「アルツハイマー病の基礎研究現場から見た治療法探求への展望」

ワトソンとクリックが1953年にDNAの複製モデルを提唱、それに基づいたセントラル・ドグマが生物以前のウイルスから多細胞生物の人間に至るまで地球上の全生物に共通の原理である事が判明して、従来の個別的・叙述的な古典生物学から分子生物学への革命がもたらされました。今世紀初頭のHuman Genomeプロジェクトの成功はこの分子生物学最大の成果の一つでしょう。他方20世紀の初頭にアルツハイマー博士がアルツハイマー病を報告してから100余年にもなるのですが、その物質的な基盤は長らく不明で、分子生物学的な解明は遅れていました。ようやく1980年代半ばにこの病気の病理的な二大特徴である神経斑と神経原繊維変化のそれぞれの主要物質が同定され、ここから分子生物学的・分子遺伝学的な研究が始まり膨大な量の知識が蓄積されてきました。今世紀に入ってからは原因の解明とそれに基いた治療法の開発も間近と興奮に近い期待があり、所謂「アミロイド」仮説に基いた臨床試験が過去10余年活発に行われてきたのですが、全て失敗に終わっており、治療法についての明確な展望が失われつつあるのが現状です。「特定の分子」――>「その機能異常」――>「病気」と言う単純・素朴な分子論的メカニズムが疑われる中、我々も神経細胞死・生存に関わる細胞内信号経路の研究にシフトしています。更に、細胞外からの異なる刺激に対応するそれぞれの信号経路が、独立ではなく、相互に作用して機能的ネット・ワークを作り細胞全体のシステムとして働いている事、その乱れが神経変性、ひいては病気を起こすと言う考えに向かってます。しかし、この個々の神経細胞もシナプスを介して情報伝達のネット・ワークを作っている訳で、これにアストロサイトやオリゴデンドロサイト、マイクログリアも加わり、更に高次のネットワークを作ってダイナミックなシステムとして働いていると言う考え、所謂システム・バイオジーが新しい学問になりつつあります。例えばグリア細胞に加えて血管系も関与する神経炎症が病気と繋がっていると言う説もシステム・バイオジーの観点から再注目を浴びてます。

 

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