第12回「レビー小体型認知症への対応」

認知症と付き合う隠れ技 キョウメーションケア
認知症高齢者研究所 所長 羽田野 政治の連載コラム 今回は第12回目「レビー小体型認知症への対応1」です。
3つの要点を押さえ医師と連携し対応
レビー小体型認知症は、約100年前にドイツの精神科医フレデリック・レビーがパーキンソン疾患者の脳の神経細胞内に「封入体」と呼ばれる円形状の特殊な構造物を発見したことに由来します。
 
現在では、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と並ぶ三大認知症の一つとして知られています。
アルツハイマー型認知症は認知機能の中でも短期記憶の近時記憶や出来事記憶の障害が特徴的で、機能の出来事や数分前のことは覚えていないことが多く見られます。
 
これに対してレビー小体型認知症は、記憶に関する障害はあまり目立ちませんが、物の形が別のものに見えてしまったり、目で見た物の形や位置などを認知する能力の低下が見られるのが特徴です。
日常生活では、道に迷い方向感覚を失ったり、歯磨きが出来なくなったり、服をうまく着られなくなったりする行動が見られます。また、注意力の低下やボーっとして反応が鈍く、会話をしていても一貫性がなく質問に答えられず、次の瞬間に家族が誰なのか分からなくなるなど、これが同じ人かと目を疑いたくなるような状態が認められるとレビー小体型認知症の可能性が高いと考えられいます。
加えてレビー小体型認知症は、視覚を司る後頭葉の血流の低下が認められるため、変形視や見間違え、見たかのように介護者にありありと言える幻視や無動、筋強剛、振戦、小刻み歩行などのパーキンソンニズムという運動機能の障害が認められるのも特徴です。認知機能が1日の間で激しく入れ替わり特に夕方から夜中にかけて悪くなる傾向が見られます。それは一週間や一か月ごとに動揺する事もあります。
このように認知機能に大きな波があることを認知機能の変動と言います。レビー小体型認知症は、レビー小体が大脳皮質のみに認められる「新皮質型」と脳幹のみに認められる「脳幹型」そして、大脳皮質と脳幹の両方に認められる「移行型」の3つに分けられます。また、これとは別にアルツハイマー病の合併がある「通常型」と合併を伴なわない「純粋型」に分けられ、治療や介護のあり方で経過や予後が左右されるので的確な診断と症状に合わせた治療や介護を行う必要性が高い認知症なのです。
脳幹型では認知症機能障害に先行して、パーキンソンニズム、レム睡眠行動障害初期に見られるのが大きな特徴で記憶の障害は最近の事が覚えられないアルツハイマー型認知症とは違い、昔の思い出などの記憶を引き出せないような健忘的なものが多いようです。
日常生活では何も問題ないのですが、軽い振戦や筋肉の強張り、頻回に起こる立ちくらみやめまいなど軽い自律神経障害、ボーっと考え事をしているような継続しない抑うつ状態、歩行障害や無表情などが、時折現れてきます。勘違いしているか捉えてしまいがちな認知の障害や幻視、睡眠中の寝言が頻回に起こります。
新皮質型では、引きこもりや食欲の低下、不眠などの兆候を伴う悲しみや孤独感などの抑うつ傾向が初期に現れます。また、ありありと現れる子供や小動物の幻覚が特徴です。アルツハイマー型との合併がある通常型は、認知機能の障害が先行し、パーキンソンニズムも見られないためアルツハイマー型認知症と見間違えられるケースが多いのですが、視覚的な認知の障害から錯視と言われるような幻視がアルツハイマー型認知症と比べるとはるかに多く現れるのが特徴です。このようなレビー小体型認知症のケアでは症状をタイプ別にしっかりと見極めて、その違いや変化に対応する事が肝心だとされています。
つまり「適切な薬物療法」「経過に沿った適切な介護」「転倒予防」の三大ポイントを医療連携で対応する事が必要な認知症なのです。
次回は、診断できても治せない病への挑戦、介護にゆだねられたレビー小体型認知症の対応について学びます。

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