認知症ケアの知恵袋★認知症の心理症状に有効な‟てすさび” ★

「てすさび」とは「手遊び」と書き昔から子供たちに遊ばれてきた暇つぶしや気晴らしです。また、昔から母親が子供たちに伝えてくれる他愛のないことでもあるのです。
実は、道具を使わずに、どこでも楽しめる手遊びは、日々の介護の強い味方です。
そして、認知症の心理症状の緩和に、とても良い効果がたくさんあるのです。
今回は手遊びが認知症の人に与える影響と効果的な活用をご紹介します!
さて、なぜ認知症の人に「手遊び」が有効なのでしょうか、認知症の人は単なる記憶の障害だけでなく、分からなくなったと言う認知の障害も含んでいる特徴があります。
手は「外部の脳」とも言われるように、脳の大部分を刺激する機関の一つなのです。
「外部の脳である」と言ったのは18世紀の哲学者エマヌエル・カントですが、手と脳が密接な関係にあることを感覚的に表現するところなど、さすがだな~ぁと思います。
現代の脳科学では、手は脳の運動野(随意運動中枢)と体性感覚野(感覚中枢)と大きくつながっていることが分かっています。

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したがって、手を活発に動かすことや指の感覚を高めることは、脳への刺激になるということです。

また、唄と手の動作が一緒になった手遊びは、繰り返し行うことで作業記憶(ワークキングメモリー)の賦活化にもなり、リズム感や反射神経の衰退を防ぎます。

作業記憶(ワーキングメモリー)とは、思考における重要な役割を果たしているところで、ものごとを考える時に使う記憶です。

認知症の人は最近の記憶(記銘力)の障害を始め、自己の生活の歴史を昔にさかのぼりながら広範囲に忘却する逆向性生活史健忘や現在の日時、場所、状況的に把握できない失見当識、あるいは間違った見当づけをする誤見当識などを持ち続けながら生きているので、手遊びは習慣的な作業記憶(ワーキングメモリー)の賦活だけでなく安心・安住を得ることが出来るからです。

このような認知症の人は、まだ覚えている自分の近い時代をよりどころにして現在と思いながら、その気になっているわけですから、思い出深い「手遊び」などは、その時代の遊びなどの中で手軽に覚え、また遊びに合わせて作り変えたりしながら伝え継がれてきたため、たとえ認知症になったとしても、子供の頃(学童期)の自伝的記憶(レミニセンス・バンプ)として深く埋め込まれていることが多いからです。

それだけではありません。昔の習慣的に認知して会得したり、体得した技能的記憶として覚えた手遊び、趣味、仕事、運動などの手続き記憶は、最も長く残存しているのです。
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また、日常ではなかなか行われない手先や体の動きを体感することが出来るので、体の各部分の動かし方、力の入れ方などが、失われたとしても感覚的に行うことが出来ることも挙げられます。

役割を忘れ、人間関係や失見当識がひどく自己の存在も薄れた人の援助として、手遊び唄などで季節感から時間や場所、自分の立ち位置などを意識できるので、自己実現や意識化をもたらす効果が有り見当識訓練(リアリティ・オリエンテーション)にもなるのです。

このように、手遊びには認知症の人の進行を遅らせる良い効果がたくさんあります。

高齢者との手遊びの中で、指が伸びきっていないことなどが見える場合などでは、手を取って指の動かし方や力の入れ方などを伝えたり触れたりして相互関係を持ち「馴染の関係つくり」にも役立ちます。

手遊び唄では、当時の背景を思い浮かべられるなど、認知症の人なりの生き方を続けさせるツールとなり、わずかに残る自分の生き方を呼び起させる出来事記憶(エピソード)に有効です。

また、手遊び唄は呼吸を合わせて行う歌なので、気持ちを共有する楽しさを体感できることから深い信頼関係と安心感が生まれ心理症状の緩和にもつながります。

宮城県のグループホームでは、手遊び唄「おせんべ焼けたかな~ぁ」を繰返し行ったところ、お話ししなかった人がお話を始めたり、昼間から寝ていた人が「自分から参加する」ようになり意欲が戻ったという報告を頂きました。

手遊びで遊んでいるうちに「自分の気持ちを伝えたい」という欲求が生まれ、難しいとされる自己実現への可能性が示された良い事例ですね。

手遊び   
茶摘みみかんの花咲く丘アルプス一万尺
お寺の和尚さんせっせっせのよいよいよい

お茶らかホイずいずいずっころばしゴマみそずい  他

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