第19回 認知症の進行防止に向けたシームレスケア

認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第19回「認知症の進行防止に向けたシームレスケア」です。
高齢者ケアを行うに当たっては、見守りから支援、介護まで継続的にシームレスなサービスを提供しなければなりません。特に認知症の方には介護ニーズに応じた「自立支援」に向けるケアが根底に必要となるからです。
キョウメーションケアでは、認知症は脳の病気によって惹き起こされる脳の機能障害の結果だとしています。一つ一つの症状には、それに対応した脳機能の異常が潜んでいるということなのです。
理解不能な行動や意味不明な言動、様々な身体合併症や不可思議な混乱状態BPSD(行動・心理症状)は、脳の機能障害に基づく認知機能の障害により引き起こされる生活機能障害だと言えるのです。これらの機能障害は相互に影響を及ぼしながら、認知症を得体の知れない現象にしているわけです。
つまり進行を防止するには、まず脳の働きと病態メカニズムをよく知ることが重要になります。そして、残存している認知機能を正確に理解しながら生活機能の障害を通して認知症の持つ様々な社会的困難をひも解き、理屈に合った科学的なケアを行い抑制するのです。また、ケアの実際では、日常生活の中で自立支援に向ける援助を多職種間で連携しながら情報を共有することが重要になります。
しかし、現状では、それぞれのサービスは職種毎に分断され、有期的な連携がなされていないと言えます。もちろん「ただ、連携しましょう」と言うだけで可能になるものでもありません。例えば入院、退院、在宅復帰または施設入居を通じて多職種間によるシームレスなサービスの提供が行われることが必要なのです。
しかし、職員の知識、技術と言った能力に拠るところ、職員の意思、いわゆる、「やる気」に拠るところなど、ケア現場は専門職員が入れ替わるたびに体制を立て直さなければならない現状に追われ有期的な連携を保つことが難しいため、結果、介護の質が保てず認知症の進行を防止できないのです。
認知症の原因となる疾患にはアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症、脳血管性認知症など数多くあります。それぞれの疾患は脳の病気によって中核症状と言われる認知機能の障害が見られるわけですが、この機能障害は脳の部位とも密接に関連しているのです。
キョウメーションケアでは、これに着目し、例えば少し前の出来事を忘れる記憶障害や
言葉が理解できない障害などは側頭葉の障害と捉えます。また、道に迷って家に帰れなくなる視空間の認知障害は頭頂葉の障害で起こり、注意が散漫になる注意障害や目標に向かって行動ができなくなる遂行機能の障害などは前頭葉の障害で起こると捉えているのです。
つまり脳の部位と認知機能障害の対応を態度、表情、服装、行動、言語の理解力、構音障害、記憶障害、見当識、思考、計算、判断力、感情、意欲の13項目の行動観察から導いて行くのです。そして、このような行動観察から正確に理解出来た脳の障害部位がどのように日々の生活に支障を来しているのかを日常の生活の動作から見定めて行くわけです。
この日常生活動作をADLと呼びます。ADLは、自分自身の身の回りのことを自立して行う能力である基本的日常生活動作BADL(排泄、食事、着替え、見繕い、入浴)と家事など一人暮らしを維持していくために必要な能力である手段的日常生活動作IADL(電話、買物、服薬、洗濯、金銭管理)があります。そして、残存能力をADLで確認することは認知症の進行を防止するために必要な生活機能障害を評価し、介護ニーズを把握するためには重要なポイントになるのです。
そして、日常生活の中で自立支援に向ける援助をシームレスに医療職と介護職がチームマネジメントで協働、連携してチーム内での役割を担いながら、目標であるゴールを本人及び家族も含め、多面的に評価し本人の介護ニーズを共通認識して自立支援に向けることで認知症の進行は充分防止出来るのです。
次回は、認知症のアセスメントについて学びます。

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