。
よく「息苦しい」と席を立ち去る方がいましたが、まさに気分では無く酸素不足から「息が出来ない」状態だったのではないでしょうか?
普通空気の中には21%の酸素が含まれていますが、ガスやストーブを使っていると酸素が徐々に減って行きます。

寒気や豪雨のため換気出来ず密閉した室内で火を使っていると、酸素濃度が16%以下になってしまうのです。この16%と言う数字は人間の身体が正常に働くための限界でも有り炎は燃え続けることが出来ない状態でもあるのです。

また、酸素濃度が10%以下になると人間は死亡するとまで言われています。
酸素濃度が15%以下になると、脳に十分な酸素が供給されないために、意識を失い、酸素不足のままの状態で放置されると、死につながるということです。ですから認知症で独居の方などのケアでは特に介護者は注意しなくてはならないことと言えます。
ですから、認知症の方のケアでは、換気を十分に行って酸素不足にならないように注意します。1時間に1回程度は窓を開けて思い切り換気をしたいものです。換気は5分程度窓を全開にすれば殆どの空気は入れ替わってしまいます。

寒い冬にはどうしても換気の回数が減ってしまいますが、冬は暖房や台所でガスや石油を使う時間が長くなるので汚れた空気を追い出し、新鮮な空気を入れるためにもこまめに換気をするだけでBPSDは緩和するのです

また、この時期、咳き込み発作やむせ込みを起こす気温の低下には二つのタイプが有ります。
ひとつは、寒気や雨などにより短時間に気温が3度以上さがる場合です。

もう一つが日中の気温が朝とあまり変化しない場合や逆に朝よりも昼の気温が下がってしまうような場合です。
そして、朝に比べて昼間の気温が上がらないのは、冷たい北東の風が吹き込んだ豪雨の日なのです。
人間の身体は明け方の気温が低く、昼頃の気温が高いという一日の気温変化のリズムを持っています。その変化に身体の生理を合わせているわけですが、昼間の気温が下がってしまうとそのリズムが崩れ、喘息、咳き込み発作、誤嚥、むせ込みを起こしてしまうのです。
これがトリガー(引き金)になって「わが道を行く行動」や「立ち去り行動」のBPSDを誘発してしまうのです。
それだけでは有りません。逆転層が発生している場合は、さらに妄想、幻覚、脱抑制などのBPSDが起きやすくなります。

逆転層とは、地上200m付近の気温が地表よりも高くなり、地表付近の汚れた空気が上空に逃げることが出来ず、大気汚染濃度が高くなった状態です。
つまり、逆転層の発生は地表付近の低温と高濃度の大気汚染が同時に起きていると言うことです。つまり、室内だけでなく外出時にも、締め切った室内同様な現象が屋外で起ってしまうということなのです。
逆転層は深夜から早朝に出来ますので、前日夜の天気予報では、翌日の最低気温と最高気温の予想が放送されますから、その時に最低気温と最高気温の差が小さい時はBPSDの発症に要注意です。
このような時には一日同じ服装でいると朝は温かいのですが、昼間は身体のリズムが崩れ、寒く感じてしまいます。普段とは逆に朝よりも昼間に一枚余分に着こむなどして身体のリズムを崩さないように注意しケアしてください。

逆転層が発生するのは、最低気温がかなり低く風が弱く雨が降ったり、朝の冷え込みが厳しいという予報のときです。
このような逆転層の日には、低温に対する対策はもちろん必要になりますが、大気汚染もひどくなります。
家庭内や施設内に空気清浄機がある場合には前の晩から作動させて、寝具から出る前に暖房がかかるようにしておくとBPSDの発症を防ぐことができ効果的です。
(注)シームレスケア研究の中で行われている天気とBPSDの研究調査は、現在も継続中であり、結論として結び付られたものではないことを付け加えておきます。

社団法人認知症高齢者研究所
Senior Dementia Institute

〒224-0032 神奈川県横浜市都筑区茅ケ崎中央20−14 松本ビルB館 4F
TEL:045-949-0201 FAX:045-949-0221
Copyright © 2011 Senior Dementia Institute. All Rights Reserved.


PAGE TOP