Science Park4

★大脳皮質の分類と機能の関連整理から見たBPSD軽減への取り組み★
~ Kyomation Balance Sheetの作成 ~
Science(サイエンス)は、日本語に訳すと科学と訳されますが、私たちの認知症高齢者研究所では自然科学を意味しています。
また、認知症ケアの本質を探る場合においては自然科学的知識と位置付け、根拠に基づくKyomation Careの体系の根幹にもなっています。
そして、Science Park(サイエンスパーク)では、認知症高齢者研究所が独自に集めた認知症ケアに必要な情報や研究、開発などから、認知症ケアに必要なアイデア・ソース(対人援助技術やケア方法の発想)として活用して頂けることを願って提案しています。
今回は、大脳皮質の分類と機能の関連整理から見たBPSD軽減への取り組みKyomation Balance Sheetのお話です。
アルツハイマー型認知症では、中核症状に起因して様々なBPSDが多く見られ、混乱する本人を始め、家族、介護者も対応に苦慮しています。
現在、各サービス関連事業者にて様々なアセスメント様式によって課題、問題の抽出が行われ、ケアプランを作成していますが、医療、介護、看護を統合したケアプランの開発は充分とはいえません。
例え、在宅で認知症の初発症状が認められ、医療機関で認知症の診断を受けても、実際の生活でどのような支援やケアを行えばよいのかは充分に示されることは少ないからです。
また、これらの現状として認知症の改善に有用な医療的な介入法を明言できないことから、個人の症状に応じて起りえるBPSDを理解することで、残存している機能維持の働きかけと共に楽しみ、喜びといった感情を介して情緒面に働きかけることが重要とされているのです。
そこで、Kyomation Careでは医療、介護、看護の視点や知識を統合するケアプランモデルの追求を目標にして、器質的変化を捉えるために細胞構築分類と大脳皮質の整理を行い、照合シートを作成しました。
これをKyomation Balance Sheet:KBSといいます。
このKBSを活用し、MRI上で確認される病変と生活機能を比較することで、残存能力の活用の可能性を検討したのです。
その方法は、医学的な所見からケアの介入を試みるために(1)エコノモ(Economo)とコスキナス(Koskinas)の細胞構築分類とブロードマン(Brodmann)による大脳皮質の機能地図を照合、比較、皮質の分類と機能との関連について整理し、(2)脳機能検査としてMRI画像を終脳の回、溝、葉の名称と照合、比較、萎縮部の深度並びに程度を考察するとともに(1)(2)より皮質の分類と機能との関連を整理したわけです。
さらに、認知症患者の臨床より、学習、記憶、知覚などの複数な機能の状態を知的機能検査や行動観察評価であるHDS-R MENFIS WAIS-R及びアセスメント情報Inter-Rai(旧MDS2.1)によりBPSDの発症状態を把握し比較検討を行っていきます。
そして、残存能力の把握、考察を行い、精神、身体機能を刺激する手段を考察していくわけです。
その過程について説明すると、まずMRI画像により病変を確認し、大脳皮質の損傷部位を把握します。
確認された病変を脳地図上に示し、黒点の濃度が濃いほど、その部位の機能が障害されていることになります。

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この皮質の損傷部位の働きを理解するためにブロードマンの大脳皮質の機能地図と照らし合わせます。

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この機能地図に病変を記した黒点地図を照合し、損傷部位を整理していくのです。
 そして、部位ごとの機能の働きを記したシートをもとに、機能地図をそれぞれの頭頂葉、前頭葉、側頭葉、後頭葉の四葉に分け、損傷部位を記入欄に記録し考察していきます。

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損傷部位により考えられる機能の障害と実際の状態との比較のために、HDS-R WAIS-R MENFISの結果をもちいて更に検討を行います。
 この結果、MRI画像診断の萎縮部位が直接的に中核症状として、生活に障害を与えていることを確認していくのです。
 しかし、その反面、実際の生活に影響を強く及ぼしていない部位もあることも示唆されていたので、エコノモとコスキナスの研究より、皮質下の細胞構築を利用して、その損傷部位を再確認していきます。
 大脳新皮質全域は、その皮質を構成する層の厚さと細胞の組成の異なり方によって5型に分けられていますが、例えば、前頭葉では、比較的深く細胞が残っているため、皮質の委縮が認められても機能が残存しているということが分かります。また、後頭葉の視覚野のような顆粒型では深度が浅く、委縮による影響が強いと考えられるのです。

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この機能地図と細胞構築分類をあわせて統合したものを作成し、これをKBSとしたわけです。これを用いて残存能力を確認、把握していくわけです。
 直接的に生活機能に障害を及ぼしていない部位は、深度が深く残っているために維持されていることも分かります。
 黒点とKBSを照合した地図を可視化することで、介護者も視覚的に損傷部位を捉えることができるようになるわけです。
 そして、照合し確認された部位ごとの状態を頭頂葉、前頭葉、側頭葉、後頭葉の四葉の働きと辺縁系の働きを示したうえで、MRI上で萎縮、損傷が確認された状態を記録します。
 次にWAIS-Rの結果、仮説候補として考えられる言語性、動作性能力の強弱を記録します。これにより、損傷部位の程度や残存機能の確認ができることになります。
機能地図によるそれぞれの領野は、一つの工程ではなく関連野(連鎖コラム)の働きからひとつの症状を生みだしていますので、その関連をもまとめておく必要があるからです。

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大脳の機能には左右の働きに違いがあるため注意する必要があるので、簡易的にダメージの注意点と機能障害を除き日常で見られる障害の状態を中核症状を含むBPSDとして整理していきます。
 この関連領野をそれぞれA郡~V郡に分けて更に整理します。
 予見できるA郡~V郡の症状に実際の状態の「ある・ない」を○×で示していくのです。例えば、A郡の失行には、N郡の観念性失行、O郡の観念運動性失行、P郡の着衣失行、Q郡の構成失行というように関連領域が関連していることが整理できてきます。
 これらの症状が皮質の損傷によるものか、その他の要因によるものかを理解することで医療、看護、介護的介入方法と役割を明確にすることができるわけなのです。
 萎縮が大きくても細胞構築分類を活用し、脳神経細胞が残存していれば、正常な機能とはいえなくとも類似的機能、もしくは相乗的機能はアセスメントから残存していることが考察できることになります。
 また、KBSを活用し、MRI上で確認される病変と生活機能を比較することで、残存能力の活用の可能性が示唆され、医療、介護、看護を統合したケアプランに沿った均一的介護が期待できるのではないでしょうか、BPSDの発生原因については、様々な説が考えられますが、今回は精神的変化や神経伝達の問題については考察しませんでした。
次回は、この方法を活用しBPSDを抑制した事例について報告します。

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