根拠に基づく新しい認知症ケア「キョウメーションケア(Kyomation Care)」

脳が心を作り心が脳を育む、脳と心は時として信じられない力を見せ認知症ケアの中で
奇跡を起こすことがある。
キョウメーションケア10カ条とは、これまでの筆者の実践経験に基づきまとめた対人援助方法で認知症の人と関わる際の基本的姿勢として定めた接遇でもある。認知症になると、家族、仕事、収入、家や社会での役割や心身の健康、生きがい、知的能力、そして自分史をも失ってしまう。それらは生きる上での「頼りにする」「よりどころとする」ものである。
だから、認知症の人には出来るだけ気分を害さないようにケアすることがコツとなる。
高次の脳機能は低下していても感情をつかさどる脳の場所はよく保たれているので、介護者は気を遣い、気を働かせ、気を配って援助しているはずだが案外いろいろな偏見を持っていることに気付く、その基礎は感情にある偏見がある種の感情つまり好きと嫌いとを結びつけているからだと思う。
認知症ケアは心の向きを知り、それに添って、その人の生き方を援助していくものであるが知らず知らずのうちに感情がケアに大きく影響してくる。
「説得よりも納得してもらう」と精神科医の室伏君士先生は説く、頼れる存在と仲間になるという態度で接することを忘れずに、いたわりと励ましの日々が緩和につながることは分かっているのだが人間は必ずしも理性の動物ではない。
そこで、認知症の人の不安や感覚世界に近づくための対人援助方法としてキョウメーションケア10カ条を据えたのである。
この10カ条は新規で支援を開始する最初の時はもちろん毎日いかなる場所においても認知症の人と向き合う際には必ずこの対人援助方法を用いている。
なぜなら記憶や認知の障害で明日を描けなかったり顔が分からなかったり会ったことも忘れてしまうからだ。だから認知症ケアにおいて出会いは生涯にただ一度と考え、その時を大切にする心掛けで接することにしている。
しかし、人はなぜ好きな人や好きな物には近づき接触したくなり嫌いな人や物からは離れていて近づきたくないのか、このような気持ちを持つとき認知症の人の中ではいったい何が起っているのだろうか。家族、親類、友人、知人、同僚など「なじみの関係者」と認知している人とは仲良く付き合うが、誤認も含め見知らぬ人、初めて会う人、あるいは自分と意見が合わない人には、不安、恐怖、不信、妄想、拒否など冷淡になりがちになる。
これは顔の記憶が障害で認知出来ていないということもあるだろう。そのため不安や恐怖を感じて冷淡になるのではないだろうか。しかし見知らぬ人と思われていても目があったら喜色満面で微笑むことで「なじみの関係」を築くことは充分できる。
また、安らぎと満足感を感じ一緒に寄り添っていても、一寸した言葉のはずみで心が痛み苦しみを味わう。同じ言葉でも相手を心地よくすることも不快にさせることもある。私たちの好き嫌いには快・不快が必ず伴っているようだ。表情と身振りで快・不快を確認すれば相手との親密度を図ることもできる。これをパーソナル・スペースと呼ぶ「なじみの関係」として許される空間は15~45cmなのだ。
認知症の人は自分が置かれた生理的な状態によって正直に感情を出す。作った顔や心とは裏腹な表情を作ることは殆どない。正直だからこそ不安と不安に伴う緊張が一番はっきりと出て来る。
そんな時は横隣りに座り、同じ姿勢、同じ方向を眺めて、その人の気持ちに寄り添いながら気分や態度などを察して焦らず注意深く丁寧に対応する「聞き上手」になれば安心感と信頼関係を得ることができる。
一方、手を触れることも大切である。手の触れ合いは「心の絆」や「心の投射」と呼ばれ熱があることやあるいは手指の冷感また前日との違いや変化を感じ取ることもできるからだ。手の触れ合いは認知症の人の心の窓を開かせケアを受け入れられるようにするのに必要な援助技術だと思う。
手を触れ合い加えて話しかけることは感情を知る上でも重要になる。感情は共感するしかないものだからである。
話しかけは、はっきりと相手のペースに合わせ話すことが大切になる。そして話をする時には人の感情を逆なでる「とげとげしい物言い」や不快感を抱かせる「嫌みのある言葉使い」人の痛いところを突いた「当てこすりの声掛け」は禁物である。認知症ケアにおける感情という不思議な世界の扉は絶え間ない話しかけで開くのであるからケアは根気よく行うことに他ならないのである。
このようにキョウメーションケア10カ条には、自分の感情を把握する能力と他人の気持ちを理解する能力を高め知識や技術を身に付けることが認知症ケアを通してできるように基本観察13項目が据えられている。
13項目「態度」「表情」「服装」「行動」「言語の理解力」「構音障害」「記憶障害」「見当識」「思考」「計算」「判断力」「感情」「意欲」の視点で認知症の状態を評価していく。介護職や医療職が観察の視点を合わせることで、相手に対する偏った観察が軽減でき同時に均一的な認知症ケアの提供が行えるようになるのである。
10か条

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