認知症と心の科学2

◆BDNF脳由来神経栄養因子で認知症予防保全へ◆
人間の脳は、最後の未開拓領域かも知れません。まだまだ分からないことばかりですが、脳を装置として捉えれば宇宙で最も精密な装置かもしれません。そして、その精密装置の故障が認知症なのかもしれません。故障であれば直(治)せる可能性は大きいはずですね。
認知症と心の科学では、研究所が選んだ世界の認知症研究を分かりやすくお伝えしていきます。
私が心理学の入門コースを学んだころから、脳を筋肉と同じように考える人がいました。
でも教授が笑いながら、脳は筋肉ではありませんと否定するのが常識だったのです。
ところが1980年代以降、それは大きく変わりました。脳はある意味筋肉のようなものだと分かってきたのです。
ですから脳も鍛えれば鍛えるほど発達することが分かってきたのです。
42歳の時から運動を欠かさなかったアメリカのミルトン アダムソン(Milton Adamson)は93歳にして記憶力(特に遅延記憶)は年齢の半分40歳代の人と互角です。
彼は言います「記憶力をずっと保ちたければ何より運動することだ」と…
つい最近まで運動が脳の働きに効果があるとは考えられていませんでした。
ところが1000人以上の人を対象にして大規模な研究調査を行ったところ脳の活動の維持に役立っているものの一つとして運動がクローズアップされたのです。
カリフォルニア大学のアーバイン校(University of California at Irvine)のカール コットマン(Carl Cotman)教授の研究では、「幸せな年の取り方」を科学的に調べています。
教授は言います。「以前は何が衰えたかを把握するだけでしたが、今はその衰えにどう対処出来るか、どうすればニューロンの質を高められるかまで考えられるようになりました。」
カール コットマン教授は、運動は脳内タンパク質の生成を促しニューロンを健康に保つという仮説を立てました。
その検証のためラットを二つのグループに分け、片方には何もさせず、もう片方には運動をさせました。
運動をさせたラットのグループは、回し車に飛び乗って回転動作を繰り返し行うだけでなく、やる気満々にアライグマの様なポーズで、餌を両手で食べる仕草などの芸もするようになりました。
そして、8日後には運動したラットは、ニューロンの成長を助ける※BDNF脳由来神経栄養因子の量が記憶にかかわる領域で倍になっている事が分かりました。
驚くべき結果です。
運動は健康で強いニューロンを維持するための様々な分子の生成を助けることを突き止めました。いわば分子の肥料だということです。
走ることで脳内にこれらの分子が増えるのです。
研究の結果、回復力や応用力に富む新しい脳の姿が浮かび上がってきました。そうなると長い人生経験が強みを発揮しそうです。
壮年期の人は、精神的にも肉体的にも完成し、たくさんの情報を見つけることが得意です。また、高齢期への準備期としても重要であり、記憶の喪失を抑えるためにも強いニューロンを維持するためにも、情報の収集と処理することを練習(リハーサル)することを日ごろから心掛けることで認知症の予防になるのです。
年配の人は過去の経験や知恵を活かし、それと照らし合わせて状況をじっくり考える練習を行うことが有効です。例えば、昔からあるクロスワードパズルや風景を詩にしたり写生したり、最近は写真を取ることも有効といわれています。日本では長唄や短歌、俳句など情景を歌にする作業は有効です。
どちらにしても、BDNF脳由来神経栄養因子の量を増やすには、継続した、無理のない運動と趣味や知恵を活かした作業をうまく組み合わせることで、記憶の領域が衰退することを避けさせることにもなるのです。
脳の老化が遅い人もいれば、早く老化が進んでしまう人もいます。大きな要因は持って生まれたものですが、別の要因もあるのです。
それは、どれだけ活動しているかということで、年をとってからもずっと活動的で体をよく動かしている人の場合、脳の機能の衰えはかなり遅いか、まったく衰えないというデータはたくさんあるのです。
※脳由来神経栄養因子:brain-derived neurotrophic factor (BDNF)
ニューロトロフィンファミリーに属する代表的な神経栄養因子。119個のアミノ酸か
らなる同一ポリペプチドが非共有結合(原子間で電子の共有がない結合でイオン結合
や水素結合などの分子間相互作用のこと)した二量体構造(分子2個が重合して生成す
る物質)をもち、大脳皮質や海馬ニューロン、ドーパミン、セロトニン、GAVA、作動性ニューロン、運動ニューロン、小脳顆粒細胞に作用し、分化促進、生存や機能の維
持、神経伝達やシナプス機能を亢進する。神経活動依存的に生産される。
◆次回は蘇る脳のお話です◆
アラバマ大学バーミングハム校(University of Alabama at Birmingham)の神経学者エドワード・ターブ(Edward Taub)教授の研究プログラムは、脳卒中の患者に発症後何年たってからでも患部を回復させる方法を発見、ターブ教授の革新的な治療法を紹介します。発症から3年、多くの傷ついたニューロンが脳の回復力によって蘇ったお話です。
この方法を活用すれば、認知症の認知機能も蘇るのかもしれませんね。

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