「介護ビジョン」連載 第3弾!

多職種連携によるBPSDの改善・予防効果
BPSDの要因分析には多職種のアセスメントが必要
今回は、定期巡回・随時対応サービスの多職種連携による認知症の周辺症状(BPSD)の改善と進行防止の効果について、事例を交えて解説します。
定期巡回・随時対応サービスには自立支援の視点で作成されたケアプランを忠実に実行できる「多職種連携」が必須です。サービスに従事する介護・看護の専門職が連携を組みながら、行動観察や生活状態、生活のリズムを把握するほか、日々の水分量や栄養量、排泄状態、運動量、バイタル、睡眠状態などのアセスメントを実施します。
そして、介護と医療の連携による認知症の在宅ケアを実現するには、認知症状の進行、BPSDの状態や発症する要因を分析し、利用者の心の向きを知り、寄り添って生き方を支援する方法と工夫が必要になります。BPSDが起こる要因の分析には、情報収集や課題の抽出・設定から、ケアプラン作成までの連動性が必要になります。そのなかで認知症の進行状態や今後起こり得るかもしれないBPSDなどの状況も予測していきます。
在宅での認知症ケアは、常にレベルの高い介護を提供しなくてはいけません。そのためにも、これらのさまざまな情報をチームが共有化し、均一的なサービスを提供する必要があり、自立支援の視点からケアプランの内容を忠実に行うためには、日々の業務だけでなく、アセスメント能力や記録方法などの知識や技術を磨く教育も欠かせません。
電子健康管理の情報を共有しケアプランやサービスを策定
定期巡回・随時対応サービスを4ヵ月利用しているAさんの事例を通して、在宅ケアにおける認知症ケアの可能性を検証してみましょう。
82歳のAさんは要介護3で日常生活自立度はAⅡです。アルツハイマー型認知症の診断が2年前に出ていました。既往の狭心症、骨粗鬆症、低カリウム症は経過加療中です。
まず、Aさんの「ありのままの姿」を観察するため、サービス開始時の7日間、およそ2時間ごと(夜間は4時間ごと)に、入浴や排泄、食事などのサービスを組み合わせた5~40分程度のサービスを提供しながら、24時間の様子と生活リズムを確認しました。
睡眠に関しては、睡眠時の動きや呼吸、心拍などを感知する装置を設置し、介護職がいない時間の状態の把握に努めました。起床時間と就寝時間を把握した結果、Aさんは比較的睡眠が整っていることがわかったほか、夜間の排泄時間のタイミングも把握することができるようになりました。
さらに、水分量や栄養量、運動量、バイタルなどから身体状態や残存能力を確認できたほか、食事づくりや服薬の様子・生活のリズムなどの介助・支援の状態も把握することができました。
電子健康管理(e-Health care)に記録したこれらの情報を多職種間で共有し、提供するサービスの内容と個別プランを立案するとともに、状態変化をケアマネジャーに連絡してケアプランを作成するという一連の流れができてきました。ケアプランのほか、アセスメントや介護記録などの介護課程を電子健康管理に記録し、これらの情報を多職種で情報共有したことにより、ケアプランどおりのケアの実施をはじめ、均一的なケアと自立支援に向けた根拠のあるケアの提供に大きな効果を上げていたようです。
7日間のアセスメントで多くのことが見えてくる
「トイレや食事、入浴を一人でしたい」「身の回りのことをできるようになりたい」を目標に掲げたAさん。7日間にわたってアセスメントをした結果、食事は毎回同じようなものを食べる傾向があり、服薬については自分で服用するものの、薬の管理ができていないことがわかりました。サービス提供時間は、朝・昼・夕の食事づくりに各15分、服薬時の各10分程度に加えて、就寝介助に30分、夜間の排泄介助1回という支援を開始しました。
Aさんは低カリウム症なので、カリウム値の高い食材一覧を管理栄養士を中心に多職種で作成し、栄養に配慮した食事づくりを心掛けました。その結果、冷蔵庫には管理栄養士が指導した食材が増え、医師による検査では、カリウム値の改善が認められ服薬の減少につながりました。
 また、突然BPSDが表出した時には家族からのケアコールにオペレーターが対応、随時の対応で安心して自宅で見守ることができました。
 さらに、朝から近隣の人複数人が交代しながら食事づくりや身の回りの世話をするなど、近隣の人たちがAさんの生活を支えていることが電子健康管理の記録からわかりました。そこで、スタッフも一緒にそのなかに対し認知症サポーター講習を実施し、「認知症の人には自立支援がADLを維持し、生活の質を上げる」ことを学んでいただき、「して差し上げる」のではなく「できるように支援する」という視点で専門職と連携しながらAさんにかかわってもらうようにお願いしました。もちろん近隣の人がかかわれない時には職員が対応しました。
 食事の準備ではAさんに野菜切ってもらう、ゴミ捨てではゴミの仕分けを手伝ってもらう、洗濯では洗濯物をたたんでもらうといった近隣の人との連携による作業をケアプランに盛り込むことで、生活支援を通じた自立支援を実現しました。この結果、日中の食事づくりは、配膳・下膳を各5分にすることができました。
 訪問のつどバイタル測定を行ったので、日内血圧に大きく変動があり、脈拍も頻脈傾向で水分量も少ないことがわかりました。電子健康管理を通じて医師に連絡、Aさんは貧血で転倒の可能性が大きいことが判明したので支援方法が検討されました。
 知的機能検査の結果からは、近時記憶に低下が見られたので声掛けを工夫し、手振りを使ってコミュニケーションをとることにしました。行動観察評価からは、気力の低下や適切な感情表現の低下も把握されました。これらのアセスメント情報から課題を抽出・設定し、ケアマネジャーと計画作成責任者らで分析したことにより、サービスの提供時間や内容を組み直したケアプランを作成するという一連の流れが自ずと生まれました。
 近隣の人は買い物や趣味活動を中心に、受診や入浴は家族が行い、介護スタッフは、起床、食事、就寝、排泄、服薬と健康管理などを中心にすることでそれぞれの役割分担が明確になりました。Aさん自らが洗濯や調理に参加するようになり、買い物に出かけるなど生活に活力が出てADLが大幅に向上しました。この結果、抑うつ症状などのBPSDは発症しなくなり、先述したような目標に近づくことに成功したのです。さらに、発熱や身体の痛み、失禁などの体調不良に合わせて、随時対応サービスの提供により早期対応ができたことが、予防にもつながったと考えられます。
介護ビジョン8月号より抜粋

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